弁証論治:

0111:不育、糖質制限、妊娠弁証論治

・問診

36歳、女性 専業主婦(以前は会社員)
身長:164cm、体重:75kg、血圧:110/85
家族構成:夫

主訴・・・①腰痛、②不妊ぎみ

【今一番つらい症状について】

①腰痛・・・34歳ごろ風邪でせきが止まらず、急にぎっくり腰になった。以降、寒い時に起こる気がする。悪化はしていない。今回の症状が起こった原因は、風邪と職場の冷え。全身的な体調の変化に合わせて、症状は変化する。接骨院でマッサージを受けてぎっくり腰は良くなった。

【今回の症状と同時に出てきた症状】

記載なし

【その他に治したいこと】

肩こり・・・寒いと悪化。

【これまでにかかった大きな病気】

記載なし

【ふだんの状態について】

(体調の悪い変化)

クーラー・・・冷えて腰痛が悪化。
梅雨時・・・腰痛と肩こりが悪化。

(体調の良い変化)

記載なし

(風邪)

記載なし

(食事)

食べる量は普通。
食事時間は、朝:7:30、昼:12:00、夕19:00。
早食いで噛まないで食べることが多い。
食事前の空腹感はよくあり、いつもおいしく食べられる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けは時々。
よく食べるのは、肉、魚、野菜。
嫌いな食べ物はかぼちゃ。
間食はよくとり、果物を食べる。

(水分)

1日に、200ccのコップで3杯以上、合計600cc以上飲む。
お茶、水、カフェイン無しのコーヒーを飲む。
口、舌、喉の渇きは、妊娠してからよくある。
違和感は無い。

(飲酒)

ほとんど飲まない。

(タバコ)

1日10本、20歳~32歳まで。

(大便)

1日に3回出る。
便秘でおなかが張ってつらいことはめったにないので、薬も使わない。
便が出切らない感じはない。
便は太くて、量は多い。
便器に付着することはなく、臭いは普通。

(小便)

1日6回。
残尿感、尿の色が悪いことはめったにない。
尿切れが悪いこと、夜間排尿は無い。

(睡眠)

就寝24:00、起床6:30。
寝付き、寝起きはよく、夢をよく見る。
翌日に疲れが残ることは時々。
夢の内容は、前の仕事のこと。

【婦人科の状態】

初経10歳。
生理期間は5日間で、周期は30日で不規則。
生理に小さい塊が混じる。
量は普通で、生理2日目が多い。

生理に伴う体調不良はよくある。
生理3~4日前から、吐き気、イライラ、疲れ、右腰痛?。
生理が来るとこれらの症状は治まる。
排卵時期には頭痛、イライラ、下腹痛がある。
生理痛は無い。

26歳で化学流産。
34歳の時、15週で死産。
流産、死産の後、体調は変化なく、復調していると思う。

26歳結婚、30歳から妊娠を希望し始める。
不妊の検査で異常は無し。
自分でタイミング4年、病院でクロミッド服用してタイミング3カ月。
死産後、検査によって、不育症と診断され、次回の妊娠にはヘパリンをしようすることになっている。

・時系列の問診

10歳・・・初経。

20代・・・肩こり
不整脈(現在まで)。
(階段を上ると不整脈がおこる)

