弁証論治:

0053:身体ががらっと変わって妊娠出産した弁証論治

・問診
38歳女性 162センチ 78kg

主訴 不妊、肥満

肥満について

 36歳で結婚してから体重が増えた。
 原因はストレスと結婚と流産によるものだと思う。
 体重が増加し、身体がだるい

・・ふだんの状態について

春、秋は調子がよい、梅雨時に悪化
気を遣ったと、睡眠不足の時、旅行のあとは悪化
年に1回1,2月に風邪を引く

食欲は普通、規則的、15分ぐらい、空腹感はめったにない、よくかむ、美味しい。今年 の9月ぐらいから、食後に頭がスースーする感じがなくなり、食後の腹脹がある(今年 の9月から)。30分から1時間ぐらい腹が張っている感じがする。

よく食べるものは:玄米、キュウリのぬか漬け、梅干、納豆、味噌汁豆乳
好きなもの:甘いもの 米
嫌いなものは:セロリ、奈良漬け、脂っこいものは苦手
間食は毎日2回以上 この3年ぐらいあめ玉を食べる

口が粘ることは朝よくある。
便は1日1回、バナナ、量は多く、付着することはない。
小便は1日5回、きれが悪いことは時々、色が悪いのはいつも。
夜間尿は20代の頃から秋ぐらいに時々出現。このころは爪も弱くなる。
 (牛乳を100っちょど毎晩飲んで、合計1リットルほど飲み終わる頃には治る)

寝付きはよい、眠りは深い、夢はみない 寝起きは普通
結婚してから疲れが残ることがよくある。

生理がはじまったのは10歳 31日周期で4日間。
生理前に下腹部胸が張る
色は出血したいろ、トイレで気張ると塊がでるが、ナプキンにつくほどではない。
量は普通、2日目が多い
流産後体調が回復していない(体重増加)

・時系列の問診

昔から
 玄米を食べるようにはしている
 精神的なストレスがあると、とても太る
  (注意していると、体重は減らないにしても増加は抑えられる)
 ダイエットをしても体重は減らない
 昼食後のみ頭がスースーする感じ。
 毎年9月頃になると、夜間尿がはじまり、爪が弱くなる
  普段飲まない牛乳を10日ぐらいかけて1リットルぐらい飲みきるとなおる

36歳で結婚、妊娠希望 体重60キロ 間食であめ玉を食べ始める

37歳 8月自然妊娠 繋留流産 
 精神的なストレスで体重が増える

38歳 2月 栄養士さんの指導で食事療法を受ける
 玄米食中心へ 野菜ジュース朝夕1杯、豆乳180ccを2回

38歳  7月自然妊娠 繋留流産 
 流産ごとに体重が増え、78kgへ

38歳 9月ぐらいから食後に腹がはるが、頭のスースーする感じはなくなる
 毎年出ていた9月の夜間尿がなかった。

・体表観察

・・舌診
淡白舌
怒脹少しあり
歯痕あり
胖嫩

・・脉診
脉全体に輪郭甘くみえずらい

・・腹診
脾募あり
中注冷え
気海抜け冷え
関元冷え
下腹の冷えがきつい

・・経穴診
左列缺陥凹
右合谷ゆるみ発汗
左神門硬結すごい
右内関陥凹
右後谿陥凹
右申脉冷え
湧泉右冷え
左右復溜冷え
右公孫こそげ
三陰交冷え右>左

・・背候診
大椎冷え盛り上がり
左脾兪胃兪陥凹
左右大腸兪冷え
ウエスト部分に細絡としみ

・五臓の弁別

・・肝
精神的なストレスにより体重増加
夜間尿は20代の頃から秋ぐらいに時々出現。このころは爪も弱くなる。
結婚してから疲れが残ることがよくある

・・心
口が粘ることは朝よくある

左神門硬結すごい
右内関陥凹
右後谿陥凹

・・脾
体重増加して身体がだるい
梅雨時に体調悪化
空腹感はめったにない
食後に頭がスースーする感じ(今年の9月はない)
今年の9月から食後の腹脹がある
間食は毎日2回以上
口が粘ることは朝よくある
毎年9月頃におこる夜間尿と爪の弱さは牛乳を10日ぐらいかけて1リットル飲むと治る

