弁証論治:

0149:不妊治療による体調不良弁証論治

症例集→不妊治療を始めてから仕事のストレス、頭痛などで体調悪化(39歳出産)【case:0149】

・問診
37才女性 身長165センチ 52キロ

主訴:吐き気 耳鳴り 頭痛 時々めまい不安感、不妊

不妊治療をスタートしたら具合が悪いことが増えた。

現在、吐き気は月に2-3回、一週間は続く、生理中がとくにひどく、疲れやストレスがたまっていると症状が出現する。

今の仕事についてから1年ぐらいたって症状が出た。仕事が責任のある立場で

常にストレスを感じ、休日も取れてない状態が続いているので限界だと自分では思っている。

3年前の耳鳴りが出始めた頃から、食欲不振、腹満、耳鳴り多夢、朝起きがたいなどが出ている。

頭痛は眉間とこめかみが多い

・・普段の状態について

季節の変わり目

朝、夕方が体調が悪い、食後、食事中にも気分が悪くなることがある。

食欲は普通、若い頃よりは食欲が落ちている。空腹感はあり、食事はおいしい。

食後の腹脹、胸焼けはよくある。気持ちが悪いときは上腹部が腫れている。

間食はお菓子やチョコを1日2回以上10年前から。

飲酒は30才からしていない。お茶やコーヒーなどを1600cc以上。

口や舌は乾いている気がする、違和感はない、

大便は1日1回、バナナ状の便が出る

小便は1日8回 残尿感、夜間尿などはない。

睡眠は23時に寝て6時30分におきる

寝つきは普通、夢をよく診る、寝起きは悪い(昔から)

翌日に疲れが残ることがよくある。

・・婦人科の状態について

37才にチョコレート嚢胞の手術を行うー良好

初経は13才、28日型5日間

生理痛は1,2日目に 刺痛、鈍痛、小指大の塊が混じる。

・時系列の問診
20代から ずっと 貧血 検診でよくひっかかり鉄剤を飲んでいる 
   低血圧でもひっかかる
  肩こり、腰痛も出現、特に夕方が辛かった

25才ぐらいから 頭痛出現 (市販薬で対応できる範囲だった)

34才 現在のいそがしい仕事をするようになる。とてもストレスが強い
  突発性難聴になり、右耳が聞こえなくなる(治った)右耳のピーという耳鳴りは継続

35才
    6月 吐き気を感じるようになり、その後頭痛を感じる
    10月 頭痛外来に通院
    12月 ひどいメマイで救急車で運ばれ入院 そのときから症状が続く
  (頭痛、めまい、吐き気は、同時のこともあるが別々の時の方が多い。
   吐き気が一番多く、めまいは時々)

36才
    1月 頭痛外来の病院を転院、
    8月 頭痛の手術をして 少しよくなった。
    (ラトケ脳症、下垂体の手術)
        (眉間の頭痛が軽減、こめかみの頭痛はかわらない)

