弁証論治:

0122:流産せずに産みたい弁証論治

症例集→流産せずに産みたい(35歳出産)【case:0122】

・問診

34歳 女性 会社員 162センチ 50キロ

・・主訴

1)妊娠できるよう、流産しないように体調を整えたい

2)右肩から腕の痛みが時々出る

  痛みの場処は、
  右の臂臑、右の天宗あたり、上腕二頭筋のライン
  左の缺盆あたりも痛い

3)肩、首凝り (肩こりは左右肩井あたりに感じる)

そのほか、冷えを直していきたい

2)について、

1年前の夏に、肩こりのような状態から腕が上がらなくなり、深夜になって激痛により 眠れない日が7ヶ月間に3回あった。痛み止めの注射と飲み薬で翌日には治る。自分では 冷えたときにおこると思う。(右肩)

症状が発症したときには、仕事が忙しく、数回の引っ越しが重なった。
症状の発症のきっかけは、仕事場のクーラーの冷えによるものだと思う。
症状が発症してから、発熱があり、注射と飲み薬で翌日納まった(治療は1日のみ)。

・・【ふだんの状態について】
クーラーで体調悪化

食欲は普通、時間は不規則、30分以上、食欲はある、美味しく、腹が張ることもない。
たばこナシ、飲酒週に4,5回ビール1本程度
一日600cc前後の飲水
口が渇くことはめったにない、苦いことは時々ある

大便は1日一回、バナナ、便器に付着することもない、出きらない感じもない
小便1日にだいたい10回、尿切れ、色、夜間尿など問題なし
睡眠は寝つきがよく、夢をよく診る、寝起きはよい。疲れは時々残ることがある。

・・【婦人科の状態】
初経は11歳、28日型で6日間
生理の前7日頃から胸の張り、イライラがあり、生理がくると納まる
生理痛は1,2日目に鈍痛
小さい塊がまじる。生理の量は少ない
31歳、33歳と自然妊娠、流産
2回目の流産のあとは、生理周期が不安定となり、出血量が減った
29歳から妊娠希望

・時系列の問診

34歳 女性 会社員 162センチ 50キロ

29歳から妊娠希望

30歳 生活環境が変わりストレスが多くなる 肩こりが↑

31歳 化学流産、生理が自然に来た

33歳 7週にて心拍見えず生理・・以来、生理周期が不安定で出血が減った
   生活環境の変化(引っ越し)
   仕事が忙しかった、クーラーがきつかった→肩の痛み発症

34歳 この数年、毎年1キロぐらい体重が増えている

・切診など

・・脉診
輪郭甘い 
やや遅脉 
右の寸口がやや硬い

・・舌診
やや色褪で淡白 
歯痕あり胖嫩 
戦アリ

・・腹診
心下つまりややあり、
脾募ややあり
肝の相火左きつい 
裏肝の相火あり
下脘抜け
左天枢つっぱり
左中注冷え
少腹急結左右ともあり

・・経穴診
缺盆の内側つまり
左内関陥凹
右経渠から太淵腫れ
右外関やや陥凹
右陽池 冷え
右神門少し硬結
右公孫陥凹
左右三陰交ややこそげ
右陰陵泉つっぱり
右照海 動きが悪い

・・背候診
大椎 発汗
右肺兪発汗陥凹
右厥陰兪、心兪、陥凹
左厥陰兪から心兪筋張り
右胆兪大きく陥凹、中に筋張り
右胃兪陥凹トップ
左右腎兪陥凹
右の大腸兪ゆるみ

・五臓の弁別

・・肝
ストレスで肩こりが↑
仕事が忙しく引っ越しが重なった(心労が多かった)
生理前7日頃から胸が張りイライラ
舌 戦アリ
肝の相火左きつい
右胆兪大きく陥凹、中に筋張り