脾募あり
気海抜け
右公孫こそげ
三陰交冷え右>左
左脾兪胃兪陥凹

・・肺
左列缺陥凹
右合谷ゆるみ発汗
大椎冷え盛り上がり

・・腎
小便は1日5回、きれが悪いことは時々、色が悪いのはいつも。
夜間尿は20代の頃から秋ぐらいに時々出現。
結婚してから疲れが残ることがよくある
流産後体重増加

中注冷え
関元冷え
下腹の冷えがきつい
右申脉冷え
湧泉右冷え
左右復溜冷え
左右大腸兪冷え
ウエスト部分に細絡としみ

・・気虚
歯痕あり胖嫩
脉全体に輪郭が甘い

・・風邪
大椎冷え盛り上がり
右合谷ゆるみ発汗

・病因病理

昔から精神的なストレスがあるととても体重が増えるということより、精神的なストレ スは強い肝鬱を生じやすく、肝鬱により胃熱をおこし食欲が増進してくるタイプである と思われる。

また昼食後のみ頭がスースーする感じは、全身の気虚があるため、日中、割合と肝気が たった時間帯に、食事によって脾胃に気血があつまり、相対的に頭部から気が引けてく るために感じているのではないかと思われる。また、9月頃の夜間尿と爪の問題も、全 身の気虚があるため、夏を超えると腎虚を中心に気虚が目立ち、少しずつゆっくりと牛 乳を飲むことで回復されているのだと思われる。

36歳で結婚、2度の流産があった。流産自体強い精神的なストレスとなったこと、また 流産により腎気を落とし回復することがなかったために、肝鬱はより強くなり胃熱とな り食欲がまし体重を増加させた。1回目の流産ののち受けた食事指導により、玄米を中 心に食事をすること、豆乳などを飲むことでご本人にとって不足しがちな栄養は少し補 われることとなったが、脾腎そのものを養うことは出来ず、2回目の流産後には脾気が 明瞭におち食後の腹脹も生じるようになっている。このとき頭のスースーする感じがき えているのは、湿痰の増加により全身の気血の動きが悪くなったためではないかと思わ れる。

流産後に腎気が落ちたことによりいままで肝気の横逆があるもののなんとか素体を支え ていた脾気へのバックアップが弱くなったため、湿痰を生じはじめたことで、悪循環が 強くなっている。梅雨時の体調悪化や脾募がしっかりついていること、左の胃兪脾兪の 陥凹からも脾気落ちも明瞭である。

いつのころからか判然としないが、大椎の冷え、盛り上がり、左合谷の緩み発汗などか ら風邪の内陥があるのではないかと思われる。これにより生命力により負担がかかって いると思われる。

・弁証論治

弁証
風邪の内陥
腎虚

論治
温陽散寒
益気補腎

・治療指針

まず風邪の内陥を取りのぞく。
腎気をたて、衝任脉を健やかにし妊娠へむけての身体作りをする。
腎気をたて、脾気へのバックアップをし、胃熱を納め、湿痰を裁く

・治療経過

2010/12月初診 1)右内関ー右公孫中注温灸右足三里ー三陰交(灸頭鍼プラスミニ灸) ミニ灸右湧泉
2)筋縮大椎左脾兪、腎兪大腸兪鍼と温灸
施灸指示中注関元、三陰交左脾兪胃兪腎兪ー大腸兪、次?

初診から週に1回程度で治療、毎日自宅施灸
2診目初診治療後、、一度楽になったが、再度詰まった感じで、背骨が辛かった
3診目全体が筋肉痛みたいな感じ
4診目と5診目の間ー風邪にて一回キャンセル
7診目首がだいぶよくなってきた、動く
8陰目身体全体がすっきり、洋服の中で身体が動くほどやせた。
身体全体ががらっとかわって楽になった。

こののち、体外受精ー採卵の不妊治療をすすめながら、鍼灸も継続。
2011.10月妊娠
2012年6月無事に安産にて3000グラムオーバーの男の子を出産。
おめでとうございます(^^)