弁証論治:

0049:42歳二人目不妊→妊娠弁証論治

・問診
42才 女性 身長160㎝体重50kg

主訴:妊娠したい

37歳結婚 妊娠希望

38歳 第一子出産(自然分娩)

41歳 流産

出産後体調は変化しない、生理の状況も変化しない。

出産後体調は回復していると思う。母乳は出なかった。

排卵までに時間がかかり、低温期が3週間ぐらいの時と4週間ぐらいのときと 更互にくる。

・・普段の状態について

クーラー体調悪化、風邪を引くと肩こりがひどい。

食欲は普通、食事は規則的15分、空腹感はある、おいしい。腹がはることはない。

タバコは吸わない、飲酒はしない。麦茶豆乳など1000ccぐらい。

口が渇くことはない。粘ったり違和感もない

大便は高校生ぐらいから同じ状態。3,4日に1度出る。お腹が張って辛いことがよくある。 年に2,3回程度便秘の薬を飲む(スルーラック)

出きらない時は時々、バナナ、コロコロ、付着することは時々

小便は1日5回、残尿感、尿の色が悪いことはない。夜間排尿はない

睡眠は23時に寝て6時半に起きる。寝付きはよい、眠りは深く、寝起きは少し悪い。

疲れが残ることはめったにない。
初経は15才 生理はおくれぎみ

生理周期に伴う不調はほとんどない。

生理の色は出血した色、小さな塊がまじることがある。量は普通、多い時期は2日目

・時系列の問診

高校から現在のように少し便秘気味

20台から肩こり

30歳の時に、肩のマッサージで筋肉がひきつり、脂汗がでて、 ろれつが回らなくなり、冷や汗がでた。2週間マッサージを受け、針治療を受けおちついた。

38歳出産 体調回復。36日ぐらいで生理がくる

39歳流産

40歳 生理の周期が36から43日周期になってしまう。サプリを飲む。便通少し改善
体重の変化はない。
二日前から風邪を引いたのか鼻がぐずぐずしている。

・体表観察

・・舌診
淡紅から淡白
歯痕あり

やや胖嫩

・・脉診
尺位が左右とも浮いている
右尺やや固い

・・腹診
脾募アリ
季肋部のめくれアリ
肝の相火左アリ、裏肝の相火アリ
中脘から下脘力がない
天枢冷え、
臍の下側中注部盛り上がり、
腹部全体冷たい
左少腹急結あり、力がない感じで冷えがある。右は暖かい

・・経穴診
右太淵腫れ
左列缺こそげ
左右霊道こそげて薄い
右内関陥凹
右合谷こそげ
左右外関動きが悪い 右<左
左陽池 冷え
左右足三里やや陥凹 
左公孫やや冷え、可能
三陰交こそげ 右>左
右陽陵泉冷え
右臨泣動きが悪い、つまり
左太衝こそげ

・・背候診
左右風門 発汗 左広い
右胆兪から三焦兪(一番下)に書けて筋張り、
右三焦兪陥凹、
右腎兪陥凹かたい
脊柱つぶれ
左胃兪 横に流れている 
左右三焦兪陥凹
左右腎兪陥凹(左柔らかい、右固い)

・五臓の弁別

・・肝
排卵までに時間がかかり、低温期が3週間ぐらいの時と4週間ぐらいのときと
生理に小さな塊がまじることがある
20代から肩こり
肩井部を押したらつってしまい、筋肉が引きつり脂汗、ろれつが回らなくなった。
左少腹急結あり、力がない感じで冷えがある。右は暖かい

右陽陵泉冷え
右臨泣動きが悪い、つまり
左太衝こそげ
右胆兪から三焦兪(一番下)に書けて筋張り、
右三焦兪陥凹、
右腎兪陥凹かたい

・・心
左右霊道こそげて薄い
右内関陥凹

・・脾
高校時代から便秘、3,4日に1度、お腹が張って辛いことがよくある
出きらない時は時々、バナナ、コロコロ、付着することは時々
脾募アリ 季肋部のめくれアリ
中脘から下脘力がない 
天枢冷え、
臍の下側中注部盛り上がり、

