弁証論治:

0100:不妊 腰痛 冷え性 弁証論治

症例集→冷え性からの、残尿感、腰痛、不妊、流産(38歳出産)【case:0100】

・問診
37歳女性
身長165センチ
体重56キロ
血圧100-70

主訴

徐々におこり、常に辛い、デスクワークで一日座っているのが辛い(腰痛)
寝ているときにふくらはぎ
に違和感があり、寝られないことがある。
腰痛は 昔からよくおこり、ほぼ毎日長時間座っているときが辛い。
冷え性は中学ぐらいから夏でも寒くてプールに入るのがいやだった。
他に立ちくらみをなおしたい。

自分ではよくわからないが、ここ1年で体重が6キロも増えた。
運動不足や体力低下があると思う。
腰は整形外科で湿布の治療を受けた。
幼児の頃気管支肺炎、ここ1,2年は出現していないが春になると咳喘息が出ていた。

・・普段の状態について

季節の変わり目が辛い
食欲は普通、規則的で30分以上かける、空腹感はよくある、食事は美味しい
食後に腹が張ったり胸焼けがよくある。
最近はとらないようにしているが間食はよくとる
水分はルイボスティーやカフェラテ、食事の時には冷たい飲み物をのむ。1000cc以上
口は時々渇く
大便は7日に1回 お腹が張っていつも辛い 薬は服用していない
便秘を繰り返し硬い便が出た後に必ず下痢をする
大便が出きらない感じがよくある、きつくにおう

睡眠、尿の状態は20代からかわらず
小便は1日10回以上
残尿感はいつもあり、ずっと座っていればいくらでも出る感じです
2年前に病院に通院したけれどあまり症状はかわらない
尿の色は黄色 
夜間排尿は必ず1回は行きたくなる。最近ひどく5時ぐらいにトイレに行きたくて目が覚める。寝る前は立て続けに3回ぐらいいく。
寝付きは悪い、夢をよくみる、寝起きが悪い(朝が弱くなかなか起きられない)
3,4年前から翌日に疲れがのこることがよくある。

・・婦人科について

生理周期にともなう体調不良はない
28日周期7日間
排卵時期に下腹部痛があるときと、ないときがある
生理痛は1,2日目
生理の色は濃い、親指大の固まり、量は普通、2日目が多い
不妊一般検査は特に問題がない
自己抗体の数字が普通の人よりも高いと言われた
自分でタイミングをあわせて1年病院でのタイミング指導5回、人工授精3回
化学流産2回

・時系列の問診
幼少時期 気管支肺炎になる

冷え性は中学ぐらいから夏でも寒くてプールに入るのがいやだった。

20代始め
 若い頃から、だるい、ねむい、寝付きが悪い、尿の状態、便秘の問題、手足の冷たさが   あり現在も継続している。
 春になると咳喘息がはじまる(ここ1,2年は出ていない)
 後ろを向くと首が痛くて通院していた

30歳 
 階段の上り下りで股関節が痛くなる(レントゲンでOK、湿布で対応)

32歳
 だんだん疲労感や疲れがきつくなる

36歳結婚
 実家にいた頃は夕飯にはご飯を食べていなかったが食べるようになった
 →1年で6キロ太った(結婚前50kg、56kgへ)
 →ふくらはぎに違和感(悪化している)
 →生理に親指大の固まりがまじりはじめる
 →化学流産2回
 ときどき股関節ががくがくする

・体表観察

・・脉診
全体に沈
やや数脉
輪郭が甘い

・・舌診
舌の中央部に剥苔
やや淡白
歯痕きつくない
舌裏怒脹きつい

・・腹診
脾募うすくあり
裏肝の相火きつい
季肋際めくれ
中脘硬い
気海(冷え)から関元(温)にかけて抜け
臍周ふくらみあり、引いてくる
少腹急結左ややあり、右きつい

・・経穴診
合谷右>左 動き悪いゆるみの奥がつっぱり
列缺こそげ
右神門腫れ
右内関陥凹
養老冷え
陽池冷え
左湧泉冷え、やや腫れ
左胆経冷えこそげ
三陰交陥凹、動きが悪い、左は冷え
陰陵泉つっぱり

・・背候診
大椎まわり細絡あり
神道陥凹
左脾兪陥凹、左胃兪陥凹トップ
左三焦兪陥凹
懸樞やや冷え
左大腸兪やや陥凹
左次髎ややつまり

・五臓の弁別

・・肝
生理に親指大の塊
化学流産が2回
舌裏怒脹きつい
少腹急結あり(左あり、右きつい)
左胆経冷えこそげ

・・心
右神門はれ
右内関陥凹
養老冷え
神道陥凹

・・脾
ここ1年で体重が6キロ増えた(37歳)
季節の変わり目がつらい
食後に腹が張ったり胸焼けがよくある。
最近はとらないようにしているが、間食はよくある
水分を1000cc以上とる
大便は7日に1回、便秘を繰り返し硬い便が出た後は必ず下痢する
大便が出きらない感じがよくある、きつくにおう

