弁証論治:

0033:低血糖・生理不順・不妊の弁証論治

・問診

初診より2年半、無事に3000グラムオーバーの男児を出産
(治療経過詳細は時系列に記す)
おめでとうございます。
ご本人の、食事療法を中心とする、真摯な取り組みが、体調をしっかりと管理し、無事な妊娠、出産につながったものと思われます。
ご自身の努力で自分の人生を切り開かれていった姿に心打たれました。

35歳 女性 身長157センチ体重48キロ

主訴 :緊張のための生理不順

他に治していきたい症状:
低血糖症、高温期になるとうつっぽくなったりフラフラする

【主訴について】

20歳頃から徐々におこり、とくに季節の変わり目と、イライラしたときにおこる。
緊張状態が続くと生理不順になる。
この二年ぐらいで生理不順は治ってきているが、今年一月から不妊治療をはじめたら
緊張のためか卵が育ちにくくなった。
自分では子供が授かるか不安になったためだと思う。
ふらつきの症状が出てきた

【低血糖症について】

低血糖症は、

1、18才位の時から始まった。

その時は、低血糖症だとはわからなかった。お腹がすきすぎると、ふらふらして、手が震えて、動悸も少しあった。でも、その頃は、たまにしか起こらなかった。27才位から、少し頻繁に起きるようになり、流産後より、2・3日に一回のペースで、症状が出るようになった。

2、検査を受けるに至った経緯、

食後3時間程で、お腹がすいてくるようになり、すいてきたなぁと思った頃には、手から力が抜けてくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、ドキドキして情緒不安定になるんです。アメをなめたりして、対処。しかし、アメぐらいでは、またすぐに、お腹がすき始めて、また、情緒不安定になる。手が震えたり、情緒不安定になるのが辛くて、低血糖症と、きちんと向き合おうと思い、検査を受けました。

(食事療法をはじめてから改善していること。)

排便が毎日ある。
肌が、以前より、しっとりしてきた。
朝の目覚めが良い。
スタミナがついた。
食後4時間は、お腹がすかなくなった。
気持ちが安定してきた。
高温期と低温期の差がなくなり、高温期は体温が上がるから、
  体が少し温かくなる位。心身共に良好。

(食事療法と排便の変化について)
残便感は食事療法の前から少しあったが、今程ではなかった。
お腹のはりも、食事療法の前から少しあったが、今程では、なかった。
今は、朝、2回、けっこう出るので、出て30分位は、すっきり感があるのですが、その後、残便感があったり、張ったり、お腹がゴロゴロしたり、ガスが出る。
お腹の張りは上腹部。胃やみぞおちを押すと、固くて、張っている感じがします。

食後にお腹が張ったり胸焼けすることは食事療法を始める2年位前から、たまにありましたが、今程の張りではなかった。胸焼けは、脂っこいものを沢山食べた時位にしかおきなかったが、いまはよくおきる。

(運動と体力の変化、低血糖症について)

身体作りを始めても、低血糖症頻度は変わらない。
10キロ走った後は、食欲がなく、食べなくても低血糖には、ならなかった。

運動をして体力がついたと思うのは、あまり、休憩や睡眠を取らなくても大丈夫になったこと。
マラソンを始める前は、疲れやすく、仕事から帰ってきたら、休憩を必ずしてましたし、友達と会ったり、会社の飲み会があると、次の日は半日は寝ていた。それが、マラソン大会後は、睡眠は5.6時間で大丈夫で、仕事から帰ってきても、休憩なしに動けるようになりました。なので、以前より体力がついたと感じました。

(冷えについて)

幼少期から冷え性で手・足・腰が冷えていた。
マラソン10kg走れるようになったあたりから、手足の冷えは気にならなくなった。
運動をしている時は、冷えていないが、運動を終えて、汗をびっしょり
かいた後は、氷のように、体が冷たくなる。
運動し始めた頃は、汗をかいて、汗がひいたら、体が冷たくなるので、よくお腹をこわしていた。
それは、手足よりも、特にお腹が冷たくなってました。

いまは、氷のように冷たくなる事も、お腹をこわす事もない。しかし前より激しく体を動かしてないので、前のように、体を酷使する程、動いたら、どうなるか分からない。

腰は今も冷えている。毎日、腰にカイロを貼って過ごしています。腰は、スースーする感じで冷えます。食事療法を開始して初めての冬だが、腰の冷えが気になるだけでいつもより楽である。

