弁証論治:

0035:体外受精後自然妊娠した弁証論治

症例集→「一周期も無駄にしたくない」と続けた不妊治療をお休みして自然妊娠(34歳出産)【case:0035】

・問診

33歳 女性 医療職

主訴
不妊症 悪化傾向にある  他に冷え性、血流が悪いことをなおしたい

・・普段の状態について

クーラーでは骨から冷える感じ 、季節の変わり目は身体がすっきりしない。深 夜は調子が悪い

入浴後はよい。

肉体疲労時、気を使ったあと、睡眠不足、旅行のあとは調子が悪い

食べ過ぎると下痢

体重の変化はない

食欲は普通、規則的で空腹感はときどき、食事はおいしい。胸焼けお腹の張りは時々

お茶など1日1400cc以上

大便1日1回出きらない感じはない、付着時々

小便1日10回、残尿感、尿切れの悪さ、夜間尿などなし

睡眠寝付きはふつう、夢は見ない、寝起きはよい、疲れが残ることはよくある

初経12歳

生理7日前ぐらいから全体に身体が重い、ほてった感じ、胃が重い、吐き気、 身体がむくむなどがある(生理ですっきり)。

生理二日目で塊がでると痛みも治まる
20代ぐらいから親指大の塊がある。
周期は28-30日
流産のあと中の物がでるまで3ヶ月近くかかり生理のような出血が月に2回あった。
高温期になると足にむくみがでて辛います。

・時系列の問診

小さいころから身体が疲れやすく冷えやすい。
乳幼児のころミルクを飲まず母親が育たないかと思うほどだった。
夏休みなども夏の終わりや秋にかけては疲れで寝込でいた。

22歳 仕事を始めてから腰痛
 (今でも腰痛は続く、朝起きると痛い、動くと少し楽)

26歳 人工授精、高プロラクチン血症、黄体機能不全でカバサール、プラノバール
    セキソビッド フェマーラなどを使う
    (人工授精は合計15回)
    IVF-ET(体外受精ー胚移植)で妊娠。
    妊娠当初から強い安静にしたものの少しのことで出血、9wにて流産
   (採卵、胚移植9回、判定日に妊娠反応陽性がでるものの胎嚢確認までいかず)
    プロゲステロン座薬、バイアスピリンなど服用

29歳頃から基礎体温で排卵がわかりにくくなってきた

32歳 再度卵管造影を受ける 右はよいが 左は向きが悪く少し癒着していると言われる

33歳 5月ビッグママ治療室受診。すでに体外受精にて採卵周期に入っている。
    6月四物湯、温経湯を飲んだ。
    排卵がわかりやすくなってきた。

・切診など

・・脉診
全体にやや遅 関上左右とも固い

・・舌診
舌辺に紅点 舌裏怒脹あり 戦アリ

・・腹診
心下つまり少し 
裏肝の相火あり
季肋際右つまりあり
中脘固さあり
関元 抜け
左大巨抜けアリ

・・経穴診
右の太淵 腫れ
右の神門 腫れ、中に硬結
右の内関 陥凹
左の合谷 こそげ
左の外関 こそげ
左の水泉 陥凹
足三里 ゆるみ右>左
陽陵泉 左右 冷え
公孫 左右 陥凹
三陰交、湧泉、太谿、照海、復溜 すべて冷え
左太衝 こそげ 冷え

膝下周辺に静脈瘤っぽい血管
身柱から神道まで細絡
脊柱 広い
左脾兪 陥凹 右脾兪固さあり、右胃兪腫れ
右の膈兪から胃兪まで筋張り
左の三焦兪 腎兪 陥凹
左右大腸兪陥凹右>左
右の次髎つまり

・五臓の弁別

・・肝
29歳頃から基礎体温で排卵がわかりにくくなってきた
生理7日前ぐらいから全体に身体が重い、ほてった感じ、胃が重い、吐き気、
身体がむくむなどがある(生理ですっきり)。
生理二日目で塊がでると痛みも治まる
脉診 全体にやや遅 関上左右とも固い
舌辺に紅点 舌裏怒脹あり 戦アリ
季肋際右つまりあり
陽陵泉 左右 冷え
左太衝 こそげ 冷え
右の膈兪から胃兪まで筋張り
右の次髎つまり

・・心
心下つまり少し 
右の神門 腫れ、中に硬結
右の内関陥凹

・・脾
季節の変わり目は身体がすっきりしない。
脉診 全体にやや遅 関上左右とも固い
中脘固さあり
足三里 ゆるみ右>左
公孫 左右 陥凹
脊柱 広い
左脾兪 陥凹 右脾兪固さあり、右胃兪腫れ

