弁証論治:

0051:二人目不妊の弁証論治

症例集→冷え性での二人目不妊(32歳出産)【case:0051】

・問診

32歳女性 身長156,体重46キロ

・・今一番つらい症状・治したい症状はなんですか

主訴 冷え症 妊娠希望 生理周期が長い

冷え症に関して
 昔から、手足が冷たい。昼間がつらく、常時辛い、クーラー冬に悪化
 子供のころと、妊娠中の冬から足の指にしもやけが出来る

生理周期が長いのは30歳頃から。

今回の症状がおこるまえに、肉体的な無理、精神的な無理、風邪、環境の変化はない

・・ふだんの状態について

春、秋、入浴中はよい

クーラー、冬、睡眠不足の時はダメ

食欲は普通、規則的、空腹感は時々、15分、
 よく美味しく感じる、腹が張ることはめったにない。 

間食は毎日29歳頃から家にいるのでクッキーおせんべいを食べる。

飲酒喫煙なし

飲み物1200cc以上、ルイボスティー水、白湯、

口喉がかわくことは滅多にない、苦さ違和感もない。

大便は昔から3日に1度。はって辛いことはときどき。薬は飲まない。出きらない感じは 時々
 バナナ、こぶし大、付着は時々、

小便は一日5,6回、残尿感、夜間排尿などない

睡眠は、寝付きは普通、眠りは深い、寝起きは普通。

産後に疲れが残ることが時々、朝に腰痛、身体がだるい。
 自分ではだっこのせいかと思う

.婦人科について

初経は13歳
出産前は28日周期、1年授乳、断乳後1ヶ月で生理再開。
産後生理周期長くなった遅れ気味(30日45日、32日、42日など)

生理の2,3日前から腰の痛み、眠気がある。生理がくると納まる。
生理痛がある(産後軽くなる、20代は薬必要)初日、2日目
産前と変わらず小さい塊がある。量は普通2日目が多い、出血量が減った
半年ぐらいの基礎体温表 低温期が長く、高温期は10日ぐらいと短め

・時系列の問診

子供のころしもやけ

20歳45キロ

28歳結婚 やせた42キロ 妊娠(妊娠時ピーク52キロ)産後52キロ
 妊娠中の冬から足の指にしもやけが出来る
 仕事をやめ家にいて、お菓子クッキーを食べる
 子供が1歳の時に断乳(5月)、一ヶ月後に生理再開
 出産前は生理周期が28日だったが、産後は長くなった

30歳 二人目を希望する 

31歳 半年ほどで自然に52キロから46キロになる。

・切診など

・・脉診
右 沈少し固い 浮位細い
左 関上柔らかい滑

・・舌診
淡白から淡紅
薄白苔

・・腹診
左脾募アリ季肋際左盛り上がり
肝の相火 右>左 腸骨に近い下の方
気海抜け 
関元奥が空虚

・・経穴診
左太淵発汗
左外関ゆるみ 
左霊道陥凹
三陰交右ゆるみ、左陥凹
足三里 右少しゆるみ、左ゆるみ陥凹
陰陵泉右ゆるみ 
照海右ゆるみ

・・背候診など
足、背中全体発汗

左肺兪発汗?
左心兪から脾兪まで 右は心兪から膵兪まで筋張りの中に抜けっぽい感じの筋肉
右脾兪、右胃兪 陥凹
右三焦兪ゆるみ
右大腸兪陥凹
仙骨部冷え

・五臓の弁別

・・肝
子供のころから手足が冷たい、しもやけ
産後生理痛が軽くなる、塊は変わらず
産後生理の量が減る

 左 関上柔らかい滑
肝の相火右>左 腸骨に近い下の方
左心兪から脾兪まで 筋張りの中に抜けっぽい感じの筋肉

・・心
左霊道陥凹
左心兪から脾兪まで 右は心兪から膵兪まで筋張りの中に抜けっぽい感じの筋肉

・・脾
体重の変動(20歳45キロ、結婚前42キロ、産後52キロ、32歳半年で6キロ減)
産後間食が増える
便通昔から3日に1回
基礎体温の低温期が長め(産前は不明)

