弁証論治:

0104104:黄体機能不全、不育(プロテインS抗原)流産の弁証論治

・問診

症例紹介文

 32才で妊娠希望されたのち、35才まで出産出来ず。
 黄体機能不全、卵管が癒着している可能性が高い、
 子宮壁に厚いところがあるから腺筋症ではないかとの疑いあり。
 不育症の検査でプロテインS抗原不足と指摘。
 心拍確認後の流産、化学流産あり。
 ビッグママ治療室受診後1年5ヶ月で無事に3500グラムの女の子を
 ご出産なさいました。

36歳、女性 専業主婦
身長:151cm、体重:43kg、血圧:105/85
家族構成:夫 肉親の病気の遺伝的傾向:高血圧

・・主訴

不妊治療のために冷えを治したい
【今一番辛い症状について】
20代後半頃から徐々に起こり、常時ある。
クーラー、冬がつらい。
自分では運動不足が原因だと思う。
悪化傾向にある。
全身的な体調の変化と連動しているかは分からない。
今まで治療は受けていない。

【今回の症状と同時に出てきた症状】
肩こり、腰の痛み、体がだるい

【その他に治したいこと】
記載なし

【ふだんの状態について】

(体調の悪い変化)

春、夏、クーラー、秋、冬、暖房、梅雨時、季節の変わり目、

(体調の良い変化)

入浴中、入浴後、入浴の翌日

(風邪)

風邪をひくと寒気、喉痛

(食事)

食べる量は普通で、30歳頃より食欲が落ちてきている。
食事時間は規則的で、朝:9:00、昼:13:00、夕21:00。
普通に噛んで、15分くらいで食べる。
食事前の空腹感はいつもあり、いつもおいしく食べられる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けは、めったにない。
よく食べるのは、白米、パン、豚肉、トマト。
好きな食べ物:甘いもの、麺類、お肉。
嫌いな食べ物:無し。
間食はよくとり、チョコひとかけらやスナック菓子少量を3~4年くらい食べている。

(水分)

1日に、200ccのコップで5杯以上、合計1000cc以上飲む。
緑茶、カフェオレ、紅茶、水、野菜ジュースを飲む。
口、舌、喉の渇きは時々、違和感は無い。

(飲酒)

ほとんど飲まない。ビール1本。22歳から33歳まで11年間続けていた。

(タバコ)

記載なし

(大便)

2日に1回出る。
便秘でおなかが張ってつらいことは時々で、市販の漢方便秘薬を時々使用する。
便秘薬を服用して便の状態は変化したが、体調の変化まではわからない。
薬を使用しないと、便は固い。
便が出切らない感じは時々。
便は細い、コロコロで、量は少ない。
便器に付着することは無く、臭いは普通で時々臭う。

(小便)

1日の6~7回。
残尿感、尿切れが悪いことは無い。
尿の色がたまに黄色。
夜間排尿はめったにない。

(睡眠)

就寝24:00、起床6:00。
寝付き、寝起きはよく、夢は見ない。
翌日に疲れが残ることは時々。

【婦人科の状態】

今一番つらい症状と生理は関連しているか分からない。

初経11歳。
生理期間は3日間で、周期は28日。

生理に伴う体調不良はめったにない。
生理7日前頃から、胸の張り、イライラ、疲れがあり、生理が来ると治まる。
生理痛はない。

生理の量は少なく、色は出血した時の色で、小指大の塊、小さい塊が混じる。
生理1~2日目が出血が多い。

35歳の時に自然流産1回。
流産の後、体調、生理に特に変化は無し。
体調は回復していると思う。

・時系列の問診

【これまでにかかった大きな病気】

記載なし

子供の頃 しもやけがよく出来ていた
11歳・・・初経。

20代・・・肩こり(現在まで)。

30歳頃・・・結婚、
  冬に手足の先の冷え(現在まで)。
  冷えと同時に身体のだるさ、腰の痛み出現

32歳 妊娠を希望する
  自分でタイミング2年4カ月。
  病院でタイミング4回。
  人工授精4回。
  検査で、黄体機能不全、卵管が癒着している可能性が高い、
  子宮壁に厚いところがあるから腺筋症ではないか、と言われる。