【ふだんの状態について】

季節の変わり目には風邪を引きそうになり、喉が痛く疲れやすくなる。

年に一回ぐらい風邪を引く、くしゃみ、喉の痛み、お腹の膨満感

お腹がすきすぎると食べても空腹感が和らがない

20台から身体の芯から冷えた感じがあり、冬は沢山のカイロが手放せない。

(食事療法をしている今年は少しましな気がする)

今年8月よりの食事療法のため、玄米を除く糖質、炭水化物、カフェイン、アルコールは 摂取していない

食事時間は規則的、30分以上かけ、食べるのは遅い、空腹感はいつもあり、
よく噛んでいつもおいしい。お腹が張ったり胸焼けすることはよくある。
血糖が上がるときに喉が渇く。1日1.5リットルの水を飲む。
食後は血糖値があがるために喉が渇く。

便通は1日二回、食事療法をするまえは、3日に1度で薬を使っていた。
時々腹がはる、便秘薬を服用し便が降りお腹がすっきりして快調になる。
便の出きらない感じはいつもある、バナナ状、便が付着することもいつもある。

小便は1日八回、残尿感などない。
28歳で結婚してから夜間排尿に夜中の三時頃起きる。

寝付きはよく、眠りは浅く、寝起きは悪い
翌日に疲れが残ることはめったにない。

【婦人科について】

低温期は心身ともに充実
高温期は心身ともに不調(食事療法をしてから、さほどでもなくなった)
緊張していると生理の量が少ない
生理は30日から34日六日間
不規則で不安定遅れる
生理前にイライラ、疲れ、鬱っぽさがある。
生理の量は少ないが、ホルモン剤で卵を育てた周期は普通の出血量がある。
不妊の大きな問題はない。
直ぐにでも体外受精にステップアップしたいが、低血糖症と、高温期のフラフラ
うつの症状があるので、ためらっている。

生理不順は、今年1月から不妊治療を始めるまえは、30~34日周期で、生理があった。
不妊治療をはじめたら、精神的に不安定になり、なかなか卵が育たなくなった。

・時系列の問診

18歳低血糖症の症状である、お腹がすきすぎるとフラフラなどが始まる。
たまにしかおきなかった。
20歳頃、仕事などで精神的なストレスがあり、生理不順がはじまった。
20代後半1年の半分は風邪を引いていた、30歳に入って職場をやめたら治った
27歳低血糖症の頻度が少し高くなってきた

28歳結婚
29歳レディースクリニックなどにてタイミング治療
31歳妊娠六週にて流産
32歳流産後、低血糖症の頻度が2,3日に一回のペースになってしまった。
(生理不順はおさまって30日周期ぐらいで生理はきていた)
33歳マラソンに備えて身体作りを始める
筋トレや、パワーヨガ(筋トレの要素を含んだヨガ)、
ランニングマシン(少なくても5キロ)を、一週間に一回はしていた。
低血糖の頻度変わらず2.3日に1度
33歳マラソン10kg完走低血糖の頻度変わらず

34歳
1月から不妊治療をはじめたら生理不順になった
8月より低血糖症のための食事療法をはじめる
便通が改善される(残便感はある)、低血糖の頻度納まる。
運動は週一で、ピラティスをし、たまに、筋トレ、ヨガ、ランニングを3キロ位し、
毎日、トータル1時間は、歩く
9月ビッグママ治療室受診

・体表観察

・・脉診
全体に輪郭が甘く脉幅がない
右関上中位で固い

・・舌診
歯痕あり、戦あり、舌裏怒脹あり

・・腹診
肝の相火左あり、裏の肝の相火左右ともアリ
中脘奥に冷え、
臍冷え

・・経穴診
両目窓熱感
左右列缺陰り右>左右は陥凹もあり
左神門ややはれ
右内関陥凹
右後谿陥凹
右外関やや冷え
左右陽池冷え
右足三里やや陥凹
左公孫やや陥凹冷え
右三陰交ややこそげ
左右復溜冷え

・・背候診
上背部少し細絡あり
左風門発汗陥凹
右肺兪発汗陥凹
左胃兪陥凹
左三焦兪陥凹
左腎兪陥凹広い
左右大腸兪陥凹
右次髎つまり

・五臓の弁別

・・肝
緊張のための生理不順はイライラ緊張したときにおこる。
高温期になるとうつっぽくなったりフラフラする(食事療法してから良好)
食後3時間程で、お腹がすいてくるようになり、すいてきたなぁと思った頃には、手から
力が抜け  てくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、
   ドキドキして情緒不安定になる(食事療法してから良好)

