・問診
36歳 女性 事務職(人前で話すことが多い)
血圧100-70、体重63キロ、身長172センチ
172センチ63kg
主訴不妊、不育、他に直していきたい症状は花粉症、便秘
春、夏、クーラー、夕方、深夜肉体労働時に体調が悪い
風邪を引くと寒気、喉痛、発熱、頭痛(前部)肩こり、便秘になる。
夕方から深夜に前頭部の頭痛がする。
食欲は大食規則的に食べる、時間は15分空腹感はあり、普通によく噛んで食べる。
食事は美味しく、食後の腹脹や胸焼けはよくある。間食はよくある。
飲酒はほとんどしない。カフェオレ麦茶、ルイボスティーなど1200cc以上。
口舌喉の渇きはよくある、口舌喉が苦いときや粘るときは時々。
5日に1回ほど便通がありお腹がはっていつもつらい。
過敏性大腸炎の薬を飲んでいたときは毎日便が出た(2002年~半年)
便が出きらない感じはいつもで、コロコロ便で少ない。
付着することはめったになく、きつくよく匂う。
小便は1日に10回、尿切れが悪いこと残尿感はない。時々黄色い。
子供の頃から夜間排尿がいつも2回ある。
腎盂炎を繰り返す
寝付きはよい、夢をよく診る、寝起きは悪い、疲れが残ることがよくある。
生理周期は25日型で6日間、最近23日の時もある。
生理前に鈍痛がし、腰や下腹部、頭の前が痛い。
生理の色は濃く、小さな塊が混じる。
流産5w、死産17w一回。
流産後太った、高温期の体温が低くなった、生理周期が短くなった。
流産後1回目の生理は大量出血だったがその後は普通。
死産後母乳が出ないように薬を飲んだ
ホルモン検査、卵管造影、フーナー検査など特に異常なし。
・時系列の問診
小さい頃から夜間尿あり、便秘あり。
27-28歳 腰痛 整形でレントゲンをとったが異常はなかった。
28歳
便秘は過敏性大腸炎のせいではないかと薬を飲んで便通がよくなった。
29歳
尿がでずらく水腎症(腎臓尿管移行部狭窄症-内視鏡手術)
このとき、いままでの腰痛は水腎症のせいだとわかる。このあと腰痛なくなる。
内視鏡手術をするも、上手く流れず腎臓の腫れはなかなか引かなかったが、腰痛な
どの症状はなくなる。腎機能そのものは異常がなかった。
手術後3回ほど腎盂腎炎をし経過観察中(32歳が最後)。
30歳ぐらいから稲科のアレルギーがはじまる。
32歳 腎盂腎炎で緊急入院(このときが最後)
33歳 妊娠を希望し始める
34歳
犬を飼って散歩するようになった。とても気分がはれた。
10日とか2週間に1度が当たり前の便秘が5日に1回でるようになり、頭痛がなくなった。
35歳 タイミング指導で妊娠5wで流産
36歳 タイミング指導で妊娠17wで流産
流産する少し前に、水腎症の時と同じ腰痛が発生、流産後消失
妊娠中から体重が増加、流産後にさらに増加(54kgから63kgへ)
不育症の検査で血液凝固機能異常を指摘され、妊娠後にはヘパリンとアスピリンの投与を受ける予定。
・体表観察
・・脉診
淡白から淡紅
・・脉診
全体に細い弱い輪郭が甘い
・・腹診
脾募薄くあり、肝の相火左アリ
季肋部張り、上脘から中脘表面に固さあり
気海から関元舟形の抜け
右下腹部盲腸の傷。
・・経穴診
列缺こそげ 右<左
神門 右 硬結
内関 左 陥凹
合谷 左 奥にこそげ
上巨虚 右左 冷え陥凹
申脉 右冷え
公孫 左 表面張って奥こそげ、奥に寒えきつい
湧泉 左 奥冷えてきつい
・・背候診
肺兪 右抜け 左硬さあり
心兪 右抜け 左やや陥凹
胆兪 左大きい陥凹べたっとしている
L1椎骨 飛び出している
胃兪 陥凹 左>右
・五臓の弁別
・・肝
生理周期は25日型で6日間、最近23日の時もある。
生理に小さな塊がまじる
生理の色は濃く、小さな塊が混じる。
犬の散歩でとても気分がはれた、便通がよくなった
肝の相火左アリ、季肋部張り
胆兪 左大きい陥凹べたっとしている
・・心
神門 右 硬結
心兪 右抜け 左やや陥凹
内関 左 陥凹
・・脾
風邪を引くと便秘になる
