弁証論治:

0154:不妊 不育 肩こり 腰痛 弁証論治

症例集→玄米をやめて白米に、血流アップで妊娠、出産(39歳出産)【case:0154】

・問診
38才女性 身長163センチ 体重48キロ

主訴 不妊 肩こり→頭痛

肩こりから頭痛がおきること

徐々におこり、夕方がつらいが、半年程前に仕事をやめて改善し、いまでは月に1度程度である。

この症状は肉体的に無理をしたときにおこりやすい。

パソコンを多く使用した日や生理前におこりやすい。

首が凝り、頭痛(後頸部)がして目の奥の痛みとなる

・・普段の状態について

クーラー、季節の変わり目、夕方に調子が悪い

入浴後に調子がよい

食事は普通、15-30分ぐらい

空腹感はよくある、いつもおいしく、胸焼けなどはめったにない。

間食は毎日、飲水は600cc、喉が渇くことは時々、違和感はない。

便通は1日に1-2回、バナナ状でこぶし大、付着することもめったにない。

小便は1日に7-9回 尿切れの悪さ、夜間尿などはない。

寝つきは良い、夢をよくみる、寝起きは普通

・・婦人科の状態について

生理前に頭痛がする。

初経は15才、生理周期は30日6日間、粘った膜や出血した色の血液

量は普通、2日目が多い、

生理前の2,3日頃からイライラ、疲れ、頭痛、腰痛、目の奥の痛み、

生理がくると眠気があり、多少腰痛がある

排卵時期にはお腹の痛みを感じることがある

・・不妊治療について

37才から妊娠希望(結婚)

右側の卵巣に内膜症、左側の卵巣には膿腫がある。

タイミングを1年半、人工授精を2回。

体外受精 
 1回目 2個採卵できたが異常受精にて終了
 2回目 1個採卵 フレッシュで移植、妊娠するも化学流産となる。

・時系列の問診

小学校の時に足にしもやけができた(今はない)

20代からたまに胃痛があり 病院にいくこともあった

35才 疲れやすいと感じることが多くなった
    趣味の手芸などでも肩こりを強く感じる
    腰痛を感じることが多くなった

36才 結婚 フルタイムのOLからパートタイムに

37才 
9月 急性虫垂炎 手術で切除(以降灸に寒いところに行くとたまに傷跡が痛む)したり、
   会社が移転したこともあり、間食をやめ体重が50キロから46キロになる。
11月 一回目の体外受精
12月 2回目の体外受精

38才 ビッグママ治療室 初診
玄米を白米にかえてから便がすっきりでる(玄米の時には便は出るがすっと出ない感じだった)

・体表観察

・・望診
皮膚の色味が少し黒い とくに末端が暗い

・・脉診
全体に輪郭があまい
左全体に浮位が固い

・・舌診
淡紅から淡白 
歯痕あり 
胖嫩

・・腹診
脾募薄くアリ、
右の肝の相火あり
季肋際めくれ
中脘、固さ、張りあり 動きが悪い
臍ー引いてくる
気海抜け、
関元やや抜け
小腹急結右あり

・・経穴診
右の内関陥凹
右の神門、脹れ硬結
右の霊道陥凹
両列缺やや陰り
右の合谷陥凹奥に筋張り
右の外関陥凹

大都割れ
公孫割れ、筋張り、
足三里こそげ右>左
右の三陰交かげり
三陰交から復溜にかけて陰り
承筋から承山 ゆるみ

・・背候診
上背部の細絡少しあり
肺兪抜け 左は陥凹もあり 左>右
右魄戸 筋張り
右厥陰兪大きく陥凹
右心兪から督兪筋張り
左神堂筋張り

左胃兪大きく陥凹
右三焦兪陥凹
腎兪亀裂 抜け
大腸兪陥凹
左次髎つまり

・五臓の弁別

・・肝
肩こりから頭痛がおき目の痛みにつながる
生理前に肩こり頭痛目の奥の痛みイライラがおきる
入浴後に調子がよい
右側の卵巣に内膜症、左側の卵巣には膿腫がある。
小学生の時にしもやけ(今はない)
趣味の手芸で肩こり