寝付きはよく、眠りは浅く、寝起きは悪い
緊張していると生理の量が少ない
生理前にイライラ、疲れ、鬱っぽさがある(食事療法してから良好)
不妊治療をはじめたら、精神的に不安定になり、なかなか卵が育たなくなた。
舌:戦あり、舌裏怒脹あり
両目窓熱感
右次髎つまり
肝の相火左あり、裏の肝の相火左右ともアリ
食事療法をして、気持ちが安定してきた。

・・心
左神門ややはれ
右内関陥凹
右後谿陥凹
手から力が抜けてくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、ドキドキして情緒不安定になる
お腹の張りは上腹部。胃やみぞおちを押すと、固くて、張っている感じがする(患者さん談)。

・・脾
緊張のための生理不順は季節の変わり目におこる
高温期になるとうつっぽくなったりフラフラする(食事療法してから良好)
18歳頃からお腹がすきすぎるとフラフラの症状がおきる
食後3時間程で、お腹がすいてくるようになり、すいてきたなぁと思った頃には、手から
力が抜け  てくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、
   ドキドキして情緒不安定になる(食事療法してから良好)
食事療法をして、排便が毎日あり気持ちが安定してきた。
食事療法をして、残便感がきつくなり、お腹の張り、胸焼けもきつくなった。
お腹の張りは上腹部、胃やみぞおちを押すと固く張っている。
食後は喉が渇く(血糖値があがるためとご本人談)
脉:全体に輪郭が甘く脉幅がない、右関上中位で固い

中脘奥に冷え、
臍冷え
右足三里やや陥凹
左公孫やや陥凹冷え
右三陰交ややこそげ
左胃兪陥凹

食事療法をして肌が、以前より、しっとりしてきた。(肌肉が充実した可能性)
食事療法をして、食後4時間は、お腹がすかなくなった。(脾の陰気が充実した可能性)
運動し始めた頃は、汗をかいて、汗がひいたら、体が冷たくなるので、よくお腹をこわしていた。
 それは、手足よりも、特にお腹が冷たくなってました。(脾の陽気が奪われた可能性)

・・肺
20代後半、1年の半分は風邪を引いていた
左右列缺陰り右>左 右は陥凹もあり
左風門発汗陥凹
右肺兪 発汗陥凹
左右大腸兪陥凹

・・腎
高温期になるとうつっぽくなったりフラフラする(食事療法してから良好)
31歳流産後低血糖の症状の頻度が高くなってきた
食後3時間程で、お腹がすいてくるようになり、すいてきたなぁと思った頃には、手から
力が抜け  てくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、    ドキドキして情緒不安定になる(食事療法してから良好)
寝付きはよく、眠りは浅く、寝起きは悪い
生理前にイライラ、疲れ、鬱っぽさがある。(食事療法してから良好)

舌:歯痕あり、戦あり、舌裏怒脹あり
肝の相火左あり、裏の肝の相火左右ともアリ
右外関やや冷え
左右陽池冷え
左右復溜冷え
左三焦兪陥凹
左腎兪陥凹広い
食事療法をしてから、朝の目覚めが良い。(腎の陽気がたった可能性)
幼少期から冷え性で手・足・腰が冷えていた。
以前よりも冷えはよいが、腰はすーすーする。

・・気虚
脉:全体に輪郭が甘く脉幅がない、右関上中位で固い
舌:歯痕あり
運動をしている時は、冷えていないが、運動を終えて、汗をびっしょり
  かいた後は、氷のように、体が冷たくなる。
食後3時間程で、お腹がすいてくるようになり、すいてきたなぁと思った頃には、手から力が抜けてくる感覚がして、しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、ドキドキして情緒不安定になる

・病因病理

赤ちゃんを希望なさっているご本人の主訴は、生理不順であり、イライラ不安など精神的な不調と強く連動している。主訴は20代初めのころより、続いており、精神的に緊張すると生理がおくれる、生理の量自体も少なくなるという状態である。しかしながら、ホルモン治療を受けると生理もくるし、生理の血量も戻り、31歳の時には妊娠をしている。

つまり、子宮を中心とした任衝脉は、肝気の問題に直接的に大きく左右される状態ではありながらも、精神的な影響がない状態ならば、それなりの器を保ち継続できる状態であり、この31歳の流産後、低血糖の頻度が非常にあがってしまうが、生理自体は生理不順もなく順調にきている。