夕方から深夜に前頭部の頭痛
食後の腹脹や胸焼けはよくある
口舌喉の渇きはよくある、口舌喉が苦いときや粘るときは時々
5日に1回ほど便通がありお腹がはっていつもつらい。
過敏性大腸炎の薬(コロネル、水分調整)を飲んでいたときは毎日出た
便が出きらない感じはいつもで、コロコロ便で少ない。
付着することはめったになく、きつくよく匂う。
生理前頭の前が痛い
小さい頃から便秘あり
脾募薄くあり、季肋部張り、上脘から中脘表面に固さあり
上巨虚 右左 冷え陥凹
公孫 左 表面張って奥こそげ、奥に寒えきつい
胃兪 陥凹 左>右
・・肺
列缺こそげ 右<左
合谷 左 奥にこそげ
肺兪 右抜け 左硬さあり
・・腎
夏、クーラー、夕方、深夜肉体労働時に体調が悪い
夕方から深夜に前頭部の頭痛
子供の頃から夜間排尿がいつも2回ある。
寝起きは悪い、疲れが残ることがよくある。
生理周期は25日型で6日間、最近23日の時もある。
生理前に鈍痛がし、腰や下腹部、頭の前が痛い。
流産5w、死産17w一回。
流産後太った、高温期の体温が低くなった、生理周期が短くなった。
小さい頃から夜間尿あり
27-28歳腰痛
29歳 尿が出ずらく水腎症となり手術、腰痛が出ていた
(手術後腰痛はなくなる)
腎盂炎を繰り返す(34歳の時が最後)
腎機能そのものに問題がでたことはない。
気海から関元舟形の抜け
申脉 右冷え
湧泉 左 奥冷えてきつい
L1椎骨 飛び出している
・・気虚
全体に細い弱い輪郭が甘い
列缺こそげ 右<左
・病因病理
28歳頃から出現した腰痛は、整形外科的な問題は発見されず、29歳の時に水腎症の診断の折腎臓の腫れのためとわかり、内視鏡による治療により軽快している。そののち妊娠により、週数が進み尿管が圧迫されるということにより出現している。
2回の流産後、体重が増えたり、高温期の日数が減ったり、生理周期が短くなるなど、明らかに腎気が低下していると思われる状態でも腰痛が出現し ないことにより、この腰痛は、内視鏡の手術のおかげで腎気の盛衰そのものとは密接に連動はしなくなったが、形態としての弱りは奇恒の腑である子宮の活動が妊娠で盛になったときに強く症状が出現し、やはり腎気と連動することは明らかである。
小さい頃から夜間尿があったり、きつい便秘があったりしている。夜間尿はもともとの腎気の弱さ、そして便秘は犬の散歩で気分がはれることにより10日一回だったのが5日に1回と軽減し、前頭部のもかなり解消していることから脾気の弱さや肝気の鬱滞の影響が素体としてかなりあるのではないかと考えられる。
風邪を引くと便秘になったり、犬を飼うことで気分がはれ便通がよくなる、過敏性大腸炎の薬で軽快など、便通という脾気の問題が肝鬱と強く連動していることがわかる。また、仕事柄人前で話をすることが多く、肝気をぐっと張ることが多いことで肝気を支える腎気にも負担を掛けることが日常的に多い生活である。
下腹の気海から関元の舟形の抜けや列缺のこそげは、脾腎の大きな虚損を示し、全身の気虚の強さをあらわしている。そのうえ、神門の硬結や肝の相火、季肋部の張りなど肝気の鬱滞も認められるが、胆兪の大きな陥凹や心兪の抜けや陥凹により脾腎の土台が肝気を支えきれなくなっているのではないかという可能性までも感じさせる。
仕事柄生じる肝気の張りや、脾気の問題は子供の頃から継続している腎気の弱さに、大きな負担となり、妊娠のしにくさにつながっている。また、妊娠は奇恒の腑を中心として脾腎の大きな負担を必要とするため、妊娠そのものの継続の難しさや継続したときの(腎臓の腫れ、水腎症)による腰痛の出現などと大きな問題となっている。
・弁証論治
弁証:腎虚を中心とした気虚
論治:益気補腎
・治療指針
肝気の問題、脾気の問題と沢山の問題が生じているが、全身の気虚がきついため、なかなか妊娠せず妊娠したとしても継続ができなくなっている。妊娠がご希望でもあり弱りの中心でもある腎気をたてることを中心にし、全身を補気していくために肝気の調整、脾気の底上げもおこなっていく。
