弁証論治:

0037:小さい器の不妊、妊娠、出産弁証論治

症例集→小さい器の生理不順。生命力を上げて自然妊娠(32歳出産)【case:0037】

・問診

31歳女性 会社員 158センチ47キロ

・・主訴
冷えは職場(昼)や通勤時に気になる
時期は一定せず、クーラー、秋、冬は常に辛い
悪化傾向にあるかどうかはわからない。
20歳頃から自分が他人より寒がりだと感じるようになった。
初潮以来、ずっと生理不順(体重の変化とリンクしない)
冬期はほとんど生理がない
他に眼痛(疲れ目)を直したい。

主訴の生理不順は初潮から、冷え性や疲れがよりきつくなったのは27歳から
自分では、体力の低下、運動不足、栄養不足、マイナス思考、心配性が原因と思う。

今回の症状と同時に、食欲不振、体重の減少、身体のだるさ、眼の疲れが出てきた

・・普段の状態について

 春夏は生理がくるが、秋冬は生理もこず、うつっぽく、疲れやすい。体重が減ることはない。

よい変化をするのは、冬から春から夏にかけて
悪い変化になるのは夏から秋から冬にかけて
入浴中、入浴後、暖房で調子がよい。食前が調子がよい。

食欲は少食で22才頃から落ちている。
食事は不規則、7時12時22時。空腹感はよくある、噛まないことが多い、美味しい。
食後に腹が張ることはめったいにない(少食なので食べ過ぎることがない)
豆腐、白米、味噌、梅干し、鶏のもも肉、アジの干物、卵をよく食べる
間食は毎日、あめ、せんべい、チョコレート
飲み物は900cc以上 麦茶、低脂肪乳、ミネラルウォーター、野菜ジュース
口がよくかわく。口舌が粘ることが時々ある。

大便は1日1回、付着することは時々あるが再度流せば取れる程度

小便は1日8回、残尿感、尿切れの悪さなどめったいにない、飲みすぎたときだけ夜間排尿
睡眠は12時起床は6時30分、昔から寝付き眠りは普通、寝起きが悪い。
翌日に疲れが残ることがよくある。

・・生理について

24歳で排卵障害下腹部痛があり、多嚢胞卵胞症候群と診断されず。
27歳、生理の出血が一ヶ月続いたが経過観察にて自然におさまった。

初潮は14歳、周期は60日から数ヶ月空くこともある。
生理は5,6日ある。
体調不良は時々、生理前に下腹部が鈍痛。
生理の時に、刺痛、その後疲れ、眼の痛み。
生理の血の状態は濃く、出血したときの色、小指大の塊、粘った膜(膿血、血液、サラサラもあり)
生理の1,2日目が出血が多い

・時系列の問診

初潮以来 生理不順

20歳 体重56キロ(仕事をしだして、だんだん減って27歳のころには52キロ)

24歳 多膿疱性卵巣症候群との診断を受ける

27歳 精神的肉体的なストレスで1年で体重7キロダウンの45キロ、疲れが残るようになった)
    生理不順の状態は変わらず

31歳 体重が47キロ少し増えた
    生理不順の状態はさほど変わらないが、年間でくる生理の回数がだんだん減っている

・切診など

・・脉診
左尺弦、右関上やや固い 右寸口やや弦

・・舌診
舌裏怒脹アリ、薄白苔やや膩苔気味 歯痕あり、戦アリ、胖嫩

・・腹診
心下詰まりあり、脾募薄いがあり、季肋部めくれアリ脾募の上に細絡アリ
中脘固い、左大腹腫れ、左大巨抜け、右やや抜け、少腹急結左アリ

・・全身の皮膚の状態
 全身の皮膚がゆるく締まりが無く甘い感じ
 上背部細絡多い

・・経穴診
左太淵 腫れ
左右列缺ややこそげ
左右外列缺 動きが悪い
左合谷動きが悪い

左右神門小さい硬結
左右霊道こそげ
左後谿陥凹

左外関動きが悪い
左陽池冷え
左然谷 冷え
左申脈冷え
左右復溜冷え陥凹

左臨泣ややつまり

左>右公孫こそげ

・・背候診
左右肺兪陥凹

右心兪陥凹、やや発汗

右膵兪から右三焦兪(2番)まで大きく筋張り(その中で肝兪二行)

