弁証論治:

0123:薬の反応が悪くホルモン値があがりにくい弁証論治

症例集→採卵数が少なく体外受精でも妊娠しない(34歳出産)【case:0123】

・問診

・・主訴

不妊症ホルモン値があがらない(薬の反応が悪い)

31歳主婦158センチ45キロ

1年前の血液検査ではホルモン値など異常はなかったが、先月のIVFでは、
スプレキュアやHMGを注射するもホルモン値の上がりが少なかった。

・・普段の状態について

冬、クーラー、季節の変わり目、夕方がダメ、
西日に弱く(夕方がだめ)日が沈むと元気が戻る。
入浴中は体調がよい、気を遣ったあとはダメ。
風に当たると消耗する(自然の風、エアコン、扇風機、暖房すべて)

小食、25,6歳より食欲ダウン、空腹感はある、食事はおいしい、
胸焼けや腹が張ることは時々
間食はよくある飲み物は1000cc以上、

口の渇きはよくある、違和感はめったにない、

月に1-2回便通が悪いときに整腸剤を飲む
便は1日1~2回、バナナ、こぶし大、便器につくことはめったにない、

小便は1日8-10回、夜間尿、尿切れの悪さ、色の悪さはめったにない。

寝つきはよい、眠りは深い、寝起きは普通~よい。
疲れがのこることは時々

・・婦人科について

生理前から生理1日目に体調が悪化、2,3日によくなる。
子宮内膜症の手術をしてから生理痛がよくなった
生理前から生理初期にかけて、鈍痛、イライラ、疲れ、腰の痛みがある。
小さい塊粘った膜がでる。手術後良好になった。

・・時系列の問診

20代のはじめ

  疲れやすくストレスを受けやすい
  胸部が詰まる感じがすることがしばしばあり、

  レントゲン、血液検査など受けるものの異常はなし

25歳 激しい下腹部痛ー異常なし
  (後に、チョコレート嚢胞の破裂だったのではと言われる)

30歳5月 子宮内膜症チョコレート嚢胞の手術
  手術後生理痛が軽減

30歳1月 3週間ぐらい、めまい、吐き気、動悸
  いろいろな検査の結果異常はない。

・・不妊治療について

ホルモン値、卵管造影、内視鏡検査にて、右卵管の癒着、軽度の子宮内膜症、
チョコレート嚢胞を指摘される。ラバロのときに、腹水にて精子到着を確認
子宮内膜症の手術後タイミングを7回取るも妊娠せず、体外受精に進んだが
高刺激の割に反応が悪く、1個移植2個凍結胚が出来ただけだった。
刺激周期に移植後、妊娠せず。凍結胚を移植する周期に現在入っている。

・切診など

・・脉診
右関上、沈位から中位が硬い
左関上触れにくい

・・舌診
舌裏怒脹きつい
歯痕

・・腹診
脾募薄くあり
肝の相火少しあり
季肋際めくれ
右季肋際硬い
中脘按されるとイヤ
臍から下脘にかけて動悸
臍は引いてくる
中注に塊
右太巨抜け
左太巨奥に冷え
少腹急結あり(右>左)
全身の皮膚がゆるくて薄っぺらい印象

