弁証論治:,

0186:沢山の漢方を飲んだけど効かない、不妊、冷え性

..主訴 冷え、便秘、不妊、不安や緊張ストレスによる動悸パニックのような症状
160㎝57キロ 33歳主婦 週に3-4日のアルバイト

主訴 冷え、便秘、不妊、不安や緊張ストレスによる動悸パニックのような症状
冷え、便秘は昔からで同じ感じ。動悸は悪化している様な感じ
冷えは子供の頃から、手足が特に冷える、足にしもやけ、便秘で病院にかかったことも
ある。
動悸パニック症状は1,2年前からで、病院での検査や、慣れない人の前で話をするとき、発表などで注目されたとき。原因は流産手術のトラウマ、仕事や近所の人との人間関係。
他に多毛(口の周り、あご、膝下など22歳頃から気になる)
白髪(子供の頃から、親も同じ)を治したい
この1,2年、身体のだるさ、耳鳴り(高音、詰まった感じ)眠りに入りにくい、眠りが浅いことが気になる。
全身状態に合わせて変化するかどうかはわからない。
15種類ぐらいの漢方を飲んだけど、冷えは変わらない、便秘は多少改善。全体に何かが変わった気はしないけど以前よりは穏やかに過ごせた気がする。(飲んだことのある漢方薬:桂枝茯苓丸、加味逍遥散、温経湯、真武湯、抑肝散陳皮半夏、補中益気湯、八味地黄丸、当帰芍薬散、五積散、香蘇散などなど)

..時系列
子供の頃からしもやけ、便秘。ストレスで胃痛がおこる
10代後半68キロあった体重をダイエットで62キロにした。
20代半ば、仕事のストレスで食べても体重が減っていった。52キロへ
30歳 結婚、仕事をやめて体重が少し増える55キロ
31歳病院のタイミング指導にて妊娠、胞状奇胎にて流産(経過良好)
体外受精などするも妊娠出来ず。
1,2年前から動悸、パニック
半年前に交通事故にあい、腰からお尻に痛みがある。
33歳 なんとなく体重が増えて57キロ

..普段の状態について
入浴後はのぼせる。気を使った後や睡眠不足、食べ過ぎ、飲み過ぎで体調悪化
食欲は普通、時間は一定で、早食い、噛まないことが多い
食事はいつも美味しく空腹感がある。間食はよくある(チョコ、あめ、ぷりん)
飲み物は800cc以上、コーヒー白湯、紅茶、みるみる、水。口が苦いことなどない。
月に4,5回飲酒、タバコは吸わない。
3-4日に1回の便通、張らない、薬は服用しない。便が出きらない感じは時々。太い、コロコロ、付着することはよくある。小便は1日4回、残尿感はない、尿切れの悪い感じは時々。色が悪いことはよくある(黄色)
夫の帰宅が遅いので寝るのは11時30分、朝は7時半。寝つきはふつう、眠りは浅い、寝起きは普通、疲れが残ることは時々

..婦人科の状態について
初経は12歳、28日型4日間
不規則で遅れがち、生理の色は濃く、小さい塊や濃血が混じる。少し出血の量が多い。
生理前の7日頃から落ち込み、不安感があり、2,3日前から胸の張り(あったりなかったり)、イライラ、不安や追い込みがある。生理がくると納まる。
生理痛は初日に鈍痛。排卵時には下腹部が痛い、乳首が痛い。
病院では原因不明不妊と言われた、PCOSの傾向があると言われた。

..切診
汗をかきやすい(切診していて汗がにじんでいる)
脈は全体に輪郭が甘く細い、やや浮
舌は淡白やや膩苔、戦アリ、舌裏怒脹きつい
頭部熱感なし
心下つまりあり、脾募あり固い(右<左)
季肋際閉じている、右側詰まり
中カン固い冷え、小腹急結左きつい
右太淵やや腫れ
左合谷こそげ
右外関動きが悪い
右後谿陥凹
霊道こそげ
足首から先冷えている感じがきつい(芯から冷たい感じ)
左大都割れ
右臨泣
復溜冷え
足三里 熱感ややあり、陥凹

大椎熱感あり、細絡多し、?理の粗ややあり。
大杼から心兪筋張り、心兪が根、陥凹
背中から骨盤は温、脾兪陥凹(右脾兪がトップ)
三焦兪抜け(左三焦兪の抜けが2番)

