弁証論治:

0155:HR周期移植で二人目出産44才 弁証論治

症例集→20回以上の採卵周期、二人目出産(44歳出産)【case:0155】

・問診
42才 女性  子供3才、夫

主訴 FSHが高く卵巣機能が不安定

他に両肩の痛み(特に左)。疲れたときの肩こり、首凝り、頭痛(後頭部)。

左の肩関節前面が痛い(整形では四十肩と言われた)右も痛い。無理したり

疲労があると痛い。風邪をひくとより悪化

右肩の三角筋萎縮(4才、12才手術)三焦経 大腸経

20代の半ば、精神的なストレスで体調を崩す。

胸の中心にアワアワする違和感があり、胃の不調かと思い

病院受診。胃は問題なく、動悸と判明。動悸も経過観察となった。

第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。

お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。

動悸はだんだん悪化、(再初診から1年半後の第二子妊娠中から再度より悪化、食事がとくに気になる)

・・普段の状態について

季節の変わり目、朝に調子が悪い

入浴で改善

風邪をひくと、後頭部の頭痛、首凝り、動悸(ときどき動悸がする、精密検査などでは異常なしという結果になる)

35才より食欲低下

空腹感はある、食事はおいしい、

食後にお腹がはったり胸焼けがよくする(37才時の問診票ではときどき)

間食はよくある、飲酒はほとんどしない、口の渇きはよくある。

便通は1日1回、体力が落ちてくると便秘気味、細いコロコロ こぶし大。付着することもない。

小便は1日4回、色など問題ない、夜間尿なし

寝つきはよい、眠りは深い、寝起きはよい、疲れが残ることはときどき

生理周期は28-30日5日間

38才と41才の時に子宮内膜ポリープ切除

生理7日前ゴロから疲れ、肩こり、首凝りがでる。

排卵時に下腹のはり、痛み、だるさ

生理痛はなし、出血した色、量は普通、出産後は塊が減ってサラサラ

生理の3日目ぐらいから肩、首のこり、頭痛

出産1回、自然妊娠2回ー流産

出産後母乳はよく出た(1才6ヶ月まで)

産後3ヶ月で生理がきた

・時系列の問診

右肩の三角筋萎縮(4才、12才手術)

20代の半ば、精神的なストレスで体調を崩す。

胸の中心にアワアワする違和感があり、胃の不調かと思い 病院受診。

胃は問題なく、動悸と判明。動悸も経過観察となった。

34才 自然妊娠化学流産
 仕事のストレスがきっかけで全身のだるさ、頭痛、めまい、動悸不整脈が出現
 (37才で仕事をやめて動悸以外は消失、)

37才 疲れると首肩の凝りと後頸部の頭痛がある

37才 ビッグママ治療室初診

38才 1回目の体外受精で妊娠ー出産
第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。
お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。
 妊娠時の体重59キロ
 鍼灸治療終了する

40才ー断乳ー体重57キロ
 自然妊娠ー化学流産

40才 不妊治療再開
 再度体外受精を始める。1回目の採卵の凍結胚を移植しても妊娠せず

その後3回の採卵をおこなう
 2)採卵ーG2移植ー化学流産
 3)採卵ー2個ー分割受精せず
      1個 6日目胚盤胞ー凍結ー次周期の移植ー妊娠せず
 4)採卵ー移植できる卵にならず。
この1年でFSHが13から26近くにあがってしまい、それにつれて採卵しても 良い状態にならない。また採卵周期キャンセルも5,6回ある

42才ービッグママ治療室初診 体重59.5キロ
動悸はだんだん悪化
(再初診から1年半後の第二子妊娠中から再度より悪化、食事がとくに気になる)