・・経穴診
列缺かげり右<左 合谷こそげ 右後谿陥凹 右足三里やや冷え、やや陥凹 左公孫 こそげ 陥凹 冷え 左臨泣つまり 右太衝 熱感あり、触っていると湿気が上がってくる 右陽陵泉こそげ 左右陽陵泉から下胆経つっぱり 左右外関から陽池、ゆるみ、冷え(右は特に薄く広がっている) 左湧泉冷え 復溜冷え、ゆるみ ・・背候診 上背部(至陽から上)に細絡 左右大椎脇緩み陥凹 肺兪発汗陥凹 左脾兪(トップ)胃兪陥凹 左右三焦兪大きく陥凹 右次髎つまり ・五臓の弁別 ・・肝 20代初め疲れやすくストレスを受けやすい、胸部が詰まる感じしばしば 30歳1月 3週間ぐらい、めまい、吐き気、動悸 左関上触れにくい 舌裏怒脹きつい、戦 肝の相火少しあり 上背部(至陽から上)に細絡左臨泣つまり 右太衝 熱感あり、触っていると湿気が上がってくる 右陽陵泉こそげ 左右陽陵泉から下胆経つっぱり ・・心 20代初め疲れやすくストレスを受けやすい、胸部が詰まる感じしばしば 右後谿陥凹 ・・脾 小食 25歳ぐらいより食欲ダウン 胸焼け腹が張ることがときどき 間食はよくある、飲み物1000cc以上 口の渇きはよくある 右関上、沈位から中位が硬い 脾募めくれ薄くアリ 季肋際めくれ、右季肋際硬い、中脘按されるとイヤ 臍から下脘にかけて動悸 臍は引いてくる 右足三里やや冷え、やや陥凹 左公孫 こそげ 陥凹 冷え 左脾兪(トップ)胃兪陥凹 ・・肺 20代初め疲れやすくストレスを受けやすい、胸部が詰まる感じしばしば 西日がダメ、風にあたると消耗する 全身の皮膚がゆるくて薄っぺらい印象 上背部(至陽から上)に細絡 列缺かげり右<左 合谷こそげ 左右大椎脇緩み陥凹 肺兪発汗陥凹 ・・腎 疲れが残ることが時々 ホルモン剤などの反応が悪い 中注に塊、右太巨抜け、左太巨奥に冷え 左右外関から陽池、ゆるみ、冷え(右は特に薄く広がっている) 左湧泉冷え 復溜冷え、ゆるみ 左右三焦兪大きく陥凹 右次髎つまり ・・瘀血 25歳激しい下腹部痛 子宮内膜症の手術後生理痛が軽減 舌裏怒脹きつい 少腹急結あり(右>左) 上背部(至陽から上)に細絡 ・・気虚 歯痕 全身の皮膚がゆるくて薄っぺらい印象 列缺かげり右<左 ・病因病理 20代の初めからストレスの影響を受けやすく、胸部が詰まる感じがすることが しばしばあるなど、全身が強い肝鬱の影響を受けやすく瘀血も生じやすく、そのため、 後にチョコレート嚢胞の破裂ではと言われた激しい下腹部痛などもあった。 30才の時に、子宮内膜症チョコレート嚢胞の手術により生理痛が軽減。瘀血の除去によ り負担が減ったのではないかと思われる。 どんな風でも身体が消耗するという肺気の弱さがあり、全身の皮膚もゆるくて薄っぺら く、肺気を中心とした気虚を思わせる状況の中、肺気が弱いので肝鬱も強くなりがちで あり、上背部全体にかけての細絡がみえ、強い肝気の上逆と瘀血の存在がうかがわれる 。 上焦での肺気の弱さと強い肝鬱は相対的に下焦の弱り腎虚を生じやすくなり、不妊治療 に対する反応が悪くなっている。また、下焦においても瘀血が生じやすくなり、子宮内 膜症、チョコレート嚢胞につながっていると思われる。 強い肝鬱によって口がよくかわくのか、水分の摂取も多く脾気に負担をかける悪循環と なっている。薄い脾募、臍から下脘にかけての動悸、左脾兪の大きな陥凹は脾気の弱り を示している。 ・弁証論治 弁証: 肺気を中心とする気虚 肝鬱 腎虚 論治: 肺気を補い腎気をたて強い肝鬱を納める。 ・治療指針 まず第一に肺気を補い、肝気、腎気への悪影響と取り去る。 肺気を補う上で必要であれば脾気もたてる。 腎気をたて、下焦の生命力を上げ、肝気の治まりどころをつけると ともに、妊娠に向けての身体作りとする。 ・治療経過 200Y年4月 体外受精一回目新鮮胚移植ー妊娠せず 200Y+1年5月 体外受精二回目凍結胚移植周期ー妊娠せず   ビッグママ治療室受診 200Y+1年4月 体外受精 1個採卵 一個胚盤胞凍結   (年齢の割に、空砲、採卵できずの卵胞多し)   7月移植ー着床するー妊娠継続できず 200Y+1年 10月 体外受精 3個採卵2個受精   11月自然周期で移植 妊娠せず   右股関節 もともと先天性股関節脱臼 外れたらぶらぶらさせないとダメ   →バイオネックス、腸骨の調整 経過良好   12月 疲れたので温泉に行ったら風邪を引いた 200Y+2年x月 採卵、フレッシュ胚盤胞で移植 化学流産   x+2月採卵ー凍結 不育症の検査問題なし   x+4月HR周期での移植ーー排卵済みで移植見送り   x+5月自然周期での移植、シート法+胚盤胞移植→βhcg200越え   6w ぎっくり腰になりそう、胎嚢見えた   つわりが非常にきつい 内関パイオ   9w越え!   22w 頚管少し短いかもと言われた   つわりはまだきつい、夕方になると体調が悪くなり気持ちが悪い   30w 食事をすると動悸がする     夜に腹がはる   39w まだ赤ちゃんの位置が高いと言われている     1)肺兪(10)、左胃兪、左三焦兪、腎兪、次髎     2)百会7 三里灸頭鍼 三陰交パイオネックス 左外関ミニ灸      パイオネックス 左外関、曲泉、三陰交      治療直後、ぐっと赤ちゃんが下がる      5日後、無事に陣痛がきて3000㌘弱の元気なお子さんを自然分娩。   本当に長かった不妊治療となりましたが、無事の出産おめでとうございました!!