..五臓の弁別
…【肝】
手足の冷え
緊張すると動悸やパニックのような症状(1,2年前から)
高音の耳鳴り(1,2年前から)
眠りにくい、眠りが浅い(1,2年前から)
仕事のストレスで食べても体重が減った
入浴後にのぼせる
気を使った後に体調悪化
生理に塊や濃血がまじる、出血が少し多い
排卵時に下腹と乳首が痛い
舌は戦アリ、舌裏怒脹きつい
頭部熱感なし
足首から先冷えている感じがきつい(芯から冷たい感じ)
右臨泣
…【心】
動悸パニックのような症状(1,2年前から)
心下つまりアリ
霊道こそげ
大杼から心兪筋張り、心兪が根、陥凹
…【脾】
子供の頃から便秘
仕事のストレスで食べても体重が減った(20代半ば、62キロから52キロへ)
ダイエットで体重減少(10代後半、68キロから62キロへ)
結婚後なんとなく体重が増えて52キロから57キロ
食べ過ぎ、飲み過ぎで体調悪化
食事はいつも美味しく空腹感がある、間食はよくある。
3,4日に1度の便通 お腹は張らない、出切らない感じが時々、よく付着する。
舌は淡白やや膩苔、
脾募あり固い(右<左)
季肋際右側の詰まり
中カン固い冷え
左大都割れ
足三里 熱感ややあり、陥凹
脾兪陥凹(右脾兪がトップ)
…【肺】
口の周り、あご、膝下などが多毛
汗をかきやすい(切診していて汗がにじんでいる)
右太淵やや腫れ
左合谷こそげ
大椎熱感あり、細絡多し、?理の粗ややあり。
…【腎】
白髪(子供の頃から、親も)
身体のだるさあり(1,2年前から)
子供の頃から便秘、しもやけ
妊娠するも胞状奇胎、流産
流産後、体外受精などしても妊娠しない
半年前の交通事故から腰やお尻に痛み
入浴後にのぼせる
気を使った後や睡眠不足、食べ過ぎ、飲み過ぎで体調悪化
尿の色が悪いことがよくある(黄色)
寝つきは普通眠りは浅い寝起きは普通、疲れが時々残る
生理は28日型で4日間だが時に不規則で遅れがち
生理前の7日頃から落ち込み、不安感があり、2,3日前から胸の張り(あったりな
かったり)、イライラ、不安や追い込みがある。生理がくると納まる。
病院でPCOSの傾向があると言われた
小腹急結左きつい。
右外関動きが悪い、
右後谿陥凹、
足首から先冷えている感じがきつい(芯から冷たい感じ)
復溜冷え、
三焦兪抜け(左三焦兪の抜けが2番)
…【オ血】
子供の頃手足にしもやけ
生理に塊や濃血がまじる、出血が少し多い
舌は淡白やや膩苔、戦アリ、舌裏怒脹きつい
小腹急結左きつい。
大椎熱感あり、細絡多し、?理の粗ややあり。
…【気虚】
脈は全体に輪郭が甘く細い
汗をかきやすい(切診していて汗がにじんでいる)

..病因病理

主訴は、子供の頃からある冷え、便秘、そして、流産後におこった不妊、不安や緊張ストレスによる動悸パニックのような症状である。

子供の頃から便秘がちで病院にいくほどであり、ストレスでは胃に不調がでるというように、弱めの脾気であり、肝気に影響されやすい状態であったと思われる。また手足末端の冷えが強くしもやけもおこりやすかったというエピソードにより、脾気の弱さと肝気の影響は全身にかなり強く影響し末端の気滞を生じやすかったのではないか。そしてまた脾気を温養しバックアップする腎気の弱さもあったのではないかと思われる。

10代後半からダイエットで体重を落としたり、ストレスで体重が減ったりと肝気が脾気に大きな負担をかけ続けていたが、結婚して少し精神的に落ち着き体重も下げ止まり少し増えた。タイミングで妊娠するものの胞状奇胎と言うことで流産。流産の手術時、途中で麻酔が切れるというトラブルがあり強い痛みに襲われた。そのトラウマからか精神的に不安定になり、緊張やストレスなどによって動悸やパニックのような症状が出現。

