弁証論治:

0171:不育、不妊、強い肝鬱弁証論治

症例集→20代から有名クリニックで体外授精するも結果が出ない(34歳出産)【case:0171】

・問診

不妊症
 冷え性
 31歳
 162㎝
 46キロ

主訴

クーラーや秋冬に冷え性でつらい、若い頃からずっと手足先が冷たい。
腰痛も若いときからずっとある。
不妊や冷えの原因はストレスが大きいと自分では思う。
有名な不妊クリニックでタイミングAIHを半年、ステップアップし採卵するものの卵はあまり採れず、2回移植するも妊娠も出来なかった。

・・普段の状態について
季節の変化について行けない(冷えが辛い)。入浴で体調が改善。
食欲は普通、食事は規則的、早食い、空腹感もあり美味しい。時々腹がはったり胸焼けがする。
間食はチョコやスナック菓子を毎食後食べる。
飲み物は1200cc紅茶、コーヒー白湯など。
口は時々渇く、違和感はない。
飲酒喫煙はない。

便痛は日1回、バナナ状でやや軟便、こぶし大。付着することや出きらないことはめったにない。
小便は1日10回、夜間尿によくおきる。

寝つきは普通、眠りは浅い夢をよくみる、寝起きは普通、疲れが残るときは時々ある。

・・婦人科について

30才の時に右下腹部痛で虫垂炎とチョコレート膿疱、右卵巣破裂で手術。
初経は11才、周期は31日、4-5日。小さい塊。
生理前の2-3日頃から、胸の張り、腰の痛み、イライラ、生理が来れば納まる。おりものが増える。
最近は生理の量が減ってしまって期間も短い。3日目にはもうほとんど出血がない。

・時系列の問診

若い頃から手足の冷え、腰痛

28才結婚 いつごろからか判然とはしないが、夫のイビキで目が覚め夜にトイレに行く様になった。

29才 右の下腹部痛から、チョコレート嚢胞、卵巣破裂、虫垂炎同時手術となった。

30才  新宿の某有名クリニック受診  hcgが6.9あることを指摘される。
     タイミング人工授精で半年ほど
   IVF 一個採卵 着床せず

31才 IVF 1個採卵凍結 胚盤胞移植。妊娠せず
   常にhcgが0.3ぐらいあると指摘された。

・体表観察

・・脉診
左右関上がやや浮いている

・・舌診
淡紅から淡白
歯痕胖嫩
戦アリ
舌裏怒脹あり

・・腹診
腹部全体に温
脾募あり、
肝の相火、裏肝の相火ともにきつい
気海抜け大きい、
左大巨抜け大きい(右の大巨は傷でわかりにくい)

・・経穴診
右の太淵腫れ、
右の合谷硬結
右の後谿こそげ
右の神門 腫れて大きく硬結

左公孫 こそげ大きい
三陰交陥凹 右>左
足三里陥凹
曲泉空いている感じ
陰陵泉 ゆるみ
下腿内側脾経が棒の様な感じ
左湧泉冷え
右の臨泣つまり

・・背候診
大椎細絡あり
右肺兪 陥凹大きい
右心兪 陥凹 大きい

左脾兪、胃兪、中心が外側にずれている陥凹
右脾兪から腎兪(腎兪が根 陥凹)筋張り
大腸兪~仙骨丈夫にかけて固まっている感じ。

腰痛の左右差なし。左の腰が落ちている感じ。

・五臓の弁別

・・肝
若い頃から冷えで辛い(手足先)
不妊の原因はストレスではないかと自分で思う
チョコレート嚢胞卵巣破裂と虫垂炎の同時手術(右太巨付近)
入浴で体調が改善

舌戦アリ、舌裏怒脹あり
肝の相火、裏肝の相火あり
脉診ー左右関上がやや浮いている
右の臨泣つまり

・・心
右の後谿こそげ
右の神門 腫れて大きく硬結
右心兪 陥凹 大きい

・・脾
便通はよい
食後に腹がはったり胸焼けが時々
間食(お菓子チョコレート)を毎日食後に

脾募あり
脉診ー左右関上がやや浮いている
気海抜け大きい
左公孫 こそげ大きい
三陰交陥凹 右>左
足三里陥凹
曲泉空いている感じ
陰陵泉 ゆるみ
下腿内側脾経が棒の様な感じ
左湧泉冷え
左脾兪、胃兪、中心が外側にずれている陥凹
右脾兪から腎兪(腎兪が根 陥凹)筋張り