・・心
心下つまりややあり
左内関陥凹
右神門少し硬結
右厥陰兪、心兪、陥凹
左厥陰兪から心兪筋張り

・・脾
ここ数年、毎年1キロぐらい体重増加
脾募ややあり
下脘抜け
右公孫陥凹
左右三陰交ややこそげ
右陰陵泉つっぱり
右胃兪陥凹トップ

・・肺
右の寸口がやや硬い
左天枢つっぱり
缺盆の内側つまり
大椎 発汗
右肺兪発汗陥凹
右の大腸兪ゆるみ

・・腎
31歳化学流産
34歳7週にて心拍見えず流産 以来生理周期が不安定、出血減った
仕事が忙しく、クーラーの冷えがあったときに肩の痛み発症
クーラーで体調悪化

裏肝の相火あり
左中注冷え
右外関やや陥凹
右陽池 冷え
右照海 動きが悪い
左右腎兪陥凹

・・瘀血
右肩の痛みは、深夜に激痛 眠れない日があった。痛み止めの注射で治る
 発症時には発熱があった
生理に小さい塊が混じる
少腹急結左右ともあり

・・気虚
脈の輪郭が甘い やや遅脉
舌 やや色褪で淡白 歯痕あり胖嫩 

・病因病理

30才の頃、親との同居など生活環境の変化やストレスが多く、肩こりを感じやすくなっ ている。

31才の時に化学流産。また33才の時にも心拍が見えず流産している。33才の時の流産以 降に生理が不規則になり、生理の量が減っている。流産によって、腎気に負担がかかり 、回復できずに継続してしまっている。

その夏、仕事が忙しく疲労が重なり、その上家庭の問題からストレスも重なる状況が続 いていた。強い肝鬱が弱った腎気をより消耗させ、それによって肝鬱が強くなると言う 悪循環がおきていた。

そういったなか、クーラーの冷えにより肩こりが悪化したような感じから深夜の激痛 となった。腎気と肝鬱の悪循環から、腎気の弱りが進み脾肺へのバックアップが弱くな り、衛気の弱りを生じた可能性がある。

このためクーラーの冷えなど外寒の影響を受け やすくなり、肩上部の経絡の衛気が劫かされ、とくに、気が裏に納まり衛気の守りが薄 くなる深夜の激痛となったのではないかと思われる。

現時点でも、上背部をみると、痛 みのある右の肺兪、厥陰兪、心兪と陥凹があり、反対側の厥陰兪は心兪は筋張っている 。痛みのある右側の背部?穴は弱りが中心であることから、この肩の痛みが肝鬱のスト レスから肺気心気への負担となり、肺経心経を中心とした経絡経筋の弱りを生じさせ、 衛気の弱りに乗じて発生したものであると思われる。

痛みは注射など局所の対応で解決したものの、腎気の不足は継続し、肺気をおぎない衛 気を増すことには致っていないため、仕事の状況や冷えなどにより時々発作的な痛みと なっている。

また、腎陽を中心として腎気の不足は脾気へのバックアップ不足となり内湿を生じさせ 毎年の体重増加となっていると思われる。

・弁証論治

・・弁証

腎陽虚を中心とした衛気の弱り
右肺経、心経、三焦経を中心とした経絡経筋病

・・論治

温補腎陽
温補肺経、心経、三焦経経筋経絡

・治療経過

29歳から妊娠希望

30歳 生活環境が変わりストレスが多くなる 肩こりが↑

31歳 化学流産、生理が自然に来た

33歳 7週にて心拍見えず生理・・以来、生理周期が不安定で出血が減った
   生活環境の変化(引っ越し)
   仕事が忙しかった、クーラーがきつかった→肩の痛み発症

34歳  この数年、毎年1キロぐらい体重が増えている
   3月ビッグママ治療室受診 7日から10日に一回受診
   4月 肩の調子がよい
   7月 排卵検査薬がしっかりと出るようになってきた
   8月 クーラーで腕が冷えて痛い
   9月 肩のつらさ全体に低下
   10月 35歳 自然妊娠
 4月 34週にて帰省 終了

夏 3500㌘オーバーの男の子を出産
 おめでとうございます(^^)