  37才
    1月 不妊治療開始
    ポリープの除去手術をする
    人工授精を始める~8月までに5回
x 8月 ビッグママ治療室受診

・体表観察

・・脉診
全体に硬い 数脈(一分に88回、1時間程安静後)
特に関上(左右とも)が硬く、右浮位は固さがきつい

・・舌診
細い舌 中央に裂紋 淡紅から淡白 舌裏怒脹なし

・・腹診
腹部全体に温
心下つまり少しあり
脾募あり、
肝の相火あり、
左小腹急結 あり
季肋際めくれ
気海抜け
大巨 関元 抜け

・・経穴診
右太淵腫れ
右合谷動きが悪い
外関 痩せて陥凹 右<左 左内関 陥凹 右神門 硬結脹れ 右霊道 こそげ 三陰交 陥凹 こそげ 足三里 陥凹 右>左 陰陵泉 つっぱり 右<左 大腿胆経、下腿胆経 きつい突っ張り 左復溜 冷え ふくらはぎが左の方が右より大きい ・・背候診 細絡が左の風門、th4のところに出現 左の大杼から風門 陥凹きつい 細絡 左肝兪から三焦兪(根、陥凹)まで筋張り 右 膵兪(特にきついスジバリ)から脾兪まで筋張り、 脾兪は左右とも外に流れている 腎兪陥凹が大きい 左>右 背中は温 ・五臓の弁別 ・・肝 35才ストレスの強い仕事についたのち、突発性難聴になる、その後主訴出現 常にストレスを感じ、休日も取れてない状態が続いているので      限界だと自分では思っている 眉間とこめかみに頭痛を感じる 突然ひどいメマイになり入院 吐き気はストレスがたまっていると出る。 3年前の耳鳴りが出始めた頃から、食欲不振、腹満、耳鳴り、多夢、朝起きがたいなどが出現 脈:特に関上(左右とも)が硬く、右浮位は固さがきつい 肝の相火あり、 左小腹急結 あり 大腿胆経、下腿胆経 きつい突っ張り 左肝兪から三焦兪(根、陥凹)まで筋張り 右 膵兪(特にきついスジバリ)から脾兪まで筋張り、脾兪は外に流れている ・・心 脉、安静後も一分間に88回 心下つまり少しあり 左内関 陥凹 右神門 硬結脹れ 右霊道 こそげ ・・脾 吐き気を感じることが多い 主訴の症状と同時に、食欲不振、腹満、耳鳴り、多夢、朝起きがたいなどが出現 食後、食事中にも気分が悪くなることがある 食後の腹脹、胸焼けはよくある。気持ちが悪いときは上腹部が腫れている。 間食はお菓子やチョコを1日2回以上10年前から。 口や舌は乾いている気がする 便通良好 20代からずっと貧血 脉:特に関上(左右とも)が硬く、右浮位は固さがきつい 脾募あり 気海抜け 三陰交 陥凹 こそげ 足三里 陥凹 右>左 陰陵泉 つっぱり 右<左 左肝兪から三焦兪(根、陥凹)まで筋張り 右 膵兪(特にきついスジバリ)から脾兪まで筋張り、脾兪は外に流れている ・・肺 右太淵腫れ 右合谷動きが悪い 細絡が左の風門、th4のところに出現 左の大杼から風門 陥凹きつい ・・腎 不妊治療をスタートしたら、具合が悪いことが増えた 35才 ストレスの強い仕事についたのち、突発性難聴になる 吐き気は生理中にひどい、疲れがたまっていると出る。 朝と夕方に体調が悪い 翌日に疲れが残ることがよくある 大巨 関元 抜け 外関 痩せて陥凹 右<左 左復溜 冷え ふくらはぎが左の方が右より大きい 左肝兪から三焦兪(根、陥凹)まで筋張り 腎兪陥凹が大きい 左>右 常にストレスを感じ、休日も取れてない状態が続いているので限 界だと自分では思っている ・・瘀血 細絡が左の風門、th4のところに出現 37才 チョコレートの膿疱の手術 生理に小指大の塊がまじる ・病因病理 20代より貧血や肩こり腰痛などの症状があった。脾胃の健やかさに少し問題があり、 また夕方に肩こりや腰痛などが辛くなっており、仕事が腎気に負担になっていたのではないかと思われる。 25才ぐらいから頭痛が出現し、気の上逆が生じやすくなっていたのではないかと思われるが、市販薬で対応できる範囲であった。 34才に現在の非常にいそがしい上に責任が重くストレスの強い職場になり、 数ヶ月後に右耳の突発性難聴になった。このときは病院での対応で右耳の難聴はなおるものの、以来右耳にピーという高音の耳鳴りが出現。忙しさによって腎気が弱ったことと、ストレスによって肝気の上逆が強く起こり、化火し、耳の部位を襲ったためと思われる。手当によって難聴は回復するものの、耳の部位の弱りを生じたことと、ストレスが継続しているために、耳鳴りは継続してしまっている。 その後も、ストレスが続き、翌年には吐き気を感じるようになった。気逆の継続により 胃をつき吐き気となったと思われる。そののち頭痛も感じるようになっている。 10月から頭痛外来に通院するも積極的な治療はおこなわれず、また仕事の疲労、ストレスも継続し発作的なひどいメマイにより入院するほどになってしまっている。腎気の弱りに乗じて強い内風が生じたのではないかと思われる。 頭痛のために転院し、1ヶ月入院し手術をおこなった。これにより、眉間の頭痛が軽減。しかしながらこめかみの頭痛はあまり変化がなく全体としてもあまりかわらなかった。その後不妊治療を開始することによって症状が悪化。腎気に負担がかかることによって、肝気の上逆がよりきつくなったのではないかと思われる。頭痛よりも吐き気が症状の中心であり、肝気が胃をつくことが多い状況が伺える。また生理がくると、吐き気を中心により症状が悪化。腎気が落ちると気逆が生じやすくなっているのではないかと思われる。 背部腧穴をみると、一番目立つのは左右とも脾兪が外側に流れていること、 そして左肝兪から三焦兪(根、陥凹)まで筋張り、右 膵兪(特にきついスジバリ)から脾兪まで筋張りである。膵兪、肝兪、胆兪、脾兪と脾胃の弱った根の上に、かなり強い ストレスがかかり続けこのきついスジバリとなっているのではないかと思われる。 ご本人が、吐き気の頻度が一番多いというのも納得のいくところである。 また両方の大きな腎兪の陥凹は、主訴が脾胃と肝気の問題だけではなく、腎気の弱りがあることにより、より悪化している可能性を示唆している。また不妊治療によって、腎気に負担がかかることでより腎兪ならびに筋張りの状況を悪化させている可能性も伺える。 ・弁証論治 弁証 肝鬱気逆 脾虚 論治 疏肝理気 温養脾胃・治療経過 ・治療指針 まず第一に、強い肝気の横逆による吐き気、気逆による頭痛などの強い症状を疏肝理気することと脾胃を養うことで納め、素体への負担を軽減する。 ある程度の肝気のコントロールができたら、腎気の弱さが気逆の症状を強くすること、妊娠への障害となっているので、腎気を養うことを主眼とする。 肝気のコントロールがつかないようだったら、肝気そのものはふれずに、腎気を養うことで肝気のコントロールを期待していく。 ・治療経過 37才 ビッグママ治療室初診  頭痛続く中、セロフェン誘発、4つ受精、ひとつ移植(妊娠出来ず)2つ凍結 3ヶ月後 12月 HRで移植、妊娠せず、ホルモンの関係か頭痛がよりひどくなる。 半年後 頭痛が体調の悪化に伴って頻発 移植 妊娠せず 一年後、頭痛が減ってきた 体調がよいことが増えてきた 1年3ヶ月後 人工授精(シート法代わり)+移植(自然周期)ー無事に6回目の移植にて妊娠 妊娠によって頭痛悪化、体調悪化するものの無事に出産、おめでとうございます。