左右足三里やや陥凹 
左公孫やや冷え、可能
三陰交こそげ 右>左
脊柱つぶれ
左胃兪 横に流れている 

・・肺
右太淵腫れ
左列缺こそげ
右合谷こそげ
左右風門 発汗 左広い

・・腎
排卵までに時間がかかり、低温期が3週間ぐらいの時と4週間ぐらいのときと
40歳、生理周期がより長くなり36日から43日に
脉診 尺位が左右とも浮いている 右尺やや固い
腹部全体冷たい
左右外関動きが悪い 右<左
左陽池 冷え
右胆兪から三焦兪(一番下)に書けて筋張り、
右三焦兪陥凹、
右腎兪陥凹かたい
左右三焦兪陥凹
左右腎兪陥凹(左柔らかい、右固い)

・・気虚
舌 歯痕あり、やや胖嫩

・病因病理

主訴は妊娠したいということである。

38才で第一子を出産後体調は回復し、39才で再度妊娠したものの流産となった。 出産前後には生理の状況は変化がなく、流産後から生理周期が長くなり始めており(そのほかは変化がない)、再度の妊娠がなかなか成立しないという状況である。

いままで大きな病気もなく、ご本人が自覚するような体調不良は問診上ほとんど出ていない。 翌日に疲れが残ることもなく、睡眠、食事の状態もよく、日常生活にをスムーズにおくっている ということである。

そういったあまりご本人にとって健康上は問題のないという状態ではあるが、お身体を実際に切診し拝見すると、舌に歯痕がありやや胖嫩、左列缺こそげ、左右霊道がこそげて薄いなど全身の気虚、気血両虚が感じられる。脾胃の状態も、督脉の脊柱がつぶれ左胃兪が横に流れ、中脘から下脘に力がなく、左右の足三里の陥凹と弱さを示しており、腎気の状態も背部兪穴の三焦兪腎兪が大きく陥凹し筋張りの下支えとなっていること、腹部全体の冷え、左右外関の動きの悪さ、左右腎兪、三焦兪の陥凹などから弱さは明瞭で存る。

全身の気血両虚、そして脾腎の弱さをこれだけ示している状態でありながら、ご本人が『さほど日常生活に問題は感じない』という状態であるのは、ご本人の意識にはないが日常生活を支えるために、常に肝気を張っていると思われる。舌の戦、肝の相火、20代から感じる肩こり、便秘などは、その日常生活を支えるための肝気の張りから生じていると思われる。

30歳の時に、肩こりのため肩井部を押してもらったところ、筋肉がひきつり、脂汗がでて、ろれつが回らなくなり、冷や汗が出ると言うことがあった。この患者さんの肩こりは、全身状態が気虚であるため日常生活を維持するために肝気をはっているので発生しているものである。肩井部を急激に押したことにより、肝気が大きく動き内風を生じひきつりろれつがまわらなくなり、肌表では肺気が失調し冷や汗がでた。

気虚の素体を、それなりのバランスで支えていた肝気の状態が大きく乱れてしまい、気虚である状態が急に表に出たので冷や汗が出たり脂汗が出、2週間にわたって症状が継続したものと思われる。このように大きく変調してしまう全身の『敏感さ』ではあるが、この敏感さが、気虚気味の全身を上手にバランスをとりまとめ上げているものともなっている。

肝気を張りながら、上手にバランスの取れた状態であったものの脾気の弱さ、任衝脉の養いの弱さがあったために母乳の出も悪かったのではないかと思われる。日常的な肝鬱によって相対的に下焦では気が薄くなり、左の少腹急結、右の臨泣の動きの悪さ、生理に塊が混じるなどのオ血が生じており、第一子出産後の流産によって、腎気が一段と落ちてしまい、再度の妊娠が難しくなっているのではないかと思われる。

・弁証論治

弁証:腎虚 任衝脉への養いの不足

論治:益気補腎 補益任衝

・治療指針
まず第一に流産後に落ちてしまった腎気の回復をめざし、妊娠の成立をしやすくする。

腎気の回復を中心としながらも、気血両虚の状態から派生している肝気の状態が妊娠を阻んでいる可能性もあることを考える。腎気の回復状態を見ながら、必要に応じて脾腎を建て、器全体の回復を測ることも視野にいれていく。

・治療経過

初診より2ヶ月10診ほどで妊娠、心拍確認。