弁証論治:

0168:二人目不妊三年目の弁証論治

症例集→二人目不妊、フーナーテスト良好でも妊娠しない(35歳出産)【case:0168】

・問診

34才 女性 夫 子供(4才)148㎝ 45キロ

主訴 不妊 冷え イライラ

3年ほど妊娠出来ずにいる。

イライラは産後の方が強く、排卵期と生理前に強くなる。

生理前の頭痛も1年半前に復職してから気になる様になった。側頭部や前。 

・・普段の状態について

季節の変わり目、夕方に体調が悪化

年に2,3回風邪を引く(昔からこれぐらい)風邪を引くと、鼻水、喉痛、前頭部痛

食欲は普通、規則的、空腹感がある、美味しい、腹脹胸焼けはない

好き嫌いはない。間食は毎日(出産の前後から)

水分600cc 牛乳、麦茶、時々ビール 喉が渇くこと、違和感はない

飲酒は月に4,5回、たばこは吸わない

大便は2日に1回、時々張って辛い 昔からで状態はかわらない

時々出切らない感じがするが、バナナ状でこぶし大、付着することは滅多にない

小便は1日5回、残尿感、尿切れ、夜間尿、などない。

22時に寝て6時におきる(寝ないとダメ)

昔から、寝つきがよく、眠りは浅く、寝起きが悪い。

翌日に疲れが残ることが時々

・・婦人科の状況について

初経11才 最近親指大の塊が混じる

生理の前7日ゴロから、胸の張り、下腹の痛み、イライラ

排卵期に頭痛、イライラ

生理になると症状は納まり、生理痛はない。

子供は正規産3000グラムオーバーで出産

出産して生理痛が軽くなった、産後疲れやすくなった。

第一子は結婚後すぐに出来たが、第二子は3年たっても出来ない。

病院でタイミング指導してもらったが、そういうことではないと気がついた。

・時系列の問診

30才(4年前) 第一子出産
 産後1年ほどして生理が始まった。
 生理に関連して排卵期と生理前にイライラが強くなった
 産後1年半ほどから妊娠希望

32才(1年半前) 仕事に復帰(2年半ほど仕事を休んだ)
  生理前の頭痛(側頭部や前)が始まる

34才 (1ヶ月前)病院にて検査、フーナーテストなど良好

34才 ビッグママ治療室受診

・体表観察

・・舌診
やや胖嫩 
舌裏怒脹なし 
淡紅から淡白

・・脉診
左尺位やや弦

・・腹診
左脾募ややあり
上脘冷え
中脘 汗
臍 引いてくる
気海抜けきつい
左大巨 冷え
関元 抜け
左小腹急結あり

・・経穴診
両列缺こそげ
左 太淵腫れ、
左合谷 冷え
左外関、陽池 ややゆるみ、冷え
左後谿冷え
左公孫陥凹
左三陰交 こそげ
復溜冷え
陰陵泉突っ張り 
曲泉ゆるみ

・・背候診
大椎 熱感
肩上部のライン 筋肉が突っ張り 細絡あり
身柱発汗、
肺兪 発汗

脾兪 抜け陥凹
三焦兪 抜け陥凹(左三焦兪 トップ)
右腎兪 亀裂
右大腸兪冷え
腰椎3番を中心として督脉の命門から上仙まで冷え

・五臓の弁別

・・肝

産後にイライラが強くなった(排卵期と生理前に強い)
復職してから生理前の頭痛(側頭部や前)
生理に親指大の塊が混じる(最近)
生理前7日ごろから胸の張り、下腹の痛み、イライラ
産後生理痛が軽くなる
左小腹急結あり
曲泉 ゆるみ

・・心

左後谿 冷え

・・脾

季節の変わり目に体調悪化
出産の前後から間食を毎日
時々便が出きらない感じがする
左脾募ややあり
上脘冷え、中脘汗 臍引いてくる 気海抜けきつい
左公孫 陥凹
左三陰交 こそげ
陰陵泉 突っ張り
脾兪 抜け陥凹

