弁証論治:

0160:不育(19w,9w)不妊の弁証論治

症例集→不育、不妊、頚管長が短い。仕事が忙しく安静にできない(38歳出産)【case:0160】

・問診
36才女性 身長160 体重45キロ

主訴:不妊、妊娠後の安胎、冷え性、腰痛、便秘

腰痛は生理前と常時

便秘は常時

夏、クーラー、冬は冷え性

色々対策をしているので現状維持

腰痛は一時歩けない程だったが今日はそこまでにはなっていない。

20才前から、腰痛、便秘、冷え性などすべて

腰痛便秘は通年、冷え性は夏(クーラー)冬がひどく、春秋でもある。

原因は加齢や運動不足、体力不足

腰痛は2010年~骨盤指圧治療を受けている。その結果、歩けない程の痛みが出るということはなくなった。

不妊について、29才(出産)32(流産),36才(流産)取り立てて不妊一般検査で指摘される項目はない。いつも忙しく締め切りがあり徹夜も多い仕事で、妊娠をしても安静にはできない(妊娠中も徹夜などしていた)。

・・普段の状態について
クーラー、冬、肉体疲労時に悪化

仕事は締め切りがあると徹夜も連続する。いつも忙しく、休むことはできない。

食欲は普通、規則的、30分以上かけて食べる、美味しい、食後にお腹が張ったり胸焼けは時々。間食は1日2回以上(チョコレートやクッキー) 口や喉が渇くことや違和感はめったいにない。

便通は3-4日に1回、便秘でお腹がはっっつらいことはよくある。出きらない感じはよくある。コロコロ、何日かに1度大量に出る。付着は時々。

小便は1日3回、残尿感、切れが悪い、色が悪い、夜間尿などめったにない。

22時に寝て6時に起きる(仕事が忙しいと徹夜も多い)

翌日に疲れが残ることは時々。

・・婦人科について

腰痛は生理前と排卵近くにおきる

初経は12才、周期は28-31日で6日間。

生理前2-3日ごろから腰が痛い(生理がきて腰痛はなおる)。

排卵時に腰が痛い。

生理の時には体調は変わらない。生理初日に鈍痛程度。

生理の色は濃く、小指大の塊、2日目が多い。

29才出産、32才19w流産、36才9w流産。

出産後太った、生理の変化はない、産後に復調しているのかよくわからない、母乳は余り出なかった。

病院での不妊治療一般検査では特に問題はみつからなかった。

・時系列の問診
19才、背中が痛くなって病院に行き側湾と言われる

20代から現在の45キロぐらいの体重(BMI17.58)
(自分としては体重がすぐに増えてしまうので、増えないように食べ過ぎに気をつけてセーブしているとのこと)。

29才出産、体重増加。産後セーブして元に戻る。
 (8ヶ月から頚管長が短く2ヶ月入院(2500㌘にて出産))
 出産後50キロ(BMI19.53 )まで体重が増える。腰痛などにはならず。
 妊娠中も仕事が忙しく、安静と指示されるもほとんど守れず、かえって
 検診のために休みをとるので徹夜などになることも多かった。

32才 妊娠19wにて流産(出血して流産)  
 仕事の忙しさ変わらず、徹夜も多く、いつも忙しい(現在まで)

34才 腰が痛くて動けなくなることもあり指圧などをしてもらうようになった

36才 妊娠9wにて流産(ずっと出血していた)

