弁証論治:

0115:流産・不育43歳出産弁証論治

症例集→繰り返す流産、不育症検査はグレーゾーン(43歳出産)【case:0115】

・問診
流産後の体調回復、妊娠、出産したい。

155㎝ 52キロ 販売員 40歳女性

3週間ほど前に死産した、次の妊娠にむけて体調を回復させてたい

ほかに、足首手首から先がいつも冷たい、貧血(妊娠中の血液検査で)

以前から乾燥で身体がかゆい(特に背中、右の乳房)口渇がある。
(仕事中は水を飲まないようにしている)

流産後から身体がだるい、目が疲れやすい、夢をよくみる、朝起きがたい

・・ふだんの状態について

クーラー、梅雨時、季節の変わり目、肉体疲労時、季節の変わり目、旅行のあとは調子が悪い。

入浴中、入浴後は調子がよい。

風邪の時は鼻水やいつもより下痢しやすくなり、後頭部、左の頭の頭痛がする。

食欲は普通、やや不規則な食事(シフトによる)、空腹感はあり、おいしく食べられる。

食後に胸焼けお腹の張りが時々ある。間食は昔から毎日。

飲み物は1日600ccぐらい

ここ3年前に腎盂炎。
 (4年前から仕事中は水を飲まないようにトイレも我慢していたので、腎盂炎のまえから膀胱炎を何度かおこしていた。
腎盂炎のあと水を飲むようにといわれ、かえって口渇が気になる。腎盂炎のあとから、残尿感があり、腰の痛みがある)

大便は1日1回、時時出きらない感じがある。時々便器に付着する
小便は1日5~7回、妊娠してから朝の5時ぐらいに排尿で起きる

寝つきはよい、寝起きは30代後半から仕事をを始めて悪い、疲れもいつも残る
スポーツの試合で緊張すると首がつるような感じになる
   (冷えたり痛んだりする部位と同じ)
首の冷え痛みから肩こりが広がってくる感じで左の偏頭痛がすることがある
  (風邪でもおこる、湿布を貼ればOK)

・・婦人科の状態について

初経12歳 30-32日型で7日間、遅れることがある

生理の7日前にイライラ、2,3日前に頭痛があり、生理がくると納まる。生理の初期に
鈍痛。小さい塊、濃血がまじる。

38歳5週流産
39歳10週 流産
40歳16週死産

・時系列の問診

20歳 倒立前転で首をひねる(左の首のつけねあたり)
  ー以来首は冷えると痛むことがある

20代 手足首から先がつめたい(現在も継続)

20代後半 月に1,2度の偏頭痛(現在も継続)
  特に緊張や冷えで首がいたくなり偏頭痛が発生。首の痛みと連動する

35歳 今の仕事を始める 仕事中はあまり水分を取らないようになった
   膀胱炎を繰り返していた

36歳 腎盂炎になる。水分を取るように言われたけど仕事中は採れないので、かえって気になり、口渇を意識するようになった。このあと残尿感や腰痛が気になる

38歳 妊娠を希望し始める。5週流産

39歳10週 流産

40歳16週死産

・体表観察

・・脉診
右尺弦、
右関上大きな感じ 
左関上しまって固い、
左寸口緊固い

・・舌診
淡紅から淡白 
やや赤みのある色褪、
舌裏怒脹あり

・・腹診
腹鳴あり(食後ではない、いつもはならない)、
心下つまりあり
肝の相火なし、
中注堅さアリ

・・経穴診
右神門硬結
左合谷 こそげ冷え
外関 冷え陥凹
左陽池 冷えきつい
大都 ゆるみ
足三里 やや陥凹

左公孫 陥凹
右臨泣つまり
左湧泉冷え
照海 極冷え
復溜 冷えきつい

・・背候診
大椎から陶道にかけて細絡少しアリ
風門 陥凹
左肺兪兪陥凹
左胃兪陥凹(トップ)
三焦兪 陥凹
左腎兪陥凹
次髎から下が冷たい

・五臓の弁別

・・肝
手足先がいつも冷たい
入浴中、入浴後は体調がよい
スポーツの試合で緊張すると首がつるような感じになる
   (冷えたり痛んだりする部位と同じ)
生理の7日前にイライラ、2,3日前に頭痛があり、生理がくると納まる。
生理に小さい塊がまじる
左関上しまって固い