右の肝の相火あり
季肋際めくれ

・・心
右の内関陥凹
右の神門、脹れ硬結
右の霊道陥凹
右厥陰兪大きく陥凹
右心兪から督兪筋張り
左神堂筋張り

・・脾
間食は毎日
玄米をやめて白米にしたら便通がすっきりと出る

20代からたまに胃痛

脾募薄くアリ、
中脘、固さ、張りあり 動きが悪い
臍ー引いてくる
気海抜け、
大都割れ
公孫割れ、筋張り、
足三里こそげ右>左
右の三陰交かげり
左胃兪大きく陥凹

・・肺
両列缺やや陰り
右の合谷陥凹奥に筋張り
上背部の細絡少しあり
肺兪抜け 左は陥凹もあり 左>右
右魄戸 筋張り

・・腎
夕方に肩こり頭痛がおきる
肩こり頭痛から目の奥の痛みにつながる
生理がくると眠気腰痛
排卵期にお腹の痛み
右側の卵巣に内膜症、左側の卵巣には膿腫がある。
35才頃から疲れ腰痛を感じることが多くなった

皮膚の色味が少し黒い とくに末端が暗い

関元やや抜け
右の外関陥凹
三陰交から復溜にかけて陰り
承筋から承山 ゆるみ
右三焦兪陥凹
腎兪亀裂 抜け
大腸兪陥凹
左次髎つまり

・・瘀血
右側の卵巣に内膜症、左側の卵巣には膿腫がある。
虫垂炎の切除後寒いと傷跡が痛むことがある
皮膚の色味が少し黒い とくに末端が暗い
小腹急結右あり

・・気虚
脉診 全体に輪郭があまい 左全体に浮位が固い

舌診 淡紅から淡白 歯痕あり 胖嫩

・病因病理

主訴の一つである肩こりからおこる頭痛は、35才頃からひどくなっている。

疲れやすく感じることが多くなり、それにつれて腰痛も感じることが多くなっている。

これは35才の頃に腎気が落ちたために、上焦では肝鬱が強くなりがちになっている 可能性をしめしている。また目の奥の痛みまで生じていることから、 見ると言うことのために強く目を凝らさなければならなくなっており、 腎気の弱り、強い肝鬱というだけではなく、全身の気虚があるために より症状が強くなっているのではないかと思われる。

1年程前に虫垂炎の切除をし食事や間食をやめて体重が4キロ程低下している。

脾気が救われ、内湿がさばかれた可能性もあるが、身長が163センチであり体重が 46キロまで低下したというのはBMIで17.31でありかなりの痩せとなっている。

このときの、その他の体調に対する記憶があいまいなので評価が難しい。

問診では脾気の問題が出現していないが、初診にて玄米を白米にかえるように アドバイスしたところ便がすっきりでるようになっていることから、 脾気の弱りが少しあったのではないかと思われる。

また列缺の陰りや肺兪の陥凹や上背部の筋張りも多く肺気の弱り困窮が観察される。

その上、脈の輪郭の甘さ、舌の歯痕胖嫩よりも全身の気虚が伺える。

全身の気虚があるため、上焦には症状としては肩こりからの目の奥の痛み、上背部の筋張りという気虚肝鬱を生じやすい。そして下焦においては小腹急結、内膜症、膿腫など瘀血を生じやすくもなっている。また皮膚の色味が少し黒く末端が暗いことは、気血の巡りの悪さ、瘀血を生じやすい下地を示しているのではないかと思われる。