35歳・・・体外受精で妊娠するも9週で心拍見えず自然流産。
  ビッグママ治療室受診 

36歳 不育症の検査ープロテインS抗原不足と指摘された。

36歳、体外受精採卵、胚移植、妊娠
  妊娠継続~出産予定日2012年末予定

【不妊治療歴】
結婚30歳、妊娠を希望し始めた年齢32歳。

・体表観察

・・脉診
脈全体 やや細
左関 やや硬い

・・舌診
淡紅~やや淡白
歯痕あり
戦あり
舌裏怒張 ややあり

・・腹診
肝の相火 たぶんあり(注:くすぐったい)
中脘 動悸
気海 やや抜け
関元 やや抜け
少腹急結 左あり、右抵抗感あり

・・経穴診
左列缺 ややこそげ
左合谷 こそげ
左外関 ややこそげ
後谿 陥凹
右神門 硬結
左公孫 やや陥凹
左湧泉 冷え
左太衝 へたれ
復溜 冷え
右足三里 ややこそげ

・・背候診
首がストレートネック気味(注:なんとなく首が痛いことがあるとのこと)
上背部 細絡あり
肺兪 やや陥凹
腎兪 陥凹
命門 冷え
右次髎 つまり

・五臓の弁別

・・肝
生理前7日ごろから胸の張り、イライラ、生理がくると治まる
生理の量は少ない、小指大の塊、小さい塊が混じる
肩こりを感じるようになった
冬に感じるのは手足先の冷え
子供の頃、しもやけ

左の関上 やや硬い
舌ー戦あり
舌裏怒張 ややあり
肝の相火あり
少腹急結 左あり 右抵抗感あり
左太衝 へたれ

・・心
後谿 陥凹
右神門 硬結

・・脾
冷えと同時に身体のだるさが出てきた。
梅雨時、季節の変わり目に体調悪化
1000cc以上 水を飲む
便秘でお腹が張って辛いことが時々ある。
便が出きらない感じが時々、細く、コロコロ、量は少ない

中脘 動悸
気海 やや抜け
左公孫 やや陥凹
右足三里 ややこそげ

・・肺
左列缺 ややこそげ
左合谷 こそげ
上背部 細絡あり
肺兪 やや陥凹

・・腎
30歳ぐらいから冬に手足先の冷え。
冷えはクーラー冬がつらく悪化傾向にある
冷えと同時に腰の痛み、身体のだるさが出てきた。
生理期間3日
生理前7日頃から疲れあり、生理が来ると治まる

関元 やや抜け
左外関 ややこそげ
左湧泉 冷え
復溜 冷え
首がストレートネック気味(注:なんとなく首が痛いことがあるとのこと)
腎兪 陥凹
命門 冷え
右次髎 つまり

・・気虚
歯痕 あり 中脘 動悸

・病因病理

子供の頃からしもやけがよく出来ており、20代からも肩こりが始まり、肝鬱が強めの素 体であったと思われる。

30代の結婚前後のころより、手足末端を中心に冷えを自覚することが多くなり、身体の だるさ、腰の痛みが出現している。このころから腎の陽気を中心に一段おとしてしまっ たと思われる。このため腰痛が出現、素体の肝鬱があったため手足末端が冷えが明瞭に なった。

もともとの強い肝鬱と、腎の陽気不足が継続していたため、脾気が温養されず、梅雨時 の体調悪化、便通の身体のだるさも出現。

強い肝鬱と腎気の弱りがあるため生理前の胸の張り、イライラ、疲れが出現。また 月経血に塊がまじっている。

・弁証論治

弁証:腎虚肝鬱

論治:温養補腎 疏肝理気

・経過

2011年8月初診
   9月採卵、移植、妊娠、化学流産
2012年 2月 採卵 胚盤砲にて凍結
    4月 移植 妊娠
    5月心拍確認
2013年 1月 予定日よりも少し遅れて出産
  3500グラムの女児。