弁証論治:

0021:妊活希望、子宮が小さい、4回採卵しても卵が採れない(28歳)

…病因病理

赤ちゃんが欲しいという訴えの28歳女性です。

25歳から病院へ行き、タイミング、人工授精、そしてIVF-ET(体外受精ー胚移植)とステップアップするも赤ちゃんの希望がかないません。治療歴を拝見すると、体外受精をし採卵しても卵の質自体に問題があり、採卵しても移植できずに終わることが多く、妊娠に致るよい受精卵自体ができにくいという、非常に困難な状況になっています。

日ごろの仕事が非常に忙しく責任も重いハードな仕事をなさっている日々のなか、頑張って不妊治療に通いステップアップするという心身ともに厳しい状況というなか、お体を拝見すると心下のつまりもなく、肝の相火の張りもなくストレス状況がさほどきつくあらわれてはいません。

しかしながら、生理が不規則になったり、翌日に疲れが残ることがよくある、両大巨の冷え、脉状での尺位の細さまた特に背部腧穴の左右腎兪の抜け、右の三焦兪の抜けの大きさは腎気の弱さを思わせ、日ごろの生活や不妊治療そのものからもかなり腎気を消耗しているのではないかと思われます。年齢がお若いので二便の状況には影響が出るほどではありませんが、妊娠にとっては支えとなる腎気の弱さは、子宮が小さいとの指摘があるように、もともとの一源三岐の源である子宮の脆弱さともつながります。

また子宮は、任脉衝脈より気血が注がれることによって成長します。この任衝脉は脾胃の力によって養われる経脉です。

中脘の奥の冷えは脾気の弱りを示していますし、季肋部に湿痰があり、左の脾兪、右胃兪が大きく抜けている状況は現段階で脾気が弱り湿痰を溜め込んでいる状況を示しています。これでは、脾胃の余気で養われていく任衝脈の充実がはかれませんし、結果として子宮(胞宮)への養いも小さなものとなります。

湿痰が季肋部に大きく乗るほど貯めこめられるということは、脾気そのものの弱りが強いのではなく間食などで脾気に負担をかけていることが脾気をいためていることにつながっていると思われます。間食と、多すぎる飲水が脾胃に負担をかけ現段階で背部腧穴の中で一番問題を感じさせる脾兪、胃兪の大きな抜けとなっていますので、間食、飲水に気をつけながら脾気を養うことが大切だと思われます。

弁証:腎虚、脾気の弱りによる任衝脈の虚弱
論治:益気補腎、益気補脾、養胞宮
治療方針、鍼灸治療では、脾胃の負担があれば補いながらも、腎気をあげることを中心に治療をしていく。
子宮胞脉の健やかな養いのため、脾胃の負担を日ごろの食生活を正すことしていただく。

…生活提言

不妊の状況は、良好な受精卵自体がIVF-ET(体外受精ー胚移植)でもできないという厳しい状況ですが、年齢が若いということは、不妊治療にとっては最大の強みです。腎気という身体の土台の力の不足が思われますので、鍼灸治療でしっかりと土台の力をつけていきましょう。

また、子宮を養うのは、胃腸の力が大本となっています。この胃腸の力が子宮を養う力へとつながっていきますので、間食や過度の飲水をやめ食生活を正すことで、子宮を養い赤ちゃんが元気にやってきてくれるようにしましょう。

…初診

1)右後谿+ミニ灸、臍温石+ミニ灸 、中注(7)、関元ミニ灸、足三里灸頭鍼+ミニ灸、復溜灸頭鍼+ミニ灸、左臨泣ミニ灸
2)(右三焦兪、腎兪)温石+ミニ灸 次髎兪+ミニ灸
施灸指示 右後谿、右外関、大巨、関元、復溜、三焦兪、腎兪、中膂兪
…初診より11ヶ月 35診にて自然妊娠