・体表観察

・・脉診
舌辺に瘀斑あり、
淡紅から淡白、
やや白膩苔、
舌裏怒脹あり

・・脉診
左右尺位浮いてやや硬く
右は弦 
左寸口浮いて硬い

・・腹診
心下つまりあり、
肝の相火あり、
裏肝の相火あり 
臍上向き
気海抜け大きい、
関元抜け

・・経穴診
左外関、陽池 冷え
右神門硬結
左公孫やや陥凹
三陰交 冷えこそげ
左足三里 こそげ
陰陵泉 こそげ 右<左 陽陵泉つっぱり 右<左 下腿胆経つっぱり 右<左 承筋承山 弱い ・・背候診 肝兪から脾兪まで筋張り  左は胃兪が根で二行  右は脾兪陥凹胃兪が根で二行 腎兪二行 右腎兪から気海兪硬い、 右の志室脹れ 上背部細絡あり  ・五臓の弁別 ・・肝 生理前と常時腰痛 (生理前2,3日頃から腰痛、生理がきて治る) いつも忙しく徹夜も多い仕事 妊娠しても安静にはできない 生理の血に小指大の塊 BMI17.58の体重だが太らないように気をつけている 舌辺に瘀斑あり 舌裏怒脹あり 肝の相火あり、 裏肝の相火あり 陽陵泉つっぱり 右<左 下腿胆経つっぱり 右<左 ・・心 左寸口浮いて硬い 心下つまりあり 右神門硬結 ・・脾 便秘は常時、コロコロ便 時々食後に胸焼け復調 間食は1日2回以上 やや白膩苔 臍上向き 気海抜け大きい 左公孫やや陥凹 三陰交 冷えこそげ 左足三里 こそげ 陰陵泉 こそげ 右<左 肝兪から脾兪まで筋張り 左は胃兪が根で二行 右は脾兪陥凹胃兪が根で二行 ・・肺 クーラーで冷え性が悪化 上背部細絡あり  ・・腎 生理前と常時腰痛 冷え性 クーラーで冷え性が悪化 32,36才で流産 いつも忙しく徹夜も多い仕事 妊娠しても安静にはできない 排卵時に腰が痛い 出産後に母乳は余り出なかった 産後の回復はよくわからない。 出産後生理の変化はない 19才で背中が痛くなり側湾と言われる 妊娠8ヶ月から頚管長が短く2ヶ月入院無事出産 妊娠19wにて流産 妊娠9wにて流産(ずっと出血していた) 左右尺位浮いてやや硬く右は弦  関元抜け 左外関陽池冷え 承筋承山 弱い 左の腎兪二行 右腎兪から気海兪硬い、 右の志室脹れ ・病因病理 19才で側湾が指摘され、20才前から、腰痛があり、ひどい便秘で冷え性というエピソードがあることからもともとの腎気の弱さがあったと思われる。 29才での第一子の妊娠中に子宮頚管長が短くなり2ヶ月の入院、 40週の在胎日数はあるものの2500㌘での出産となった。 腎気の弱さがあったため子宮をしっかりと温養できず、頚管長が短く 胎児も小さめであったのではないかと思われる。 その後、仕事も忙しく、徹夜も多い状態が続き腎気に負担がおおく、肝気を振り絞って 仕事をがんばり通したので、やはり子宮を温養することができず、32才の妊娠は19週で 流産となってしまった。 ご自身の日々として、仕事を自分が疲労を感じていても徹夜などをして頑張ることが日常であり、また体重が少しでも増えればBMIが18を切った底体重であっても食事をセーブしており、強い肝鬱と気血そのものが養われにくい状態で腎気を損傷しがちであったと思われる。34才の時には腰が痛くて動けなくなるほどの状態になった。指圧によって少し肝鬱が緩和され動けない程ではなくなったが腎気が補われることはなかったので、腰痛は継続し、36才の妊娠は出血が続き9週で流産している。 背部腧穴をみると、背部腧穴の弱りが非常に明瞭で、 胃兪を根とした筋張り、そしてその下の腎兪の二行や固さなどがあり 裏となる腎気の弱さが明瞭である。そして、腹部をみると心下の詰まりがきつく、 肝の相火裏肝の相火もきつく、臍は上方にひっぱられ気海関元が抜けている。 土台となる腎気の弱りと、強い肝鬱が明瞭に示されている。 脾胃の状態は食べれば太ることができるというそれなりに力はあるようだが、 肝鬱が強く便通は3,4日に一度のコロコロ便となっていると思われる。 ・弁証論治 弁証 腎虚肝鬱 論治 益気補腎 疏肝理気 ・治療指針 腎気を立ち上げることを中心とし、 必要に応じて疏肝理気する。 ・治療経過 初診 1)百会 左外関、左陽池 三陰交 左公孫 左足三里 2)右肺兪 温灸 3)左胃兪 腎兪 次髎 4)気海 関元 温灸 1)百会にて気機の調整を行いながら、左外関陽池にて陽維脉を通じさせ陽気をアップさせる。三陰交、左公孫、足三里を使うことによって脾胃の負担を取っておく。 2)弱りのある右肺兪を温灸し、肺気を補い肝鬱を救う。 3)左胃兪、腎兪、胃兪を使い、下焦の補気、温養。 4)気海関元を使い、臍下に気を納める。 妊娠直前の鍼灸 1)肺兪 温灸 2)左脾兪、左胃兪 腎兪、次髎 3)左外関 三陰交 足三里 4)関元 温灸 1)肺兪を使い上焦を補い気の上逆を調整する 2)背部腧穴を使い、裏から補う。脾兪、腎兪、次髎により大補する。 3)左外関を使い陽維脉を通じさせ陽気をアップさせる。三陰交を中心に使い   子宮を養う。 4)関元にて臍下丹田に気を集め、子宮を温養する。 ・治療経過 1-2週に1度のペースで鍼灸治療継続 初診から1ヶ月 なかなか自宅施灸が出来ない。排卵時の腰痛がきつい 初診から3ヶ月  仕事が忙しく疲労感が抜けない。両方のふくらはぎが痛い 初診から半年  徹夜が続き 疲労感が抜けない 心兪の抜け 2年後 自然妊娠 以降鍼灸の頻度を週に1回以上にあげる  ご本人に、仕事のこと、疲労のこと、頚管長のことなど強く説明。また病院も通いやす  いから選ぶではなく、経過をしっかりとフォローできる大きな病院にするように説得。 妊娠15w 頚管長を縛ることになった。入院 妊娠18週 頚管が短くなり入院 妊娠25週 お腹の位置そのものが低い  ドクターより、安静と言われる。いままでは安静のイメージがなかったが、今回は少し  理解できたと思う。 具体的に近所の買い物程度、軽い家事。お腹がはったらゴロゴロする。仕事は割り切 った。 無事に正規産の月まで経過、出産。 「お世話になっております、治療をしていただいていた、○○です。 この度、○○日に出産しました。 無事出産が出来たのも、皆様のお力添えがあったこそだと感謝いたしております。 米山先生には色々助言を頂き、感謝しております。 ありがとうございました。 取り急ぎ、ご報告させていただきます。」