・・肺
右の太淵腫れ、
右の合谷硬結
大椎細絡あり
右肺兪 陥凹大きい

・・腎
若い頃から冷えで辛い(手足先)
若い頃から腰痛
チョコレート嚢胞卵巣破裂と虫垂炎の同時手術(右太巨付近)
季節の変化について行けない(冷えがつらい)
夜間尿によく起きる
疲れが時々残る
生理の量が最近減ってしまっている

裏肝の相火あり
右脾兪から腎兪(腎兪が根 陥凹)筋張り
大腸兪~仙骨丈夫にかけて固まっている感じ。腰痛の左右差なし。左の
腰が落ちている感じ。

・・瘀血
30才の時に右下腹部痛で虫垂炎とチョコレート膿疱、右卵巣破裂で手術。
生理に小さい塊がまじる
舌裏怒脹あり

・・気虚
歯痕胖嫩

・病因病理

20代から手足の冷えがきつく、腰痛も継続している。冷えは冬や秋など寒い季節にはよりいっそう冷えも辛く、腎気が陽気を中心に不足しがちで肝鬱も生じやすかったのではないかと思われる。

結婚後、夫のイビキで夜に目が覚める様になり夜間尿がはじまる。睡眠が中断することにより腎気により負担がかかった可能性が伺える。

30才の時に、突然、右下腹部痛がおこる。卵巣の破裂と虫垂炎が同時におこっており手術となった。

もともとの腎気の不足や肝鬱が下焦においては瘀血を生じやすくなりっていたのではないかと思われる。

その後、腹腔内の癒着もきついため体外受精に治療をステップアップするものの、良好胚が得られるものの妊娠に致っていない。

体表観察から、下腿内側の伸びやかさのなさ、力強さのなさは、女子胞(子宮)を養うであろう脾気や衝脈の弱りを伺わせ、夜間尿の状況、生理の量の減少、腎兪の弱り、大腸兪を中心に柔軟性がなく固まった様な感じの下焦は、もともとの腎気不足を明瞭にあらわし、女子胞(子宮)への温養の不足から、女子胞力の不足となり、妊娠出来ない状態につながっていると思われる。

・弁証論治

弁証 腎虚肝鬱 女子胞力の不足
論治 益気補腎 温養女子胞

・治療指針
腎気をあげる。腎気とともに脾気を養い、女子胞を温養し妊娠し継続する力を補う。

・生活提言(口頭告知バージョン)

腎気不足が明瞭であり、仕事の忙しさで肝鬱を招いていることが悪循環になっている。

腎気とは生命力を底支えするものである。

年齢がわかく、体外受精で良好胚が出来るものの、移植しても着床の数値は低く継続できないこの状況も

また、腎気が不足によっておこっている、これは体外受精の治療によって救われる部分ではない。

それゆえ、何度体外受精を繰り返しても妊娠や妊娠継続にいたらず、いたずらに月日が過ぎ、

金銭の負担が増すばかりである。

体外受精をなんとか工夫すればという気持ちは理解できるが、『卵の質は体外受精で用いる薬によってあげることは出来ない』という ドクターのコメントは至極もっともで、ここは腹をくくって、腎気を積み増しし、 腎気によって養われている女子胞力を増すことでしか解決し得ないと思われる。

・解決への提言

  1)鍼灸治療を、頻度をあげて取り入れる(週に2-3回)

  2)毎日の自宅施灸

  3)仕事の見直し(現状の仕事ぶりでは腎気の積み増しはかなわない)

  4)睡眠、食事の改善。

・治療経過

初診後も仕事を継続、腎虚肝鬱の意味がなかなか伝わらなかったが、 しっかりと腹をくくり取り組んだ周期で初めて妊娠判定でよい数字が出る。 ご本人を説得し、頻回の治療と仕事のダウンサイズをしっかりとおこない、妊娠継続。

初診から9ヶ月30診(月に3回ぐらいのペース)

採卵、凍結胚を作るー移植ー子宮外妊娠。

初診から1年後 週に1,2回のペースでの移植周期(約1ヶ月間に10診)

今までよりも3倍鍼灸治療を増やす。

移植ー妊娠ー胎嚢確認

妊娠6w 卵巣嚢腫が5㎝を越えて破裂の危険性を指摘された

(豆乳を毎日200cc飲んでいるとのことなので、やめるように指示)

妊娠12wまで週に2回ペース

妊娠22w 逆流性食道炎きつい 右内関、左脾兪、胃兪、右三焦兪 

内関はここから交互につかう

 (妊娠34w(当院終了時)まで紅舌が続く胃のむかつきがきつい。母も胃酸過多症)-牛乳で落ち着き

妊娠25w 全体に下がり気味、トコちゃんベルト進める。

無事に正規産にて元気な男の子を出産。おめでとうございます。

33歳出産