・・肺

左太淵 腫れ
左合谷 冷え
大椎 熱感
肩上部のライン 筋肉が突っ張りっさいらくあり
身柱、肺兪発汗

・・腎

夕方に体調悪化
3年ほど妊娠出来ない
産後にイライラが始まった(排卵期と生理前に強い)
復職してから生理前の頭痛(側頭部や前)
イライラ頭痛は排卵期と生理前に多く、頭痛の部位は前頭部と側頭部
睡眠はしっかり取らないとダメ、翌日疲れが残ることが時々
生理前7日ごろから胸の張り、下腹の痛み、イライラ
産後生理痛が軽くなるが、疲れやすくなった

左の尺、やや弦
左大巨 抜け
関元 抜け
左外関、陽池 ややゆるみ、冷え
復溜 冷え
三焦兪 抜け陥凹(左三焦兪 トップ)
右大腸兪 冷え
腰椎3番を中心として督脉の命門から上仙まで冷え

・・気虚

舌のやや胖嫩
両列缺 こそげ

・・風邪の内陥

肺兪発汗 
身柱発汗

・病因病理

第一子を4年ほど前に出産、産後1年半から妊娠を希望するもいまだ妊娠が成立しない。

産後に疲れやすいことと、イライラしやすいことを感じ始め、とくに、生理が始まってからは、生理痛の軽減は感じるものの排卵期と生理前にイライラを強く感じる様になっている。このことにより、出産によって少し腎気が落ち疲れやすくなり、また腎気の支えがないため肝鬱も生じやすく、素体に負担がかかる排卵期や生理前にイライラしやすくなったのではないかと思われる。

仕事を復帰してからは、より肝鬱が強くなり生理前には頭痛がくわわっており、 最近では生理に親指大の塊が混じるなど、腎気がなかなか補われず、疲労などの回復が出来ないまま、長きにわたる肝鬱のため、下焦は瘀血も生じ始め、より妊娠しにくくなっているのではないかと思われる。

便通、睡眠などに出産前後での大きな変化はないので、基本的な素体としてはさほど虚損が進んでいるとは考えないが、出産によって腎気が多少落ちたことが補われずに継続してしまって、徐々に腎虚、肝鬱の状態が広がっているのではないかと思われる。

初診時の体表観察でも、三焦兪のぬけ、督脉の上仙から命門にかけての明瞭に冷えなど、腎気の弱さが明瞭であり、また上焦の気滞も大椎の熱感、肩上部の凝りなどで明瞭である(ご本人の目を見開き、しっかりとした意識をもった態度も肝気の張りを感じさせる)。また、肺兪身柱の発汗があり、いつごろからは判然としないが、風邪が内陥しているため、より上焦の気滞を強くし、下焦への負担となっていると思われる。

・弁証論治

弁証 風邪の内陥 腎虚肝鬱

論治 疎風散寒  益気補腎 疏肝理気

・治療指針

まず第一に風邪の内陥を取り去る。 腎気をたて、肝気を少しさばき、全体の調和をとり妊娠を狙う

・治療経過

初診後一ヶ月経過(5診後)それまで排卵検査薬がわかりずらかったのが、はっきりわかった。

7診後 妊娠した

初診

百会 左外関+ミニ灸 三陰交(灸頭鍼+ミニ灸) 肺兪温灸 身柱(ミニ灸) 大腸兪温灸 右の脾兪、左三焦兪、次髎

5診

排卵検査薬がわかりやすくくっきり出た(いままでわかりにくかった) 三陰交(+ミニ灸かける2) 左外関 肺兪温灸 左胃兪 右の三焦兪 次髎(灸頭鍼)

6診 

妊娠したかもしれない。 腹部棒灸 左三焦兪 異議腎兪 次髎灸頭鍼

10診

妊娠10w

つわりはよい。大きいクリニックにうつり予定日が訂正された

腹部棒灸 左胃兪 右脾兪 三焦兪 次髎(灸頭鍼)

出産予定日同理に病院について3時間で出産。3500グラム弱の男の子。よく寝てくれるので とても育児が楽。

無事の出産、おめでとうございます。