舌の中央部に剥苔
脾募薄くアリ
中脘硬い
気海冷え
臍周膨らみあり、引いてくる
三陰交陥凹、動きが悪い、左は冷え
陰陵泉つぱり
左脾兪陥凹、左胃兪陥凹トップ

・・肺
大椎まわり細絡あり(位置により弁別)
幼児期に気管支肺炎
ここ1,2年はおこっていないが春になると咳喘息
合谷動き悪いゆるみの奥がつっぱり
列缺こそげ

・・腎
デスクワークで一日座っているのが辛い(腰痛)
寝ているときにふくらはぎに違和感があり寝られないことがある
腰痛は昔からよくおこっている
冷え性は中学ぐらいから夏でも寒くてプールに入るのがいやだった小便は1日10回以上
残尿感はいつもあり、ずっと座っていればいくらでも出る感じです
2年前に病院に通院したけれどあまり症状はかわらない
夜間排尿は必ず1回は行きたくなる。
最近ひどく5時ぐらいにトイレに行きたくて目が覚める。
寝る前は立て続けに3回ぐらいいく。
寝付きは悪い、夢をよくみる、寝起きが悪い(朝が弱くなかなか起きられない)
3,4年前から翌日に疲れがのこることがよくある。
化学流産が2回
手足が冷たい
30代から階段の上り下りで股関節が痛くなる

裏肝の相火きつい
気海から関元にかけて抜け
陽池冷え
左湧泉冷え、やや張れ
左三焦兪陥凹
懸樞やや冷え
左大腸兪やや陥凹
左次髎ややつまり

・・気虚

脉の輪郭が甘い
列缺こそげ
舌の剥苔

・病因病理

中学ぐらいから、寒いからという理由でプールに入るのがいやだったということから、全身の陽気不足が目立つ素体であり、20代のころより、だるい、ねむい寝つきが悪い、夜間尿、頻尿、残尿感など腎気の不足、そして7日に1度の便通など脾気の弱さもめだち、脾腎ともに力不足を感じさせる状態であり、現在も継続している。

30代の頃より、階段の上り下りで股関節が痛くなったり、疲労感や疲れがますなど腎気の弱りが強くなっている。また、残尿感や尿が座っていればいくらでも出る感じという腎の固摂作用の低下がみられる。

36歳で結婚、夕食にご飯を食べるようになり食生活の変化により体重が6キロ増加。

増えた体重を腎気が支えきれずふくらはぎに違和感や股関節ががくがくとする症状が出現。また腎気により負担がかかり弱ったため肝鬱は強くなり生理の血に親指大の塊がまじり、結婚後、化学流産がくり返されていると思われる。

・弁証論治

弁証:腎虚を中心とした気虚

論治:益気補腎

・治療指針

もともとの腎虚を中心とした気虚がきついため、いろいろな症状をだしているが、 腎気の底上げをし、生命力を高めることを中心としていく。

・生活提言

東洋医学の世界では、一人の、丸ごと一つの生命の流れをみていきます。

そしてよく診るために5つの肝心脾肺腎という観点からみていきます。

○○さんの場合は、中学時代から、身体を温め養う(温養といいます)腎の力が不足していました。

この腎の力は、生命力の源、身体をしっかりと下支えする力です。 腎の力不足が、全身のだるさや、疲労感につながりますし、また腎の問題は 下半身の問題とつながりやすく、尿に問題がでやすくなったのでしょう。

結婚後、体重が増えることができたのは、脾(胃腸の力)のちからはそれなりにあったので、身体を充実させることができたためです。妊娠することが出来たのも脾の力により気血がそれなりに生成されていたためです。しかしながら、充実した身体を下支えする腎の力が弱かったために、妊娠が継続できない状態にありました。

また増加した体重を支えるにはしっかりとした腎気が必要です。腎気が不足気味であったため、体重を支えきれず、ふくらはぎの違和感や股関節の問題が出現。身体の気血のめぐりは滞りが強くなり、生理の血に塊がまじりやすくなるという新たな問題の出現へともつながっています。

いま、この『妊娠することは出来る』という時点で、しっかりと生命を下支えする腎気の力をつけましょう。

腎気がしっかりしてくれば、しっかりと子宮を支え、養い、せっかく成立した『妊娠』を継続する力がはぐくまれます。また、体重が増え充実してきた身体を支えることもできます。尿の問題、股関節の問題なども解決していくことができるでしょう。

また、いまの時点は、生理の血に塊がまじるなど、新たな問題が生じ始め、妊娠そのものが成立しづらくなる悪循環へと陥いる可能性をも感じさせます。

いま、この時点がとても大事な時期です。

しっかりと養生していきましょう。

一緒にがんばりましょうね。

・治療経過

初診時の鍼灸治療

右の神門、右の後谿 気海15+温灸 関元温灸 右三陰交
左肺兪、左脾兪、左胃兪、腎兪、中膂兪
アドバイス:漢方薬を服薬→薬局にて八味丸を進められ購入

4ヶ月後、なかなか妊娠しないので体外受精にステップアップしたいというご本人の希望。
妊娠する力はあるのだから、体外をいそぐ必要はないのではとアドバイス。

4ヶ月半後 自然妊娠、

妊娠13週
以前よりお灸がとても厚く感じる

妊娠15週

残尿感出現

妊娠18週

股関節の違和感

妊娠27週

逆子→無事に治るしかしながらお腹は下がり気味。再度妊娠30週に横向きの逆子になる。→治った。

無事に出産。おめでとうございます。