26歳・・・結婚して、実家を出て、ジュースやお菓子をよく食べるようになる。
化学流産。
流産後、少しずつ太り、20kg増。
生理周期が不安定になる(現在まで)。

34歳 1月妊娠

35歳 15週で死産となる。
死産後、喉が渇くようになる(現在まで)。
風邪からせきが止まらず、ぎっくり腰になる。
その後、腰痛がある(現在まで)。

35歳夏・・・仕事を辞め、専業主婦になる

36歳現在・・・体重75キロ、不妊状態

・体表観察

・・脉診
脉全体 輪郭甘い、結代あり
左関 特に輪郭甘い

・・舌診
淡白舌(注:貧血は出たことあるが、ひどくないとのこと)
歯痕あり
舌裏怒張 なし

・・腹診
脾募あり
肝の相火 なし
裏肝の相火 少しあり
中注 奥に冷え
関元 やや抜け

・・経穴診
右内関 大きい陥凹
右太淵 腫れ
右外関 奥冷え、動き悪い
右後谿 冷え
湧泉やや冷え
右申脉冷え
右の臨泣ややつまり
右三陰交 ちょっとこそげ
陰陵泉 はれつっぱり右<左 左公孫陥凹 ・・背候診 上背部 腠理の粗 大椎 盛り上がり、奥冷え 胸椎4番 おちこみ発汗 厥陰兪 発汗 膏肓 落ちてる 左胃兪 陥凹 腎兪 陥凹 左気海兪 陥凹 ・五臓の弁別 ・・肝 生理周期は30日で不規則(28歳の化学流産後) 生理に小さな塊が混じる ◎生理3~4日前から、吐き気、イライラ(生理がくるとおさ治まる) 排卵時期には頭痛、イライラ 左関 特に輪郭甘い 舌裏怒脹なし 右の臨泣ややつまり ・・心 口、舌、喉の渇きは、妊娠してからよくある。 20代から不整脉がおこっている (階段を上ると不整脉がおこる) 脉全体 結代あり 右内関 大きい陥凹 右後谿 冷え 胸椎4番 おちこみ発汗 厥陰兪 発汗 膏肓 落ちてる ・・脾 梅雨時ー腰痛と肩こりが悪化 食後にお腹が張ったり、胸焼けは時々 間食はよくとる 生理3~4日前から、吐き気、疲れ、 26歳化学流産後、少しずつ太り、20kg増。 脾募あり 左胃兪 陥凹 右三陰交 ちょっとこそげ 陰陵泉 はれつっぱり右<左 左公孫陥凹 ・・肺 35歳 風邪で咳が止まらずぎっくり腰になる。以降寒いときには起こる気がする 上背部 腠理の粗 大椎 盛り上がり、奥冷え 右太淵 腫れ ・・腎 35歳 風邪で咳が止まらずぎっくり腰になる。以降寒いときには起こる気がする 肩こりー寒いと悪化する 腰痛ー寒いと悪化する 口、舌、喉の渇きは、妊娠してからよくある。 翌日に疲れが残ることは時々 生理3~4日前から疲れ、右腰痛? 26歳化学流産後、少しずつ太り、20kg増 生理周期は30日で不規則(26歳の化学流産後) 裏肝の相火少しあり 中注奥に冷え 関元やや抜け 右外関 奥冷え、動き悪い 湧泉やや冷え 右申脉冷え 腎兪 陥凹 左気海兪 陥凹 ・・気虚 脉全体 輪郭甘い、結代あり 歯痕あり ・病因病理 20代で肩こりを感じ、階段を上ると不整脉がおこるというように、肝気がたちやすく、身体に負荷がかかると心気に負担となってあらわれるような素体であった。 26歳の結婚を境に生活がかわり、食生活が乱れ、ジュースやお菓子など脾気に負担がかかる食生活がはじまった。そののち妊娠したものの化学流産をする。 化学流産は腎気を使うことで回復しようとしたが、食生活の乱れで脾気も弱っていたためバックアップがなかったため、腎気が一段落ちることとなってしまい、そのため生理周期が乱れるようになった。また、腎気が一段おちてしまったため、脾気の低下が明瞭となり湿痰がたまりはじめ体重増加もはじまった。 35歳の時に妊娠、残念ながら15週で死産となる。 このとき、風邪から咳が止まらずぎっくり腰となった。死産によって心身ともに弱っていたところへ風邪が侵入し、腎気、肺気を使って回復しようとしたものの、腎気が支えきれずぎっくり腰となり、腎気の回復がなされないままであるので腰痛が継続している。 大椎が冷え盛り上がり奥に冷えがある。胸椎4番が落ち込み発汗し、舌が淡白舌である。上焦に冷えの停滞があり、風邪の内陥が疑われる。もともと心気の弱りもあり、この上焦の負担が全身の負担となっている。26歳より20キロ増えた体重、脾募、梅雨時に体調が悪化するなど、脾気の弱りから生じた内湿も全身の気機への負担となり、流産死産によって腎気が落ちた状態から、風邪の内陥、内湿などによる全身への負荷によって腎気が回復できない状態が継続している。 ・弁証論治 弁証: 風邪の内陥 腎虚 論治: 疎風散寒、補腎 ・治療指針 まず第一に風邪の内陥を取り去り全身の負担をとる。 落ちたままになっている腎気を救い、妊娠の継続に対する生命力の底上げをする。 腎気がたってきたら脾気の弱りも補い内湿の排泄を促す。 もともと心気の弱りがあり、全身の気機への負担となっているので、心気を 適宜バックアップする。 ご本人には食事の節制をお願いし、脾気への負担を取り去り内湿による全身の負担を軽くしていく。 ・・治療経過 200x年1月初診 右外関、百会、目窓、左公孫、三陰交灸頭鍼、左湧泉ミニ灸 中注関元温灸 大椎温灸、後頭部に鍼、左胃兪、左腎兪、気海兪鍼して温灸 2診目 前回治療後、右の頭を中心とするイヤな感じが取れる。 (まだ頭部に赤み熱感はある) 百会、目窓、右の内関、左の公孫 右三陰交、右足三里右陰陵泉左三陰交灸頭鍼、 大椎、左胃兪、左三焦兪、腎兪、大腸兪鍼して温灸 10診目 花粉症のシーズンで発症しているが、鍼灸をして鼻の通りがよくなっている。 15診目(初診から4ヶ月) 妊娠した 腹部棒灸 左陰陵泉、左外関、足三里 腎兪、左三焦兪、左胃兪 16診目 ヘパリンスタート 腹部棒灸、左外関、左陽池、左湧泉 足三里 大椎温灸 左胃兪、左三焦兪、腎兪 20診 14w 蓄膿になって苦しい 外関、右陽池、左足首外側二点 足三里、上星(5) 左腎兪、胃兪、右腎兪 上天柱(5) 22診 16w 妊娠糖尿病と診断され1400カロリーを指示された。 炭水化物のセーブをお勧めする 左外関、足三里、復溜 左脾兪、左胃兪、腎兪 27診 20w 血糖値は1時間値で120を超えている。 全体で5キロ減った、コレステロールが低くなってきたから1400カロリーから少し増やし ましょうと言われている。便秘している。 外関、復溜、足三里 右胃兪、左三焦兪、胸椎12番 腎兪 28診 21w 食後1時間値は91だった。 施術同じ 39週 無事にご出産、おめでとうございます(^^)