・体表観察

・・脉診
全体に輪郭が甘い
右関上浮位で消える感じ

・・腹診
脾募あり、心下つまりあり、
気海抜け、関元冷え
左小腹急結あり
左肝の相火きつい
裏肝の相火あり

・・舌診
舌ー乾燥して白い膩苔 中央部が剥苔
舌裏怒脹きつい

・・経穴診
右の内関陥凹
太淵発汗
左合谷陥凹
右後谿陥凹
右神門硬結
三陰交陥凹
右足三里陥凹
公孫陥凹(右<左) 左湧泉冷え ・・背候診 右肺兪陥凹 左腎兪陥凹大きい 督脉全体に冷えがある(命門中心) 大腸兪冷え ・五臓の弁別 ・・肝 入浴で体調改善 生理7日前ゴロから疲れ、肩こり、首凝りがでる(肝、腎) ストレスや疲労で首肩こりや動悸が出現する(現在まで) 左肝の相火きつい、 裏肝の相火あり 右肩の三角筋萎縮(4才、12才手術) 20代の半ば、精神的なストレスで体調を崩す。 胸の中心にアワアワする違和感があり、胃の不調かと思い 病院受診。胃は問題なく、動悸と判明。動悸も経過観察となった。 第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。 お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。 ・・心 風邪を引くと動悸、その他の時にも時々動悸がする 動悸は2時間ぐらい歩いたりしたことでも出現することがある   (疲労と連動、現在まで) 心下つまりあり 右の内関陥凹 右後谿陥凹 右神門硬結 20代の半ば、精神的なストレスで体調を崩す。 胸の中心にアワアワする違和感があり、胃の不調かと思い 病院受診。胃は問題なく、動悸と判明。動悸も経過観察となった。 第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。 お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。 ・・脾 季節の変わり目に調子が悪い 食後に腹脹、胸焼け(38才時よりも↑) 間食はよくある。 口の渇きがある 食後にお腹がはったり胸焼けがよくする 右関上浮位で消える感じ 脾募あり 乾燥して白い膩苔 中央部が剥苔 三陰交陥凹 右足三里陥凹 公孫陥凹(右<左) 第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。 お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。 ・・肺 肩関節前面の痛み、風邪をひくとより悪化 右肺兪陥凹 太淵発汗 左合谷陥凹 右肩の三角筋萎縮(4才、12才手術)(大腸経、三焦経) ・・腎 疲れたときに肩こり、首凝り、頭痛がする。 朝に調子が悪い(腎の陽気不足の可能性) 体力が落ちてくると便秘気味 疲れが残ることが時々 生理7日前ゴロから疲れ、肩こり、首凝りがでる。(肝、腎) 排卵時に下腹のはり、痛み、だるさ 生理の3日目ぐらいから首、肩の凝り、頭痛(後頭部) 動悸は2時間ぐらい歩いたりしたことでも出現することがある   (疲労と連動、現在まで) 気海(抜け)関元(冷え) 左腎兪陥凹大きい 督脉全体に冷え 大腸兪冷え 左湧泉冷え 右肩の三角筋萎縮(4才、12才手術)(大腸経、三焦経) 第一子妊娠中から、食事をすると脈拍数があがり、動悸がするようになった。 お茶を飲んだだけでも動悸がする。甲状腺機能は問題なかった。 ・・風邪の内陥 肩関節前面の痛み、風邪をひくとより悪化 風邪を引くと動悸、その他の時にも時々動悸がする 右肺兪陥凹 太淵発汗 ・・瘀血 38才と41才の時に子宮内膜ポリープ切除 左小腹急結あり 舌裏怒脹きつい 出産後は生理の塊が減ってさらさら ・・気虚 全体に輪郭が甘い脉状 疲れると、後頭部の頭痛、首凝り、動悸 肩は疲労があると痛い。風邪をひくとより悪化 体力が落ちてくると便秘気味 生理前7日ぐらいから疲れ肩こり首凝り、 生理の3日目ぐらいから肩、首の凝り、頭痛 気海抜け、関元冷え 督脉全体に冷え ・病因病理 20代の半ば、ストレスがきっかけで体調を崩し、とくに胸にアワアワする 違和感を感じ、動悸と判明。心臓自体には問題がなく経過観察となった。 肝気の強い鬱滞により内熱が亢進し、上焦の違和感が出現。とくに、心において 心液を乾かし心陰虚ぎみになり不安定となったため動悸が出現したのでは ないかと思われる。 動悸はこのときから出現し、心身の負担があるときに 多少出現するとうい程度で推移している。 34才の時に、ストレスがきっかけで全身のだるさ、頭痛、めまい、動悸不整脈が出現。