・生活提言
人間は、生きる意思をもって進む生き物ですね。
前向きに、今日、そして明日を生きていこうという意志をささえるものは、 身体のベースとなる素体の力です。
もともと本来的にこの素体の力の弱さをはらんだお身体だと思います。 しかしながら、生きる意思は人並み以上に頼もしくお持ちであり、人生の華を咲かせて くれているのだと理解しています。ただ、支える素体の力の不足が、ときに オーバーペースな生きる意思を支えきれずになることもあるのではないかと 思います。また、妊娠ー出産という身体にとっての大きな負荷は、意思の力 だけではどうにもならない部分もあります。
妊娠を考えるときには、素体の力(腎気の力)を中心に、栄養をしっかり受け取る力(脾気の力)もつけ、ご自身の精神的な生きる意思の行き過ぎをちょっとだけセーブをかけながら、 上手に過ごして頂きたいと思います。
とくに、妊娠の中盤から出る腰痛は、ご自身の生命力である土台の力(腎気の問題)と直結する問題となってくると思います。
しっかりと乗り切り、無事なご出産をお祈りしています。
・治療経過についての考察
8月の初診より週に1度で施術。便通がよくなり体調安定。
12月に妊娠。
妊娠5週目よりすぐにヘパリン開始、風邪を引く。
強い気逆となり脱水、入院となる。
妊娠期間を通じ、結代脉、数脉がきつく、心臓への負担の大きさを思わせた。
妊娠15週よりおこった腰痛(腰背部痛)は、水腎症のためによるものと判明。
しかしながら、不育症治療のためヘパリン療法をおこなっているため、カテーテル治療を含む手術療法は対象にならないということで(出血傾向があるため手術が出来ない)、経過観察となる。
かなり痛みが強く、水腎症を悪化させることも妊娠に影響が強いので、ここより積極的に、背部兪穴を使って腎気を高め、妊娠を乗り切るべく鍼灸を手厚くすることにする。週に最低二回、出来れば3回、また自宅での施術もご主人に指導し、積極的におこなう。 この水腎症による痛みは、治療の手厚さに比例して良好に経過でき、妊娠中問題とならなかった。
数脉は、治療の手を入れるものの、一回の治療の中でも変化は小さかった。脉自体がゆるんでも、数脉は不変という手応え。これはヘパリン療法の副作用ともいわれていたようだ。数脉に結代脉まで絡むような状況の時はご本人の辛さがより増している。治療後結代脉は取れることが多かったが数脉は不変のことがほとんど。
32週より下肢のむくみがきつくなる。腎臓のためと水を飲みすぎていることが判明。水分摂取を適度にすることで、むくみがかなり軽減
身体の調子、本人の辛さそのものは、妊娠32週頃より軽減している。これは腹部の突き上げが減り、上腹部に少し余裕ができたころからだ。しかしながら、督脉の不安定さはだんだん増しているような感じで、不安定感が強くなってきた。TH11からL3まで 間は詰まっていないが、全体にボコボコ不規則な状態がだんだんひどくなっていった。督脉の弱りは腎虚のあらわれそのものであり、弁証どうりの状況があらわれたものと考えられる。
陣痛促進剤をうつも、陣痛がつききれなかったのも、この督脉の弱り、腎気の弱りの影響であったかもしれない。よい判断で無事なご出産になったこと、なによりである。
(いつもこういった状態。陣痛に耐えられるのかと感じるような不安定さあり)
・治療経過
09年8月初診
2診 便通が良くなった
ここから、週に1度で施術、体調安定
09年12月 妊娠
妊娠5週よりヘパリン開始、風邪を引いた。
左陽池、外関、下腹棒灸 足三里(灸頭鍼+ミニ灸)
右脾兪、左胃兪、両三焦兪(温灸+ミニ灸)
妊娠8週 脱水のため入院
妊娠10,11週 きつい結代脉
下腹棒灸 足三里(灸頭鍼+ミニ灸) 左外関、後谿、ミニ灸三陰交
右脾兪、左三焦兪 両腎兪(温灸+ミニ灸)
妊娠14週 数脉がきつい、
上腹部にきつい張り、おへそが便秘(していない)のときのように痛い