同時に高音の耳鳴り、眠りにくさ、眠りの浅さ、身体のだるさ、などが出現。流産によってもともとの弱さがあった腎により負担がかかり肝鬱も強くなった。このため気逆がおきやすくなり、心気をつき動悸やパニックの症状が起きやすくなったと思われる。

体表観察からも、手足の強い冷え感、復溜の冷え、三焦兪の抜けなどからは腎気の弱さがうかがわれる。舌の淡白膩苔やや戦アリ舌裏怒脹ありという状態から陽気不足と内湿、オ血の可能性がうかがわれる。これは脾募の状態、脾兪のきつい陥凹中カンの固い冷えからも脾気の弱さと符合する。また手足末端のきつい冷えに反してお風呂などでのぼせやすく大椎は熱感があり?理の疎、切診をしていると汗がでやすいということから、全身のくくりである肺気の弱さも感じられる。

腎気を中心とする気虚が背景にあり脾気の弱り肝鬱もある状況での、強い精神的なストレスが心をついた状況であったので漢方などでもなかなか大きく変化し改善を実感できなかったのではないかと思われる。

妊娠に向けて腎気を底上げすることで、脾気へのバックアップ、肝気の納まり、心気の上逆が納まることを期待したい。また肺気のくくりが弱いことが肝気の上逆や気虚を進めやすくしていると思われる。

..弁証論治
腎気を中心とした気虚 肝鬱心熱
益気補腎  疏肝理気 清心熱

治療方針
・まず第一に腎気を高めること。全身の気虚としての問題も大きいので、場合によっては脾気、肺気を補うことも行い、
全身の気虚が補われことを期待する。
・心熱、肝鬱については基本的に腎気がたつことで納まりがよくなることを期待。場合によっては疏肝理気や気を引き降ろし心熱を裁くことも行う。

..治療経過
初診2月
週に1度の治療間隔で鍼灸治療開始
毎日の自宅施灸(治療の度に、お灸の場所に印をつける)
舌の色の悪さ、歯形がついている(歯痕)、苔が少し多いことなどを見ていただき、ご自身の身体の状態をチェックする目安としていただく。

1)百会 復溜(灸頭鍼)右外関 中注 関元
2)肺兪(温灸)
3)脾兪、三焦兪、右胆兪。

3月
いつもひどい生理痛が軽く、だらだとした出血がすっきりと終わった。
6月
漢方薬局で当帰養血精と八味丸を購入。食事調査、指導
(漢方はそれまでに、沢山の種類を飲んでほとんど効かなかったのでイヤだということだったけど、再度挑戦していただく)
9月
採卵 5個とれた。1つ未成熟、4つの成熟卵はふりかけで受精しなかった。
10月
不妊治療クリニックを転院 不育の検査を受ける(12因子)
1月
舌がよくなってきた。薄白苔やや淡白 ?斑、歯痕は少なくなっている。膩苔が非常に綺麗な苔へと変化。
採卵 一個受精4分割移植
2月(初診から1年後)
妊娠 不安で眠れないーアドバイス→眠れた
胎嚢確認 眠れない
妊娠継続
30週ー逆子ー治った

食事の変化
昔の食事:缶コーヒー2~3本、スナック菓子は食べ得ないけれど夫が好きなケーキやバームクーヘンをよく食べていた。

指導前の食事:
朝)トマトジュース、トーストにジャム
昼)クリームパスタ サラダ カフェオレ
間食)野菜ジュース
夜)ごはん ポークステーキ サラダ もやしの味噌汁など。

指導内容:
主菜である肉、魚、卵などを掌5つ分を食べよう。副菜を増やそう。乳製品、果物をそれぞれ掌2つ分食べよう。

指導後:
朝)くるみぱん、サラダ(キュウリ、レタス、トマト、ささみ肉)、目玉焼き、椎茸の肉詰め、キウイ、牛乳
昼)いなり寿司一個 サラダ(レタスきゅうり、ラディッシュ)ひじきの卵焼き、豆腐ハンバーグ、アメリカンチェリー
夜)稲荷1個 切り干し大根 高野豆腐 サラダ(同じ)カレイみりん漬け、ささみ大葉チーズ焼きなど。