右臨泣つまり

・・心
右神門硬結
心下つまりあり
左寸口緊固い

・・脾
以前から乾燥で身体がかゆい(特に背中、右の乳房)
妊娠中の検査で貧血
梅雨時、季節の変わり目に体調が悪い
食後に胸焼けお腹の張りが時々ある。間食は昔から毎日。
大便は1日1回、時時出きらない感じがある。時々便器に付着する
風邪の時には下痢気味になる、左の偏頭痛がする

右関上大きな感じ
大都 ゆるみ
足三里 やや陥凹
左公孫 陥凹
左胃兪陥凹(トップ)

・・肺
首の冷え痛みから肩こりが広がってくる感じで左の偏頭痛がすることがある
  (風邪でもおこる、湿布を貼ればOK)
以前から乾燥で身体がかゆい(特に背中、右の乳房)

左合谷 こそげ冷え
大椎から陶道にかけて細絡少しアリ
風門 陥凹
左肺兪陥凹

・・腎
手足先がいつも冷たい
40歳流産後から身体がだるい、目が疲れやすい 夢をよくみる、朝起きがたい
35歳 仕事のため水分の摂取をひかえ、トイレも我慢してなんどか膀胱炎をおこす
36歳腎盂炎、その後残尿感があり、腰の痛みがある。
小便は1日5~7回、妊娠してから朝の5時ぐらいに排尿で起きる
寝つきはよい、寝起きは30代後半から仕事を始めて悪い、疲れもいつも残る
生理の7日前にイライラ、2,3日前に頭痛があり、生理がくると納まる。
生理は30-32日型で7日間、遅れることがある
38歳5週流産
39歳10週 流産
40歳16週死産

脈 右尺弦、
外関 冷え陥凹
左陽池 冷えきつい
左湧泉冷え
照海 極冷え
復溜 冷えきつい
三焦兪 陥凹
左腎兪陥凹
次髎から下が冷たい
中注堅さアリ

・・瘀血
舌裏怒脹あり
生理小さい塊、濃血がまじる。
大椎から陶道にかけて細絡少しアリ

・・経絡経筋病
20歳 倒立前転で首をひねるー以来首は冷えると痛むことがある
首の冷え痛みから肩こりが広がってくる感じで左の偏頭痛がすることがある
  (風邪でもおこる、湿布を貼ればOK)
スポーツの試合で緊張すると首がつるような感じになる
   (冷えたり痛んだりする部位と同じ)

・病因病理

20才の時に倒立前転で首をひねり、その場の損傷がおこり、冷えると痛む陽虚を中心とする気虚気味の場となり経絡経筋病をおこしていた。

20代半ばから、手足先が冷たく感じるようになり、首の冷えから肩こりへと広がり同惻の偏頭痛をおこすようになっている。首をひねったことでおこった経絡経筋病であったが、ひねった首を中心とする左の首、肩、頭部に気虚があるため冷えが入りやすく、それを払うために肝の陽気があつまり正邪の闘争がおこり痛みとなった。また、上焦に陽虚の場があるため全身の肝鬱も強くなっており、腎気への負担にもなっていったと思われる。

30代半ばから、今の立ち仕事が中心の接客の仕事を始める。仕事が体力的にハードで腎気の消耗があるうえに、気も遣い肝気を張って仕事をしていた。そのうえ仕事柄トイレに頻繁にいけず、水分を控えトイレも我慢していた。このため腎気により強く負担がかかり、膀胱炎を繰り返し、腎盂炎になってしまっている。このころから寝起きが悪くいつも疲れが残るというように、この時期に腎気を一段と落としたことが明瞭である。