左右肝兪二行
左胆兪二行
左右三焦兪陥凹
左腎兪陥凹(トップ)
左大腸兪ゆるみ

・五臓の弁別

・・肝
入浴中、入浴後、暖房で調子がよい
初潮は14歳、周期は60日から数ヶ月空くこともある。
生理の血の状態は濃く、出血したときの色、小指大の塊、粘った膜(膿血、血液、
サラサラもあり)
生理の時に、刺痛、その後疲れ、眼の痛み。

左臨泣ややつまり
左右肝兪二行
左胆兪二行
舌診 舌裏怒脹アリ戦アリ
腹診 季肋部めくれアリ脾募の上に細絡アリ、少腹急結左アリ

・・心
左右神門小さい硬結
左右霊道こそげ
左後谿陥凹
右心兪陥凹、やや発汗
腹診 心下詰まりあり

・・脾
食欲は少食で22才頃から落ちている。
間食は毎日、あめ、せんべい、チョコレート
左>右公孫こそげ
今回の症状と同時に、食欲不振、体重の減少、
口がよくかわく。口舌が粘ることが時々ある。
大便は1日1回、付着することは時々あるが再度流せば取れる程度

右関上やや固い 
膩苔気味
腹診 脾募薄いがあり、季肋部めくれアリ脾募の上に細絡アリ。
中脘固い左大腹腫れ、

・・肺
右寸口やや弦
全身の皮膚がゆるく締まりが無く甘い感じ
上背部細絡多い

左太淵 腫れ
左右列缺ややこそげ
左右外列缺 動きが悪い
左合谷動きが悪い
左右肺兪陥凹
左大腸兪ゆるみ

・・腎
冷えが昼間も通勤時も気になる
冬は常に辛い
20歳頃から自分が他人より寒がりだと感じるようになった。
初潮以来、ずっと生理不順(体重の変化とリンクしない)
冬気はほとんど生理がない
眼痛(疲れ目)
27歳 精神的肉体的なストレスで1年で体重7キロダウンの45キロ、疲れが残るようになった)
31歳 年間でくる生理の回数がだんだん減っている
入浴中、入浴後、暖房で調子がよい
翌日に疲れが残ることがよくある。
初潮は14歳初めから生理不順、周期は60日から数ヶ月空くこともある。
今回の症状と同時に、身体のだるさ、眼の疲れが出てきた
春夏は生理がくるが、秋冬は生理もこず、うつっぽく、疲れやすい。体重が減ることはない。
生理の時に、刺痛、その後疲れ、眼の痛み。

左尺弦
左外関動きが悪い
左陽池冷え
左然谷 冷え
左申脈冷え
左右復溜冷え陥凹
右膵兪から右三焦兪(2番)まで大きく筋張り(その中で肝兪二行)
左右三焦兪陥凹
左腎兪陥凹(トップ)
腹診 左大腹腫れ、左大巨抜け、右やや抜け、

・・陽虚
冷えが昼間も通勤時も気になる
冬は常に辛い
時期は一定せず、クーラー、秋、冬は常に辛い

20歳頃から自分が他人より寒がりだと感じるようになった。
冬気はほとんど生理がない

・・気虚
春夏は生理がくるが、秋冬は生理もこず、うつっぽく、疲れやすい。体重が減ることはない。
薄白苔やや膩苔気味 歯痕あり
全身の皮膚がゆるく締まりが無く甘い感じ 上背部細絡多い

・病因病理

20歳のころより、他の人よりも寒がりだと自覚し、また生理も冬になるとこないことが 多く、体調も1年のうちで夏から秋から冬にかけてと寒くなることと全身の体調が連動している。

