弁証論治:

0088:二人目不妊、早産が心配弁証論治

症例集→二人目不妊、早産が心配(34歳出産)【case:0088】

・問診

33歳女性
168センチ
57kg(一人目出産前より2kg減少)

主訴

二人目不妊、首肩の凝り、生理不順

主訴について(首肩の凝り) 辛い時期は一定せず、数年前からおこった。

今回は3ヶ月ぐらい前からおこり、自分では姿勢が悪いのか、枕の高さが原因と思う。

首肩が痛く、身体がだるい。鍼やマッサージを受けてきたが効果があったりなかったり。

首の凝りは枕が変わると特にダメで実家でもダメ。

・・普段の状態について

 冬に調子が悪い、食欲は普通、規則的、15-30分くらいかけて食べる

 空腹感はよくある、腹脹、胸焼けはない 間食はよくとる。

 最近熱いので喉がよく渇く

 昔から便通は2-3日に1回、お腹が張って辛いことが時々、便が出きらない感じはよくある。コロコロ、量は少ない。

 小便は1日に6,7回、残尿感などは時々、夜間排尿は時々、

 寝付きはよい、夢は見ない、寝起きはよい、疲れが残ることが時々、

・・婦人科について

 生理は不規則40日から60日でばらばら、
 生理前にイライラする
 生理の血の量は普通、初日から二日目に多い、
 30歳で出産
 産後は疲れやすくなった、出産前に比べ生理が定期的になった(周期短くなった)
 母乳はまあまあ出た。
 一人目は半年ほど病院にてのタイミングで妊娠。
 生理は体調が悪いと飛ぶ、親知らずを抜いて生理が飛んだ、発熱して生理が飛んだ。
 去年は冬に止まったが、それ以前に冬によく止まるという印象はない。
 妊娠を希望して婦人科を受診して1年になるが妊娠できない

一人目のときは、32wから切迫早産で入院。体質だろうと言われた。
少し小さめだが元気な赤ちゃんを出産した。

・時系列の問診

初経12歳

16歳の時に1年止まった。そこから生理不順

20歳 体重57キロ 首や肩の凝りがはじまる。(いまも継続、仕事をしていたときがひどかった)

29歳 クロミッドを使ったタイミング療法にて妊娠 妊娠前体重59キロ
 妊娠中から夜間尿がでるようになった。その後冬の寒いときに出現
 32週から切迫早産で入院 少し小さめだが無事に出産

30歳 出産後 
 体重57キロ 疲れやすくなった、
 生理が若干周期的にくるようになった。

31歳 冬 生理が飛ぶ、首肩の凝りがひどかった

33歳 妊娠を希望して病院通いをはじめ1年以上たつが妊娠できない。

・切診など

・・舌診
歯痕あり
やや紅舌
戦アリ
舌裏怒脹なし

・・脉診
輪郭
あまい
左尺やや硬い
浮いている

・・腹診
腹全体やや冷え
裏肝の相火 あり(腰痛なしと)
中脘動悸 
中注 つっぱり
少腹急結なし

・・経穴診
内関やや陥凹 右<左
外関 やや亀裂 左冷え
左陽池冷え
右後谿陥凹
右神門硬結
左公孫やや陥凹
左三陰交冷え、ややこそげ

・・背候診
大椎周り冷え 
身柱、肺兪 発汗 やや陥凹右>左
左右とも胃兪を根にして肝兪まで筋張り
三焦兪陥凹 両方の三焦兪にかけて細絡(横に帯状に)
大腸兪 なんとなく弱い感じ
腰部硬い
右左次髎つまり

・五臓の弁別

・・肝
生理前にイライラする
仕事を始めて首肩こりがはじまる
舌やや戦アリ
少腹急結なし 舌裏怒脹なし
左右とも胃兪を根にして肝兪まで筋張り

・・心
舌やや紅舌
内関やや陥凹 右<左
右後谿陥凹
右神門硬結

・・脾
便通は2,3日に1回 便が出きらない感じはよくある、コロコロ
中脘動悸あり
左公孫やや陥凹
左三陰交冷え、ややこそげ
左右とも胃兪を根にして肝兪まで筋張り
腹部全体冷え

