弁証論治:

0170:月の沙漠が謳いたい弁証論治

症例集→妊娠中の辛い肩こり頭痛なんとかして!(34歳出産)【case:0170】

・問診

この患者さん、かなり背部腧穴の状態がよくなり、頭痛肩こりも驚くほどよくなっています。

基本的に妊娠中からの施術はお断りしていますが、今回はご本人の希望で始まりました。

ひどい寒がりで、治療を受けていても寒い寒いと 強く訴える人だったのですが、このところそういったことを訴えなくなったので、その点を 伺うと、そういえば最近全く寒くないと。

上焦の経穴や肺気を直接的に使わずに、風邪の内陥がこんな形で自然に抜けていくのを みたのは初めてかもと思いました。妊婦さんだったのでシンプルな治療となったので、 いい勉強になりました。

34才女性 主婦 現在妊娠16週

主訴 肩こり、肩こりからの頭痛(R

体重47キロ(妊娠してやせてしまった。妊娠前は53キロ)身長159センチ

頭痛の部位は後頭部と前頭部 肩こりは肩上部

30才少し前からずっと続く。以前は1-2ヶ月から一回程度であり、 薬を飲んだりひどくなる前にマッサージをしてしのいでいたが、妊娠してからは 薬も飲めず、とても肩こりと頭痛がひどくてつらい。 つわりのせいで体調も悪くて体重も6キロ減ってしまった。

疲れたときや季節の変わり目に、雨の日に起こる

現在では常時つらく、とくに夕方や深夜はつらい

他に、冷え性や血液循環の悪さを直したい。 

今回は妊娠11週ゴロからとくにつらくなった。つわりが始まった頃から体調がより 悪化し、運動できずに肩が凝りより悪化。自分では運動不足、姿勢の悪さ、身体の冷えが原因ではないかと思う。

いまは特に首の後ろが痛い

今回(妊娠してからの頭痛肩こり)と同時に出てきたのは、食欲不振、便秘、下痢、体重の減少、不眠多夢、朝起きがたい。

いつもはマッサージなどを、1-2週間に一度してもらい、一時的にせよ体調が回復する。

普段の状態について

春夏秋暖房で調子がよい、クーラー、冬はダメ。

夕方がダメ 朝昼がよい

入浴中はよいが、入浴後は疲れると吐き気が強くなる。(いまはシャワーのみ)