その後ストレスがなくなり、動悸のみが継続している。 大きなストレスで再度、肝気が上逆、上焦に鬱熱を生じ、心をつき陰液の不足をまねき動悸不整脈の出現、めまい、頭痛につながったのではないかと思われる。また同時に 全身のだるさ疲労なども出現。脾気腎気へも強く影響したものと思われる。 仕事をやめストレスや疲労がなくなり動悸以外のだるさ、めまい、頭痛などの症状は消失。 ストレスから生じていた強い肝気の上逆がなくなったので、めまいや頭痛、疲労感が消失したものと思われる。 しかしながら、疲労に伴っての動悸や首肩こりと後頭部の頭痛も感じるようになっている。34才での強いストレスによる出来事によって、器を小さくし気虚をおこし、腎気の支えが少しでも不安定になると心陰の不足が明瞭となり動悸が出現。 また肺気も補われることがなかったので、腎気が落ちると肺気の弱さが明瞭になり首肩の凝りと後頸部の頭痛へとつながっているのではないかと思われる。また風邪の内陥によって、生命により負担となっていたのではないかと思われる。 その後の1年にわたる鍼灸治療によって、風邪の内陥が救われ、ある程度の気虚の回復がおこなわれ、一人目の妊娠、出産が無事に経過している。鍼灸治療は38才の出産にて一端終了した。 しかしながら、妊娠中から飲食をすると動悸がするようになっている。 妊娠中という体内に陽気の塊がいるため、飲食し胃熱が亢進すると心に影響し動悸がしやすくなっていると思われる。心の陰気の不安定さが明瞭になっている。 産後は子育てや長引く授乳がおこなわれ、そのなかで不妊治療も再開。 42才の初診時には、なんども体外受精を繰り返す中、ホルモン値(FSH)も上昇し始めてしまっている。 この初診時点で、疲れたときに動悸、肩こり、首凝り、後頭部の頭痛がおき、肩関節の前面も無理や疲労と連動して痛みが出ている。 一人目の妊娠時には腎気を中心としてある程度の気虚の回復がなされ無事に妊娠出産につながった。しかしながら、産後の長い授乳による気血の消耗があり、その後不妊治療が続いたため、腎気を中心とする全身の気虚が再びおこったと思われる。 腎気が落ちがちになる疲れたときに気虚は明瞭となり、上焦での局所の気滞である肩こりや首の凝りが出現。また頭痛の部位が後頭部ということにより風邪の内陥があり、この風邪の内陥も生命力への負担となりより気逆を強くし、肺気への負担をましている。 もともと不安定だった心の陰気も腎気のバックアップが不足すると陽気を安定させることができない。生理の3日目ごろの腎気がおちるときにも同様に、首肩のこり、頭痛が出現しやすくなっており、やはり腎気の弱さが明瞭である。 食後の腹脹胸焼けは38才の時よりもきつくなっており、腎気の低下に伴って脾気がおち内湿を生じやすくなっている。内湿が存在するので内熱をはらみやすくなり舌は乾燥し口渇がある。また舌の状態が膩苔でありかつ中央に剥苔がみられるということは、胃の気の弱さが内湿を生じ膩苔となっているなか、胃の気そのものも弱さが明瞭であり剥苔となっているということを示している。 心気の弱りがあるため、この内湿や内熱が心気をつき不安定にし、口渇 動悸や不整脈とつながりやすくなっているのではないかと思われる。 心気の問題は、ストレスがなくなっても出現していることより器質的な問題もはらんでいると思われるが、第一子の出産も無事に経過できていることなどにより、中心の課題とはならないと思われる。腎気が落ちたときに明瞭になりやすいので、腎気を安定させ脾気、心気への充分な養いとすることが必要であると思われる。 また、妊娠の希望に対しても、腎気が落ちることで、子宮への養いの不足と つながっている可能性が伺える。 ・弁証論治 弁証:風邪の内陥 腎虚を中心とする気虚 心陰虚 論治 :疎風散寒 益気補腎 ・治療指針 腎気をたて、肺気を補い風邪の内陥を取り去る。 腎気を救い、全身の気虚を補う。 心気は不安定だが、腎気の弱りと連動して症状が出現し、症状自体は問題と ならないので、心気自体は問題とせず、腎気を補うことや、心気を直接的に不安定にさせる肝気のコントロールをご自身の養生も含めお願いする。 ・生活提言 略 ・不育症への考察 この方は3回自然妊娠なさっています。また7回にわたる胚移植はすべて着床し、HCGは出ています。1人目の妊娠前後の時に、私は不育症の検査をお勧めしました。 これは 1)化学流産があったこと 2)体表観察から、不育症で陽性が出た方の状態と非常に似ているということ この2)の状況で、年齢要因が厳しい方の場合には、私は不育症の検査を お勧めすることが多いです。