右左外関ー臨泣 復溜(灸頭鍼+ミニ灸)
左胆兪、左脾兪 両三焦兪(温灸+ミニ灸)
妊娠15週(四回施術)
右の腎臓(腎兪上あたり)が痛い、水腎症のためと言われる。
ヘパリンをしているので、カテーテル手術などが出来ないので
経過観察といわれてしまう。 どうしても痛みが出れば手術も検討
積極的に右の腰の痛み(水腎症のための痛み)を取るようにここから、
週に2,3回の施術に切り替える。
右左外関ー臨泣(+ミニ灸) 復溜(灸頭鍼+ミニ灸)
右胃兪、右腎兪 両三焦兪、右大腸兪(温灸+ミニ灸)
自宅では、復溜、臨泣のミニ灸をしてから、右の腎兪、大腸兪に棒灸とミニ灸を指示
妊娠15週、2回目、3回目
左右外関ー左右臨泣 三陰交(灸頭鍼+ミニ灸)
左胃兪、右腎兪 右三焦兪(温灸+ミニ灸)
妊娠15週 4回目
今日は左から痛い
外関、復溜、左湧泉
胃兪、右の腎兪、三焦兪(温灸+ミニ灸)
妊娠16週
TH11,12の骨間が空いている。鍼のあとはok。
外関 左湧泉 復溜
右脾兪、左右胃兪 左三焦兪 右腎兪 右大腸兪
妊娠18週
腎臓はまだ腫れている
前回の検診でタンパク+だったが、今回はokだった
外関、左湧泉、左復溜
左脾兪、右胃兪 両三焦兪 右腎兪、右気海兪
妊娠18週
背中がゾクンとする感じで調子が悪い(翌朝よくなった)
結代脉、数脉がひどい(ミダレダイコ)
外関 左湧泉、左三陰交
胃兪、腎兪 脊柱、懸樞 ジリョウ(温灸+ミニ灸)
妊娠19週
身体がきつい
TH11とTH12のところに段差が出ている
右後谿、右霊道 足三里灸頭鍼+ミニ灸
左右脾兪、三焦兪 TH11とTH12 右気海兪(温灸+ミニ灸)
妊娠20週
右の尺位から関上にかけて明瞭に固い
外関 左湧泉 足三里灸頭鍼+ミニ灸
右胃兪 三焦兪、腎兪 気海兪(温灸+ミニ灸)
妊娠24週
身体かなりきつい
左外関 右後谿 復溜
左脾兪、左胃兪、右三焦兪 腎兪(温灸+ミニ灸)
妊娠25週
胃が痛い
結代脉、数脉がひどい
外関、左湧泉 三陰交
脾兪 左胃兪 右腎兪 右大腸兪(温灸+ミニ灸)
妊娠26週
腰に少し痛みがある(水腎症の痛みと同じ)
きつい数脉
外関 足三里 右三陰交
th12 脾兪、右胃兪、左三焦兪 右腎兪(温灸+ミニ灸)
妊娠26週
息が苦しい 上腹部の張りがきつい(心下部のつまりきつい)
外関 復溜、左湧泉 足三里灸頭鍼+ミニ灸
胃兪 右三焦兪 右腎兪 左脾兪
妊娠27週
三日前に灸に胎動が感じられなくなって病院にいった(大丈夫だった)
心下部の詰まりとれている、息苦しさもだいぶよくなった。
体重二キロ減った きつい数脉は変わらず
復溜、後谿、足三里灸頭鍼+ミニ灸
脊柱 左脾兪 左胃兪 三焦兪 右腎兪、右気海兪(温灸+ミニ灸)
妊娠29週
とてもつらい、いても立ってもいられない感じ
肝機能低下
腰の痛みは大丈夫
外関 右復溜
左胆兪 脾兪 三焦兪 右腎兪(温灸+ミニ灸)
妊娠30週
苦しいピーク越えた感じ 昨日あたりから楽
外関、復溜 足三里灸頭鍼+ミニ灸
左脾兪 左胃兪 右三焦兪 右大腸兪
妊娠31週
足のむくみがひどい
右後谿 右霊道 足三里
脾兪 左胃兪 右三焦兪 右腎兪 大腸兪 中膂兪(温灸+ミニ灸)
妊娠32週
だいぶ落ち着いている
TH11からL3まで 間は詰まっていないが、全体にボコボコ不規則な状態
(いつもこういった状態。陣痛に耐えられるのかと感じるような不安定さあり)
復溜 外関 足三里灸頭鍼+ミニ灸
胃兪、三焦兪 大腸兪(温灸+ミニ灸)
妊娠33週
ピーク時の脉拍が140ぐらいだったのが、いまは120ぐらいで下がった
復溜外関 足三里灸頭鍼+ミニ灸
妊娠34週
頚管短縮のため安静
妊娠36週
落ち着いている 二週間後に計画分娩の予定
内関 復溜
胃兪 左脾兪 右三焦兪 腎兪(温灸+ミニ灸)
妊娠39週
帝王切開にて出産
3000グラムオーバーの女の子 おめでとうございます(*^^*)
無事に生まれてきてくれて、ありがとう!