低血糖の症状は、食後三時間でお腹がすいてきてしまい、すいてきたと思うと手から力が抜けて、 しばらくすると、手が震えてきて、汗ばんできて、ドキドキして情緒不安定になるということである。

食後三時間でお腹がすいてきたという感覚は、胃に熱が生じ始めているということである。

生理的な範囲であれば、空腹を感じても、全身状態の変化とまではいたらないはずである。

胃熱が生じるとすぐに手から力が抜け、しばらくすると手が震えるということは、胃熱を生じ生命力が胃腸に集まると逆に末端では気が薄くなってしまい力が抜け、そして今度は薄くなってしまった気を補うため手先に気が急に集まり震え汗ばんでしまうという状況になっている。また身体の中心に生じた胃熱は心をつきドキドキとさせている。

これらは、空腹で胃熱が生じるという当たり前の生命力のありようを、脾胃の場だけで受け止めることができず、上半身を中心に大きな気の動きを伴いながら経過するということである。胃熱が納まるように食べ物をお腹にいれれば、症状は治まるが、場合によっては、また大きな全身の気の動きを伴い、ご本人を不安にさせ情緒不安定にさせているのであろう。

この状況は、18歳ぐらいから頻度は少ないもののはじまり、31歳の流産後より、頻度が高くなっている。もともと身体の芯から冷えているというような腎が陽気を中心に不足しがちな素体であり、精神的な影響が生理の状況に直結するというような肝の陰陽ともに器の小ささも感じさせる素体である。不安定ながらも、それなりの器の大きさをもっていた腎気が、流産によりひとつ生命力をおとしたことによって、支えとしての力を失い、低血糖の症状を強くしたと考えられる。

食事療法により、カフェイン、炭水化物の摂取をやめ、玄米に代え、タンパク質を積極的にとることにより、食事をして三時間ほどたったときに一気におこっていた胃熱から始まる全身症状はおこらなくなった。しなしながら腹脹がきつくなり、残便感がひどくなるなどの問題は却って出現し食事療法により脾気が落ちていることは明瞭である。

つまり、この食事療法は胃熱を生じさせにくい食事であるために、胃熱から始まる症状は改善した。しかしながら、便が残便感を伴い、腹脹の問題はきつくなるというように、明瞭に脾気には負担がかかってるものであると考えられる。便通がよくついているのは、胃熱を起こさないと言うこと自体が、冷えの問題となり、冷えくだしの様な状態で便通がついている可能性が考えられる。

脾気の負担が明瞭で存る以上、この脾気への負担が長期的に続けば、受け止める器としての腎気がさらに小さくなる可能性がある。

冷えの問題は、幼少期より手・足・腰が冷えていたというように、素体として強い腎の陽虚を思わせる冷え方である。ご本人は、10キロマラソンを目指す運動により、手足の冷えが改善され、体力がついたと考えている。しかしながらその運動は、汗をかき、汗がひいたら、体が冷たく氷のように冷えた、よくお腹をこわしていたということから、腎気を養い、陽気を養っていくこにより、身体そのものが養われたことにより体力がついたのではなく、非常に強い運動で強制的に発汗を促し、全身の陽気が一時的に奪われてしまうような状態を作りながら体表で発汗をし肝鬱を晴らしていたのではないかと考えられる。

平素からある強い肝鬱は腎気へ大きな負担となっており、ご本人の日常に大きな負荷となっていたのではないかと考えられる。

その結果、運動で身体を養うことはできなかったけれども、強制的な発汗を伴う運動が強い肝鬱を張らすことになり、肝気の腎気への影響がある程度軽くなったと思われる。そして気血の巡りがよくなり、ご本人が手足末端の冷えが少なくなったと感じたり、対人関係や仕事のときなどに生じる強い肝鬱を弱め、全身への負担が軽くなり、翌日などの疲れが軽減したと感じることとなったと考えられる。それほどまでに肝鬱が強かったということである。

肝の相火、舌に戦、目窓熱感、神門の張れと明瞭な肝鬱。中脘奥、臍、左陽池冷えなど陽虚を思わせる状態が体表からみえるうえに、舌に歯痕、両列缺のかげりなど全身の気虚も明瞭である。

全体として気虚の素体の中、肝鬱は熱をもつほどであるのに、脾胃には明瞭な冷えが存在しているということである。また、手足の三里公孫など脾胃への影響が少なからずみられる。