 左 関上柔らかい滑
左脾募アリ季肋際左盛り上がり
三陰交右ゆるみ、左陥凹
足三里 右少しゆるみ、左ゆるみ陥凹
陰陵泉右ゆるみ 
左心兪から脾兪兪まで 筋張りの中に抜けっぽい感じの筋肉
右脾兪、右胃兪 陥凹

・・肺
脉右  浮位細い
左太淵発汗
足、背中全体発汗
左肺兪発汗?

・・腎
子供のころから手足が冷たい、しもやけ
妊娠中の冬から足の指にしもやけ
クーラー冬に体調悪化
産後生理周期が長い
睡眠不足で体調悪化
生理の2,3日前から腰の痛み眠気
産後生理の量が減る
基礎体温の高温期が10日ぐらいと短め

脉右 沈少し固い 
気海抜け 
関元奥が空虚
左外関ゆるみ 
照海右ゆるみ
右三焦兪ゆるみ
右大腸兪陥凹
仙骨部冷え

・病因病理

32歳の女性。

28歳の時に結婚、すぐに妊娠出産。

1年後に断乳し、その後妊娠を希望するも1年半の間、次の妊娠に 致らないと言うことである。

子供のころはしもやけが出来るほど手足の冷えが気になっていた。大人になり しもやけは出来なくなったが、冷えは常に辛く、クーラーや冬に悪化。腎の陽気不足を 思わせるものの、28歳と年齢が若かったのですぐに妊娠することができたのであろう。

もともと、生理前の肝気が盛んになる時期に腰が痛み眠気がでるなど、身体の自然な陽 気の高ぶりを支える腎気が弱いために肝鬱になりがちであり、そのため生理に塊がまじ ったり生理痛が薬を飲むほどであった。また脾気の弱さが多少あるため便通が3日に1回 ほどでお腹が張るなど少し肝気を張る必要があった。脾腎の弱さを肝気を張ることでカ バーしてきた素体がある。

妊娠中の冬、ふたたびしもやけが出来るようになる。妊娠中という身体の中心に 陽気の塊をいだいていながら、胎を支えることがご本人への負担となり腎気を一段と 落としたため腎の陽気不足をまねいた。もともと素体の弱さを肝気を張ることでカバー してきたので、腎の陽気を落としたことでより肝鬱は強くなったり末端の冷えがきつく なったためしもやけが生じてしまったものと考えられる。

気海の抜け、関元の奥の空虚さ。仙骨部の冷え、三焦兪のゆるみなど、腎気の弱さは明 瞭で存る。また、出産後、それまで28日周期であった生理がおくれがちになってきたの も、腎気の不足によるものと思われる。朝の腰痛、身体のだるさも腎の陽気不足からお こっていると思われる。

二人目の妊娠がなかなか成立しないのも、産後一段と腎気を落とし、腎の陽気不足によ るものと思われる。

体重の増減が多く、結婚や妊娠などで増減しやすい。しかしながらまだ脾気は割合とす こやかであり、二人目を希望し少し生活が改まると自然と体重は減っている。しかしな がら初診時の体表観察により、脾募も明瞭にあり、三陰交足三里の緩み、脾兪胃兪の陥 凹もある。もともとの便秘がちなところもあり、脾気への負担も明瞭ではある。

・弁証論治

弁証:腎の陽虚を中心とする、腎虚肝鬱
論治:温腎補陽 疏肝理気

・治療指針

第一に腎の陽気をたかめ、身体を温養する。

生理周期に伴い、必要に応じて理気し全身の気血の巡りを改善し 妊娠へと導く。

・治療経過

初診より4診
一ヶ月にて妊娠