その後、腎気が回復しないまま仕事を継続し、38,39,40歳と妊娠するものの、流産、死産を繰り返している。腎気への負担としては

 1)腎盂炎を起こす前後の腎気の負担と一段と腎気を落としたこと

 2)20代から生じている首の経絡経筋病がながらく回復せず、時期は明瞭ではないが、風邪の内陥を許し(肺兪の陥凹、風門の陥凹、左合谷のこそげ冷え)、上焦での正邪の闘争がより強くなり、肝気腎気への負担となっていること。

 3)梅雨時や季節の変わり目に体調が悪く、お腹の張りが時々あり便も時々付着するというように、腎気のバックアップがすくなくなったため、脾気への負担となり内湿の存在もうかがわれる。この内湿の存在により、肝鬱はより強くなり、 腎気への負担となってしまっている。

上記3点が考えられ、風邪の内陥がより経絡経筋病をきつくし腎虚肝鬱をより強くしていること、内湿の存在、また腎気そのものが消耗していることが、腎虚を悪化させ、子宮を下支えする腎気を中心とする一源三岐の力不足となっていると思われる。

現時点は死産から3週間後であり、身体のだるさがあり、目が疲れやすく腎気の落ちがより明瞭である。

・弁証論治

弁証 風邪の内陥 経絡経筋病 腎虚

論治 疎風散寒 疏通経絡 温養補腎

・治療指針

風邪の内陥を取り去り、経絡経筋病を補い全身への負担をとる。

腎気をまし、妊娠を支える子宮の力をアップさせる。

・生活提言

省略

・治療経過

20歳 倒立前転で首をひねり、経絡経筋病の始まり

20代後半 経絡経筋病に陽虚がくわわり全身の肝鬱が強くなる

35歳 仕事がかわり腎気の負担が増え膀胱炎を繰り返す

36歳 腎気を一段と落とし器が小さくなる
   腎盂炎、残尿感、腰痛

38歳 妊娠を希望し始める。5週流産

39歳10週 流産、手術

40歳16週死産
  3週間後ビッグママ治療室受診
 週に1度の鍼灸治療、自宅での施灸開始
 不育検査ーグレーゾーン(決定的な要因はない)

41才(1年4ヶ月後)
   自然妊娠、流産、自然に排出

41才(1年10ヶ月後)
   自然妊娠 流産、自然に排出

42才(2年3ヶ月後)妊娠
  自然妊娠 無事に経過なさり、

43才で3000㌘オーバーのベビちゃんをご出産にいたりました。

 本当に、よかったですねえ。おめでとうございますm(__)m

・患者さんからのメール

おはようございます。○○です。

無事に元気な赤ちゃんを産むことができました。

帝王切開になり、赤ちゃんが産まれた後、私の状態が悪く、大変でした。

出産までは順調だったのですが、その後の子宮の戻りが悪く、出血が止まらなくなり、 教授をよんで、スタッフを増やして、対応していただいた結果、やっと止まって、病室に戻れました。

いろいろ努力していただき、なんとか、なんとか、出血も止まりました。 先生に大学病院を進めていただいたときは、そうなのかなあと思いましたが、 選んでおいて良かったです、ありがとうございました。

その後は、看護師さん達もビックリするほど、驚異的な回復で、予定通り出産後5日間で退院しました。

育児はホントに楽しくて、いろいろありましたが、産めてよかったです!

産む前は、もし危険な状態になって、母子どちらか選ぶ時は、子供を選んで!って、 主人には言ってあったのですが、いざ子供を無事に産んだら、

絶対死ぬもんか!って思いました(^_^)v

今、我が子と対面できたのは、米山先生のおかげだと思っています!
本当に3年間、ありがとうございました(^_^)
副院長やスタッフのみなさんにも、よろしくお伝えください!