現在の食事療法が脾気を落としていると考えられるので、中脘奥、臍、左陽池の冷えは食事療法から生じている可能性と、もともとの腎の陽虚気味の素体からの可能性がある。

背部兪穴をみると、脾胃の経穴は意外に平である。この平の状況は生命力の不足のため経穴の反応が出ていないのか、他の臓腑に比べて良い状況なのかは現時点で判断が難しい。

しかしながら左腎兪を中心として三焦兪、大腸兪と陥凹が続き復溜も冷えがあり腎気の弱さは明瞭であることを物語っている。また風門に発汗肺兪の発汗陥凹から風邪の内陥の可能性も考えられ、腎の陽気不足と肝鬱をより強くしている可能性も考えられる。

肝鬱が運動によりコントロールされたことと、精神的な負担がなかったことにより、この2年は生理そのものの周期が狂うことはなく、また現時点での1時間程度の歩行という運動は脾気そのものを助けている可能性も考えられる。しかしながら、流産後に落ちてしまった腎気を養い補うことはできなかったため低血糖の症状がきつくなり、妊娠にいたることができずにいるのだと思われる。また、風邪の内陥が肝鬱、腎の陽気不足へ負担をかけている可能性もある。

・弁証論治

弁証:
風邪の内陥
腎の陽虚を中心とした腎虚
脾虚
論治:
疏風散寒
補腎温養
益気補脾

・治療指針

食事療法により落ちている脾胃の問題は、過渡期的には仕方がないものであっても、長期に続いてけば、また一段と器を小さくしてしまう可能性がある。脾胃の器の安定には脾胃の竈を暖める腎の陽気が不可欠である。腰がすーすーるという状態は、今も継続しており、腎の陽虚は明瞭である。

風邪の内陥が、肝鬱を強めている可能性がある。強い肝鬱は腎気への負担をきつくする。

腎気へと負担になっているものを取り去る。

第一に風邪を取り去る。

第二に現在の食事療法に対応できるように脾胃の器をしっかりと充実させる。

第三に腎の陽気を高め、腎気を流産前の状態まで戻し、妊娠するようにしていく。

・生活提言

血糖値が乱高下してしまう低血糖症の症状と、現時点でどうにか折り合いのつくような状態で落ち着かれていてよかったですね。

ただ、現在の状態は、便通、腹脹の問題から、ご自身が自覚なさっているように非常に胃腸への負担は大きいものとなっています。つまり、この食事療法は、『低血糖症の症状がおきなくしてくれる』ものではありますけど、身体自身を養い症状がでなくなっているのではなく、身体には負担をかけながらも『症状が出ないようにしている』状況であると判断できます。

低血糖症の症状が出ること自体、身体の中に大きな変化(空腹とともに一気に手の力が抜けたり、震えたりんど)を伴いますので、症状がでなくなることも、全身の負担をとるという点からは評価できるものだと思います。ですので、症状が出なくなることを大切にしながらも、胃腸への負担を少しづつ軽減していく必要があります。

このためには、食事内容を少し工夫し、胃の張り残便感が少なくなるようにしていただければと思います。また、胃腸の力自身をアップさせるのも大事です。胃腸を養う経穴等を使って胃腸の状態をよくしていくことも、食事そのものが胃腸への負担とならない手助けとなるでしょう。

運動は、身体を養ってくれるというイメージがありますね。しかし、どんな運動でも身体を養うわけではなく、スポーツ選手が身体を壊してしまっているということもよく聞きます。注意が必要です。

もともと、非常に気の鬱滞(身体の中のストレス状態)が強い方だと思います。このストレス状態の解消に、激しい運動が役に立ったのでしょう。身体の中心が冷えて下痢をするほどの状態でも、体表で発汗して発散するということが、ストレス状態の解消になり、全身の負担をとったことが、ご本人のいわれる『体力がついた』という状況になっているように思えます。

つまり、身体を養うことによって体力がついたのではなくて、全身にとって大きな負担となっていたストレス状態を強制的に発散することが出来たので、楽になったわけです。これほどまでに強いストレス状態があること自体も問題ですが、このやり方は一歩間違えれば、中心の生命力を失います。スポーツ選手が身体を壊すパターンと同じことになってしまいます。

生命力の中心を大事にし身体を養うための運動は、毎日一時間、1万歩程度を目標に歩くことを中心に、足腰が充実するようなイメージでおこなってみてください。『ゆっくり走れば速くなる』という面白い本があります。これはマラソンランナー向けの本ですが、日々ゆっくり走ることで、身体が養われ、東洋医学で言うところの『腎気』がまし、結果としてパワーがつくので『速くなる』ということだと思います。この腎気をつけることがとても大切です。『ゆっくり』ということを心がけて運動してみて下さい。