食欲は普通、規則的、食べるのはおそい、よく噛む

空腹感はある。食後の腹脹、胸焼けはめったにない。

パンやバナナをよくたべる、間食はしない。

つわりのための喉の違和感がある。

妊娠してから便秘気味で2日に1回出る程度。

軟便、下痢症、付着することは時々。

小便は1日5回、時々尿切れが悪い、色夜間尿などなし、寝つきはよく、多夢、寝起きは普通。12時に寝て9時におきる。翌日に疲れが残ることは毎日

生理の状態と頭痛肩こりの関連はない

生理は11才、26日周期4日間。生理前の7日目ゴロからイライラ、生理がくるとOK

2センチ程度の子宮筋腫があるといわれているが、妊娠には差し支えない状態

・時系列の問診

20代後半から 肩こり、頭痛(右<左)がはじまる 市販薬とマッサージなどでしのいですごしていた 34才 妊娠  つわりで体重が6キロ減  薬が飲めなくなって、非常に肩こり頭痛がつらい。  妊娠11週ごろから特に辛い ・体表観察 ・・脉診 やや数脈  左関上糸がわかれている感じ ・・舌診 色褪 歯痕胖嫩  舌裏怒脹きつい ・・腹診 臍周やや冷え ・・経穴診 両列缺 明瞭なこそげ 右の合谷 ややこそげ 右の外関陥凹、 右の陽池 冷えこそげ 右の神門腫れ 両霊道こそげ 左湧泉ひえ 両三陰交 こそげ 右足三里 こそげ ・・背候診 両大杼 冷え陥凹 右 の肺兪 陥凹発汗 両脾兪 陥凹大きい 接脊 陥凹が大きくゆるみ 左胃兪、外に流れて、胃兪そのものはじゃらじゃらと割れた筋状 両三焦兪 非常に大きなこそげ 骨盤細絡あり。 ・五臓の弁別 ・・肝 妊娠してつわりがひどく体重が53キロから47キロになった 肩こりがよくなると頭痛がひどくなる マッサージをしてもらうと少し頭痛がよい つわりのために喉の違和感がある 生理の状況と頭痛肩こりの関連はない 生理前にイライラ 2㎝程度の子宮筋腫があるといわれている。 左関上 糸がわかれている感じ 舌裏怒脹きつい 骨盤部細絡あり ・・心 右神門腫れ 両霊道 こそげ ・・脾 妊娠してつわりがひどく体重が53キロから47キロになった 頭痛の部位は前頭部と後頭部 季節の変わり目、雨の日に症状が出現 妊娠してから便秘気味 臍周やや冷え 両三陰交 非常に大きなこそげ ・・肺 頭痛の部位は前頭部と後頭部 いまは特に首の後ろが辛い 両列缺 明瞭なこそげ 左の合谷 ややこそげ ・・腎 疲労で頭痛肩こり 夕方や深夜に辛い 暖房で調子がよい 冬はダメ、クーラーはダメ 入浴後に疲れると吐き気が強くなる(現在) 尿切れが時々悪い 翌日に疲れが残ることは毎日 舌 色褪 右外関 陥凹 右陽池冷えこそげ 左湧泉 冷え ・・気虚 歯痕胖嫩  臍周 やや冷え 両列缺 明瞭なこそげ ・病因病理 現在妊娠16週、妊娠前から発症している頭痛肩こりがより悪化しているという状態である。 この肩こり頭痛は、20代後半からはじまり、後頭部と、前頭部に痛みがある。 ご本人としては肩こりが強くなると頭痛が発症するという感じがしている。 生理前にはイライラしたりするが頭痛肩こりは連動していない。 体表観察からは風邪の内陥がうかがわれ、生理周期に連動していないということより肝鬱そのものからの頭痛というよりも、、頭痛の部位が後頭部が強く両列缺の明瞭なこそげ、合谷のこそげ、両大杼の冷え、肺兪の大きな陥凹から風邪の内陥が発症のきっかけにあり、現在もこの頭痛肩こりに大きな影響を与えていると思われる。 妊娠によるつわりが始まった頃より、食欲不振、便秘と下痢、不眠、多夢、朝起きがたいという状況となり体調全体が悪化し体重の減少も6キロとかなり強くおこり、特に妊娠11週ゴロから主訴である頭痛肩こりがつよくなっている。 妊娠によって腎気に負担がかかった状態であるのでつわりによる気逆がより強くなってしまい腎気にはより負担となり、不眠多夢朝起きがたい状況や、腎気のバックアップが減ったために、脾気も低下し便秘と下痢もおき、肝気犯胃によって食欲が低下したため、体重も大きく減少し。脾気腎気ともに支えが不足しがちになったために、主訴である頭痛や肩こりが悪化したものと思われる。 普段であれば、マッサージや薬物などによって対処療法的に、上焦の鬱滞をとり気をめぐらせることでなんとかしのいでいたのではないかと思われるが、妊娠中であるので、対処療法ができず、上焦の強い鬱滞がより悪循環におちいり腎気がより虚弱に成り、入浴でさえも疲労となり気逆がつよくなり肝気犯胃となって吐き気がつよくなってしまっている。 ・弁証論治 弁証:風邪の内陥 脾腎両虚 気逆肝鬱 論治:補脾補腎 ・治療指針 妊娠中なので、肺気への直接的なアプローチは下向きのベクトルを強くしてしまう可能性をはらんでいるので避けたい。脾気、腎気をあげることを 中心とする。そして風邪の内陥が自然に取り去られ、気逆が納まることを期待する。 ・治療経過 初診時に肩こり頭痛を10としたとき、 6診(14日後)肩こりは6-5(妊娠前と同じぐらい)    頭痛は0-1(妊娠前よりもよい) 15診後  肩こり 最初は10でいまは5 妊娠前よりも軽い 20診後 (妊娠28w)全体に調子がよく、妊娠前よりも身体そのものの調子がよい。 25診後(妊娠32w)強い冷え性だったが、最近冷えそのものに強くなった感じがする。  (治療院の施術中にいつもひどい寒さを訴えていたが、訴えなくなった) 妊娠39w 無事に出産 無事に男児を安産にて出産 おめでとうございます。