もともとの陽気不足は、冬の時期になるとより明瞭になり、生理をおこすこともできなくなる、また鬱っぽく疲れやすくなるなど腎の陽気不足は明瞭であったのだろう。

また、20歳のころには56キロあった体重も、仕事をはじめたころより、なんとなく 落ちてしまい27歳には52キロになっている。これは普通の仕事でさえも、器を小さくしてしまう悪循環となるほど、ご本人にとっては負担であったと言うことであろう。

少しづつ器を落としていくなかで、27歳の精神的肉体的なストレスの大きな時期は、 一気に体重が7キロも減ってしまった(45キロ)。生理が完全に止まることはなかったが、腎気を大きく落とし疲れやすくなってしまった。

31歳までのあいだに、少しづつ身体が回復し47キロになっているものの、 冬に生理がこず、1年間の間に生理がくる回数も減っているのは、腎の陽気を中心とする腎気不足が進んでいるということであろう。

全体の皮膚がゆるく、肺兪も大きく陥凹していることよりくくりとしての肺気の弱さ。 そして左右三焦兪の大きな抜けは腎の陽気の不足を物語っている。

肝兪と左の胆兪が二行となり、霊道もこそげているように、寒くなると鬱っぽくなるというように、腎の陽気の弱さは肝気を支えきれず心陽も充分に登り切れなくなりかけている。上焦の細絡は そのなかでなんとか上焦に気血を集めて日々をやりすごしている状況を物語っているのだろう。

ご本人が、食べ過ぎないようにしているおかげで、脾気がそれなりに保っているため、便通も大きな問題がなく、足三里、脾兪、胃兪にも大きな問題が出ていない。逆に言えば、肺気、腎気の弱さを、なんとか脾気が支えている状況であろう。ただし、その脾気も腎気のバックアップの不足より体重の低下、舌の膩苔気味の状態や、脾募の状態など、陽気不足により湿痰が生じ脾気そのものへの負担ともなり始めていると考えられる。

弁証論治

弁証: 腎の陽虚を中心とする全身の気虚
論治: 温養補腎

・治療指針

なんとか、支えとなっている脾胃の状態を大事にしながら、 腎の陽気をたて全身の気虚を救う

・生活提言

冬になると生理がこない、寒いと体調が悪いとご自身でも自覚のあるように 寒さに弱いお身体ですね。

寒さに弱いと言うことは、自分自身で暖め力が弱いということです。

これは東洋医学の言葉でいうと、腎の陽虚ということになります。

身体の支えとなる大地が冷えてしまっているために、身体全体の養いも 行き届いていかないということです。

今の状態で鍵となるのは、胃腸の状態です。大地が冷えていますが、 なんとか、食物から力をもらうことは出来ているために、大きく崩れずに 踏みとどまっているということです。ただ、かなりこの状態もギリギリで 踏みとどまっているという感じですね。間食をやめ胃腸の負担をとり、 工夫しながらしっかりとタンパク質を食べ身体作りを心がけて下さい。 (タンパク質の摂取は少量頻回にすると胃腸の負担が減ります)

鍼灸治療では、腎の陽気を補い、身体を温めること、そして子宮を中心に温養していくようにして、赤ちゃんが授かることの出来る身体作りをしていきます。ご自宅でもお灸をして 身体の手入れをして下さいね。

一緒に頑張って行きましょう。

・治療経過

初診から2ヶ月にて自然妊娠

無事に3000グラムオーバーの男の子を出産。

『こんにちは、4月○日3000グラムオーバーの元気な男の子が何とか産まれました!

ここまで至ることができたのは、ママでの治療そして米山先生の生活指導のお陰と真に思っています。今まで本当にお世話になり、有難うございました。

出産にはかなりの時間がかかりました。最後の段階で促進剤の力を借りての出産となりました。私はまだまだ力をつけないとならないことを改めて実感しました。産後の体力回復のために、落ち着いたらまたお世話になりたいと思っております。

米山先生やスタッフの皆様にまたお会いできるのを楽しみにしております。』

無事のご出産、私もとても嬉しいです。
よかったですねえ(*^^*)
これから家族3人での楽しい生活が始まりそうですね。
ご自身の健康を大事にし、子育てしながら、ご自身の器も養われていくような 日々であるようにと願っています。