身体作りの目標としては、低血糖症の症状の状況も含め、流産前ぐらいの身体の状態に戻していくようにしていきましょう。そうすることで、自然と妊娠もやってきてくれるのではと思います。

胃腸の器(脾胃)、生命力の土台の力(腎気)そのものを大きくすることが必要です。 これは、一朝一夕でできることではありませんが、少しづつ、確実に前に進むことの出来る方ですので、きっと上手く経過していけると思います。目標を持ってすすんでいきましょうね。

・その後の経過

34歳

1月 不妊治療をはじめたら生理不順になった

8月 低血糖症のための食事療法をはじめる(溝の口クリニック食事療法)
   便通が改善される(残便感はある)、低血糖の頻度納まる。
   運動は週一で、ピラティスをし、たまに、筋トレ、ヨガ、ランニングを3キロ位
し、
   毎日、トータル1時間は、歩く

9月 ビッグママ治療室受診 週に1回の頻度で鍼灸治療、毎日の自宅施灸

10月 家でお灸をして身体が楽になった感じがする。
   食事療法のサプリメントを半分程度市販のものにする(ここから少しづつ減らす )

11月 お腹の張りが少しよくなってきた
   腰がすうすうするが、よく考えると以前よりはよい
   肉から魚にしたら少しおなかの張りが↓ また1ヶ月前に比べたら
   張って苦しいというい状況が減っている

12月 軽い食事にしたらやはり低血糖の症状も出やすい
   魚中心、炭水化物をやめて、
   残便感の多少あるが便通よく、お腹のはりもない
   玄米でも食後150になるのでやめた

35才

1月 10分程度の運動で血糖値が20下がるのを発見
   炭水化物まったくなし(スーパー糖質制限)
   体温は全体に下がった
   腰のスースー、手足の冷えがなくなった、カイロがいらない
   便通がよい

2月 2ヶ月間完全糖質制限をして、おかしを食べたくなくなった。
   玄米で160-180にあがって、低血糖へすとーんと落ちる
   体調もよく、高血糖もないが、体重低下が激しく(50キロから44キログラム)
   生理が2ヶ月ぐらい来なかった。また炭水化物が食べたくてしょうがなくなり
   大学病院へ糖尿病の検査に行く

3月 血糖値 1時間値で250 2時間で180 食品交換表の食事をはじめる

4月 ベイスンを飲み始める

9月 妊娠ー流産

11月 心身共に落ち着いてきた感じ
   無理をせずに頑張れる感じ、
   以前は「無理」をしていると思わなかったが、無理をしていたのだとわかってきた

12月 温経湯を飲み始める

36才

2月 体調もよくなり体温も上がってきた

3月 今年の花粉は楽 漢方も飲んでいるから?
   食後は下半身もバタバタさせる運動をしている(上半身だけではダメ)

4月 調子はよいが眠いだるいから抜け出せない→それでよいのではと

6月 インシュリンに慣れるために入院

7月 インシュリンは自由度が高く疲れにくい
   糖質制限は、制限が要求され、ガスが出る、お腹がはる

10月 妊娠
   つわりがひどい、食べつわり
   切迫早産、入院
   子宮頚管5センチが3.5センチに。
   退院後もお腹は張りやすく食事、お風呂、30分程度の家事意外は基本ベッドの上
   1日1600Kcal 食品交換表にのっとっての4回食、栄養士さんに相談して
   決めた献立に沿って毎日食べる。

 無事に3000㌘オーバーの男児を出産

出産後6ヶ月で妊娠前+2キロ 

 産後3ヶ月の時の風邪が2ヶ月治らず。少し不安定な体調。
   ここで薬を飲むために母乳をやめたら出なくなり断乳

 授乳中インシュリン2単位 食事制限はなしと言われているが、なるべく
 野菜を多くし玄米120グラムでタンパク質を取り間食なし

妊娠中の食事
朝8時 玄米100グラム 具だくさん味噌汁、魚、海藻、豆乳
11時 バナナ一本
昼12時 玄米150グラム 煮物 野菜の煮浸し 納豆
夕方16時 食パン(6枚切り)1枚、コーンフレーク20グラム 
   牛乳かヨーグルト サラダ 煮豆
夜8時 玄米100グラム 芋類、魚 蒸し野菜