・・肺
右の太淵 腫れ
左の合谷 こそげ
身柱から神道まで細絡

・・腎
小さいころから身体が疲れやすく冷えやすい
夏休みなども夏の終わりや秋にかけては疲れで寝込でいた。
仕事を始めてから腰痛
妊娠当初から強い安静にしたものの少しのことで出血、9wにて流産
初期流産を繰り返す
29歳頃から基礎体温で排卵がわかりにくくなってきた
クーラーでは骨から冷える感じ 、深夜は調子が悪い
お茶など1日1400cc以上
生理7日前ぐらいから全体に身体が重い、ほてった感じ、胃が重い、吐き気、
身体がむくむなどがある(生理ですっきり)。
流産のあと中の物がでるまで3ヶ月近くかかり生理のような出血が月に2回あった。
高温期になると足にむくみがでて辛い
裏肝の相火あり
関元 抜け
左大巨抜けアリ
左の外関 こそげ
左の水泉 陥凹
三陰交、湧泉、太谿、照海、復溜 すべて冷え
膝下周辺に静脈瘤っぽい血管
左の三焦兪 腎兪 陥凹
左右大腸兪陥凹右>左

・・気虚
小さいころから身体が疲れやすく冷えやすい
夏休みなども夏の終わりや秋にかけては疲れで寝込でいた。
肉体疲労時、気を使ったあと、睡眠不足、旅行のあとは調子が悪い

・・任衝脈の弱り
妊娠当初から強い安静にしたものの少しのことで出血、9wにて流産
初期流産を繰り返す

・病因病理

26歳から妊娠を希望され、人工授精、体外受精を繰り返し、妊娠の陽性反応はでるが、妊娠が継続できない。また、採卵などの状況から不妊の状態は悪化傾向にあるとご本人がお考えになっている状態です。

生理は12歳で訪れ、現時点で二便、睡眠、食欲などには大きな問題がない。

しかしながら、小さいころから身体が弱く、夏の終わりに寝込んでしまうような状態であった。

肉体疲労時、気を使ったあと、睡眠不足の時、旅行のあと調子が悪く、睡眠に問題がないのに疲れがよく残るなど、全身の気虚が著明である。

この全身のパワー不足である気虚の状態は何が中心であるのかと考えていくと、 冷えの状態がクーラーにあたると骨から冷える感じがすること、 仕事を始めてから継続的に腰痛があること、生理前の身体の重さ、ほてり、胃の重さ、吐き気、むくみなど生理前の当たり前の気の上衝を腎気が支え切れていないことなどから、腎気の不足、とくに腎の陽気の不足にあるのではないかと考えられる。

胚、胎児を支えるのは、子宮である。子宮は腎気によって支えられ、任衝脉によって養われる。その主導となる腎気が陽気を中心として不足しているので、子宮の養いが足りず、流産を繰り返すということになっていると考えられる。

・弁証論治

弁証:腎の陽気不足を中心とした気虚
論治:温補腎陽 益気

・治療指針

腎の陽気をたてることを第一とし、暖かさを子宮に導き、子宮の気血を温養して いく。

・生活提言

26歳のご結婚後から、不妊治療をはじめ、人工授精、体外受精と沢山の治療をがんばっていらっしゃいますね。

高度生殖医療を使い、妊娠しても継続できないと言うこと、本当に辛いですね。

不妊治療は、重ねれば重ねるほど、不妊治療自体が身体のストレスとなり、重荷になっている場合があります。いまの不妊治療の状況をご自身が『悪化している』と感じになるのならば、 年齢もまだ33歳ですので、半年程度一切の薬や刺激をやめて、身体を休めてみることを提案いたします。

『病院に行っていないと不安で・・・』

『1周期も無駄にしたくない』

そんなお気持ち、とてもよくわかります。

ここまでやっても妊娠出来ないのだから、『自然に妊娠出来るわけがない』というのも よくわかりますし、『時間を無駄にしてはいけない』というお気持ちも納得できます。

ただ、同じ状況で、同じことを繰り返しても、同じ悲しい結果しか出ません。

今一度、不妊治療そのものからは離れ、気持ちを楽にして身体作りをして、 新たな仕切り直しをしましょう。

時間を大切にする。

でも、急がば回れのときもある。

いまは、急がば回れの時だと思います。

気持ちを切り替えて、身体の手入れをしてみましょう。

週に1,2度の鍼灸治療、

毎日のご自宅でのお灸での手入れ

お散歩、

規則正しい生活。

不妊治療を目標にするのではなく、

当たり前の気持ちの良い身体を作ることを目標に

少し時間を使ってみましょう。

・治療経過メモ

初診時にてすでに採卵周期に入っており、3診目で採卵終了。5診目までの間に移植。妊娠せず。

その後13診にて自然妊娠、15週を過ぎて継続。

妊娠中も鍼灸にてフォローし、無事に3000㌘越えの元気な赤ちゃんを 自然分娩にて出産