・・肺
大椎冷え
身柱、肺兪 発汗、やや陥凹右>左

・・腎
冬に調子が悪い
翌日に疲れが残ることが時々
生理周期は40-60日でバラバラ(現在)
産後に疲れやすくなった
産後に生理が出産前よりも周期が短くなった(40-60日になった)
親知らずを抜いて生理が飛んだ
体調が悪いと生理が飛ぶ
発熱して生理が飛んだ。
去年は冬に生理が止まった(それ以前は季節の関係はあまり明瞭ではない)
仕事を始めて首肩こりがはじまる
妊娠中から夜間尿がでるようになった 
出産後から冬の寒いときに夜間尿がある。
32週から切迫早産で入院

左尺やや硬い、浮いている
腹部全体冷え
裏の肝の相火あり 腰部硬い、腰痛なし
中注つっぱり
外関 やや亀裂 左冷え
左陽池冷え
三焦兪陥凹 両方の三焦兪にかけて細絡(横に帯状に)
大腸兪 なんとなく弱い感じ
腰部硬い
右左次髎つまり

・・気虚
舌に歯痕あり
脈輪郭あまい 
腹部全体冷え

・病因病理

12歳の時に月経がはじまったものの、16歳の時に1年止まり それ以降生理不順となっている。それなりに腎気が充実し天癸が致ったものの、その後の衝任脈腎気の支えが充分ではなかったために、発熱したり、歯を抜いたり、体調が悪かったりというという、腎気を中心に素体に負担がかかると、子宮への養いが不足し生理が飛ぶという状況であった。

仕事を始めてから首や肩の凝りがはじまる。仕事によって気が上焦に集まりやすくなっている中、疲労や腎気の不足があったため、生命力を使って自然に解決することが出来ず、常に続く気血の鬱滞を生じやすくなり首肩の凝りとなっていったと思われる。

生理が不順であったものの29歳の時に、少し排卵誘発剤の力を借りて無事に自然妊娠。しかしながら32週より切迫早産となり安静加療が必要であり夜間尿もはじまった。もともと腎気の不足があったため妊娠した子宮をしっかりと支えきれなかったのだと思われる。

出産後は母乳も出て、順調に回復し、以前よりも生理が周期的に(40-60日)くるようになった。出産によってある程度の気血の鬱滞が解消され、肝腎のリズムが出産前よりはスムーズにつくようになったと思われる。しかしながら腎気は陰陽ともに補われることがなかったので疲れやすくなり、冬に生理が飛んだりしている。

またいつの時期からかは判然としないが、体表観察により肺兪の発汗陥凹、身柱の発汗と明瞭な風邪の内陥も観察できる。このことから首肩の凝りがひどいという自覚症状につながっていったと思われる。またこの風邪の内陥が生命力に負担をかけ腎気の回復を遅くしていると思われる。陥凹した左右の三焦兪を帯でつなぐように細絡が出現、大腸兪がなんとなく弱く、腰痛はないとおっしゃるものの腰部は硬くなるなど体表観察からも腎を中心とする下焦の弱りは明瞭である。

・弁証論治

・・弁証
腎虚
風邪の内陥

・・論治
疎風散寒
温陽補腎

・治療指針

まず第一に風邪の内陥を取り去る。
腎気をたて、子宮をしっかりと養えるようにする。

妊娠したら、早産にそなえ、子宮を支える腎気をたてながら、 子宮を養う衝任脉も整え、下焦に充分な生命力が行き届くようにする。

・治療経過

初診より週に1度の鍼灸治療、
4ヶ月後、自然妊娠
上の子供(2才)いるので、なかなか安静にできないが、妊娠後も鍼灸治療を継続。
油断は出来ないねと話しながらも、頚管長も短くならずに経過。

28wにて帰省

無事に出産なさったとのご報告をいただきました。

おめでとうございます。