半年程前に仕事をやめ身体が楽になり腎気が救われ、肩こりからおこる頭痛の頻度が減っている、上焦での強い肝鬱は腎気が救われることで改善する可能性を示している。

・弁証論治

弁証:腎虚を中心とする気虚瘀血

論治:益気補腎 活血化瘀

・治療指針

肺、脾、腎ともにに弱りがあり、全身の気虚が明瞭である。まず第一に中心の課題である腎気からアプローチし、全身の補気としていく。これで腎気がたちにくければ、肺脾から 手を入れてく。瘀血そのものは現時点で問題となっていないので、直接的なアプローチはせずに、気虚を救うことで活血化瘀していく。

・生活提言

妊娠には、妊娠するための身体作り、妊娠を継続させるための身体作りが大切です。 食生活を大事にし、仕事などを調整し、無理のない生活をなさっていると思います。

お話しを候い、お身体の状態を脈、舌、腹、背中、手足の経穴などから観察しますと、 まず第一に、身体全体の気虚であることがわかります。気虚というのは、全身にパワーが足りないということです。ここに○○さんのお部屋があるとします。お部屋の灯りが40ワットの裸電球1個だけしかついていないというイメージです。40ワットの灯りがひとつだけなので、ちょっと薄暗いですし、どこかで作業しようとすると、一つに集中させる必要が出てきます。これは手芸やパソコンをすると肩こりがひどくなり目の奥の頭痛がしてくるということです。全身の弱さがあるので、パソコンや手芸をなしとげるには、肩や目に生命力を集中しないとできないのです。そしてこの一生懸命に集中するということが肩こりや目の奥の痛みになります。

肩こりや目の奥の痛み自体が問題ではなく、何かをしようとすると、そこまで集中しなければできない『全身のパワー不足=気虚』が問題なのです。

この全身の気虚は、骨盤内臓器においては、巡りの悪さを引き起こし、血の流れが滞りがちになり、内膜症や膿腫、そして妊娠しにくいという状況にもなっていきます。

東洋医学の世界では、肝心脾肺腎という5つの臓器から生命を考えていきます。

全身の気虚を救うためには、身体の表面上部を主る肺、胃腸を主る脾、土台の力を主る腎から考えていきます。今回はまず第一に腎から考えることが大切だと思われます。 生命の土台の力をつけ、全身の気虚を救い、体調をよりよくして妊娠に向けた身体作りをしていきましょう。もしこれで不足するようであれば肺、脾からのアプローチも考えていきます。

気虚気味の方は生命力をつけることがとても大切です。
1)睡眠をしっかりとること
2)お食事を丁寧にしていくこと
3)毎日の自宅施灸をしていくこと
などが大切です。

妊娠に向けての具体的なアドバイスとしては上記に加え
4)体重をBMIで18.5以上にしておくおと。
5)年齢要因(現在38才)を加味し、体外受精への挑戦は、あまり時間をあけず、
  身体作りと併行しておこなっていくこと。
6)血流をよくするために、休養と、ウオーキングなどの軽い運動を行うこと。
7)妊娠したら、初期の段階でしっかりと血流をあげるような対策をしていくこと。

頑張って行きましょう!

・治療経過

ビッグママ治療室初診

1ヶ月後 アドバイス通りに、玄米から白米に変えて、便がすっきりと出る様になった。
  タンパク質も意識して多めにとるようにしている。

4ヶ月後 
  体重が増え、BMIが18から18.5になった
  体外受精ー胚移植 一つ移植、もうひとつは凍結出来ず
  5w 胎嚢が見えたが、小さい
  6-7w やはり小さい 鍼灸治療頻度をあげ、自宅の施灸も増やす
  8w 大きさが追いついてきたと言われた
  13w 胎児ドックで、臍帯血の血流があまりよくないと言われた。
     妊娠後期の高血圧の可能性を指摘された
  29w 検診で尿糖がひっかかるも、ok。

39才にて無事に3000グラムオーバーのベビちゃんを安産にて出産。
血圧も高血圧にならずにすんだ。