そして案外多くの方が陽性となります。 これは結局、『血流が悪い』ということにつながります。 この血流の悪さが、今一歩の卵の状態、今一歩の妊娠ー継続の 難しさにつながったのではないかと思います。 最近の当院の治療では、この状況を切り抜けるためにいろいろな方法をとり いれています。『頻回治療』などもその一つ。 採卵周期(生理の5日前から採卵まで)、移植周期、妊娠判明から妊娠15週まで。なかなか妊娠が継続しがたい方々が、頻回治療で乗り切っています。 ・治療経過考察 一人目の治療妊娠では1回の体外受精で妊娠し、出産なさっています(38才) しかしながら40才から始めた二人目の治療は難航。一人目の時にあった凍結胚を移植しても妊娠せず、その後採卵ー移植しても妊娠出来ず徐々にFSHがあがってしまい卵の 状態も悪化してしまうという状況で42才で再度のビッグママ治療室受診でした。 再初診時、やはりお身体がだいぶ疲れた状態で、このままでは『結果が出る治療』に していくにはなかなか難しい状況ではないかと思われました。 しかしながら、ご本人の『二人目の子供が欲しい、兄弟が欲しい』という 切なる願いとご努力で無事に二人目を妊娠。20回に渡る採卵周期への挑戦、そして 鍼灸治療、食事のことなど色々な状況を改善しての妊娠となりました。 一人目の妊娠があっけないほどスルリと展開しています、これはその前に1年程鍼灸治療にて体調を整えたことも良い影響を与えたのではないかと思われます(このときは自然妊娠をという希望でした。半年程で自然妊娠が成立しなかったので、年齢要因も加味し体外受精への挑戦をお勧めし、妊娠ー出産となりました)。 二人目への挑戦は、子育てもあり、体外受精の治療を先行されました。2年程たっても妊娠が成立せず、FSHも上がってきてしまったということで当院受診されています。 治療経過を拝見していて、惜しいポイントは2つあったと思われます。 ひとつは、40才の時に自然妊娠が成立している体調のときのことです。 残念ながら化学流産になっていますが、ここでもう少し体調を整えていたら妊娠の 継続ができたのではないか。そして38才の時の凍結胚を移植するときにも、よい結果につながったのではなかったかということ。このときの判定日ではHCGが18と出ています、この方の他の化学流産での数字のなかでは一番高い数字です。たぶんもう一息ご本人の状態がよかったら上手く妊娠ー出産出来たのではなどと思ってしまいます。 そして再開して一番はじめの採卵周期も、すんなり拡張胚盤胞で凍結出来ていますので、このあたりがポイントで、なんとか体調を整えておけばと思わずにはおれません。 このタイミングを逃してしまい、不妊治療による身体への負担と、年齢要因のため FSHの上昇となりなかなか妊娠につながらないという状況となってしまいました。 しかしながら、ご本人の頭の下がるばかりの地道な努力で、子育てで忙しい中 体調を回復され、年齢要因との追いかけっこをしながら無事に妊娠へとたどりつきました。 ・最後のよい卵がとれたときの食事 前周期の高温期から、お腹がぐーっと鳴ってすいたら食べる 朝7時にしっかりご飯 11時30分にしっかり昼ご飯 12時から夜8時水のみ 8時過ぎに軽い軽食の →久しぶりのよい卵の採卵ができた 小腹がすいたら食べるということをやめて、とことんお腹がすいてから食べた。 ・治療経過 37才ビッグママ治療室初診 38才 一回目の体外受精にて妊娠ー出産  妊娠中も鍼灸治療を継続。無事に出産。 40才ー自然妊娠ー化学流産  再度体外受精を始める。1回目の採卵の凍結胚を移植しても妊娠せず その後3回の採卵をおこなう  2)採卵ーG2移植ー化学流産  3)採卵ー2個ー分割受精せず       1個 6日目胚盤胞ー凍結ー次周期の移植ー妊娠せず  4)採卵ー移植できる卵にならず。 この1年でFSHが13から26近くにあがってしまい、それにつれて採卵しても 良い状態にならない。また採卵周期キャンセルも5,6回ある 42才ービッグママ治療室初診   Yクリニックへ転院ー『厳しい状態』と言われる  11)採卵周期ー3個空砲だった  13、14)採卵周期ーキャンセル  15)採卵周期ー4個採卵ー2つ空砲           桑実胚を移植ー妊娠出来ず           拡張胚盤胞でひとつ凍結  16)採卵周期ー卵見えず キャンセル  17)採卵周期ーキャンセル  18)採卵周期 2つ採卵、一つ空      1つ3日目胚で凍結  19)採卵周期ー胚盤胞で凍結  20)HR周期にて移植ー妊娠