弁証論治:

0134:冷え性痩せ不育→出産弁証論治

症例集→冷え性で痩せすぎ、不育症検査で12因子欠乏症が判明(38歳出産)【case:0134】

・問診

主訴

身長149センチ体重37キロ(BMI16.67)35歳

20才ぐらいから徐々におこっている。クーラーや暖房で調子が悪い。

とくに悪化はしていないがずっとこんな感じで、気温の急な上がり下がりに弱いく 身体がだるくなり疲れやすい。

クーラーや肉体疲労時は調子が悪い。食べ過ぎは下痢してしまう。

16歳頃から食欲が落ちて小食、食事は規則的に3回、朝は15分、昼夜は30分以上

空腹感はめったにない、食事は時々おいしい。時々胸焼けがする。
よく食べるもの:白米、パン、チーズ、カフェオレ、甘いもの、魚、果物
食べ物の好き:魚、果物、和菓子、生麩、豆類
嫌い:味の濃いモノ、ケミカルな味、牛肉は食べられるが苦手
間食は24才頃から10時ぐらいに甘いものを少し毎日
飲水は1日800ccぐらい

朝起きたときに口がよく渇く
時々口が渇く

大便は1日1回、生理前にたまにお腹が張ることがある程度
軟便で量は多い、付着することも出きらないこともない

小便は1日10回、色、残尿感、夜間排尿など問題なし

睡眠は0時に寝て6時半におきる。寝つきはよく、眠りは深く、寝起きもよい。

疲れが残ることが時々(めったにないが)ある。

・・婦人科について

16才と21才の時に卵管から出血、お腹に血と水がたまった。2,3週間入院安静、手術はしていない。妊娠にもなんら問題はないと言われた。

初経は10才

生理の2,3日前から便秘、イライラ、排卵時に腹にチクチクした痛み

生理痛は2,3日目に腹部鈍痛と頭痛がする。

生理の色は濃い、小指大の固まり、

4ヶ月ぐらい前から生理の5日前から茶色のオリモノが出る

・時系列の問診

中学生時代 体重45キロ もともとお腹が弱くなにかあると下痢気味

16才と21才に卵管から出血、入院、安静で回復
 体重が37キロになり、戻らない

24才 仕事をはじめた
 お腹の弱さと、冷えが気になり始める。
 冷えは足先指先が気になる、しもやけができるわけではない
 朝起きたときに口が渇いた感じがする

28才 結婚
 5年ほど自分たちでタイミング
 夫も自分も妊娠に関して一般検査は余り問題がないと言われている。

31才から32才 病院でタイミング1年、人工授精4回 

33才 体外受精にステップアップしようと思う。

・切診など

身体全体に力が入って緊張している感じ

・・舌診
やや紅舌、
歯痕あり、
胖嫩、
舌裏怒脹あり、

・・脉診
左尺輪郭が甘い、
左関上やや固い、
寸口が左右で比べてリズムが悪い

・・腹診
腹部全体温
季肋際突っ張り
下脘抜け
臍上向き、引いててくる感じあり、
中注突っ張り
気海、関元抜け

・・経穴診
列缺かげり
右太淵腫れ
右合谷少し筋張り、こそげ
外関動きが悪い、やや冷え、陥凹
右陽池冷え
右後谿陥凹
霊道こそげ
大都陥凹右>左
公孫陥凹右>左
三陰交陥凹右>左
足三里 長い陥凹
湧泉冷え右>左
陽陵泉陥凹

・・背候診
風門(胸椎2番夾脊)陥凹
右肺兪陥凹、
右厥陰兪陥凹
胃兪大きい陥凹、特に右は奥が冷え、抜け
右三焦兪抜け、
背中は温

・五臓の弁別

・・肝
仕事を始めてから手先、足先の冷えが気になる
舌裏怒脹あり
左関上やや固い
季肋際すっぱり
身体全体に力が入って緊張している感じ
陽陵泉陥凹
右厥陰兪陥凹

・・心
右後谿陥凹
霊道こそげ

・・脾
食べ過ぎると下痢してしまう
16才頃から食欲が落ちて小食
空腹感は滅多にない、食事は時々おいしい
時々胸焼けがする
間食を毎日、
45キロあった体重が婦人科の問題で安静入院してから37キロになり 戻らない(21才)

臍上向き、引いてくる感じあり
大都陥凹右>左
公孫陥凹右>左
三陰交陥凹右>左
足三里 長い陥凹
胃兪大きい陥凹、特に右は奥が冷え、抜け

・・肺
寸口が左右で比べてリズムが悪い
急な気温の上がり下がりに弱い
列缺かげり
右太淵腫れ
右合谷少し筋張り、こそげ
風門(胸椎2番夾脊)陥凹
右肺兪陥凹、

・・腎
身体がだるくて疲れやすい
左尺輪郭が甘い
気海関元抜け
外関動きが悪い、やや冷え、陥凹
右陽池冷え
湧泉冷え右>左
右三焦兪抜け、

・・気虚
身長149センチ、体重37キロ
急な気温の上がり下がりに弱い
朝起きたときに口がよく渇く
舌歯痕あり胖嫩
列缺陰り
背中腹部温
仕事を始めてから手先、足先の冷えが気になる
身体全体に力が入って緊張している感じ
食べ過ぎると下痢してしまう
16才頃から食欲が落ちて小食
空腹感は滅多にない、食事は時々おいしい
45キロあった体重が婦人科の問題で安静入院してから37キロになり 戻らない(21才)

臍上向き、引いてくる感じあり
寸口が左右で比べてリズムが悪い
急な気温の上がり下がりに弱い
身体がだるくて疲れやすい
気海関元抜け

・病因病理

もともとお腹が弱くなにかあると下痢ぎみになるというように、脾気が弱めの素体であった。初経は10才で中学の頃には体重が45キロ(BMI20.27)あり、それなりに充実していた。

しかしながら、婦人科疾患にて入院安静がきっかけで、体重が37キロ(BMI16.67)に落ちた。入院そのものは安静だけであったが、非常にストレスになり脾気に負担がかかり、体重が落ちてしまったものと思われる。器をひとつ小さくしてしまい、その後体重は回復することなく現在に至っている。

24才の仕事を始めた頃から、お腹の弱さと手足末端の冷えが気になり始めている。 体重が戻らないまま気虚気味の素体に仕事の緊張が加わり、肝鬱が強くなり手足末端の冷えが生じはじめたのではないかと思われる。

その後、それなりにバランスを取った生活をされ、特段大きな問題もなく経過している。 しかしながら、空腹感はめったになく、食事も時々美味しいと感じる程度で時々胸焼けがするというように脾虚は明瞭である。体表観察でも胃兪の大きな陥凹奥の冷え抜け、足三里の長い陥凹など脾気の弱さは際立っている。体重を落として以来、脾気が困窮したまま経過してしまっているため体重が増加せず、また気温の上下に全身状態が影響されるように脾気の弱りは全身の気虚につながり肺気の弱さそして衛気の弱さへとつながっている。

また、両三焦兪も抜け、気海関元も抜けており腎気の弱さも明瞭である。

28才で結婚後、特段の問題はないが妊娠が成立していない、現時点では、脾気を中心に肺気、腎気とも余力がなく、肝気を張って今の生活を頑張っている状況であり、妊娠に影響すると言われる衝任脈にも生命力の余力がない。

・弁証論治

弁証:脾気を中心とする全身の気虚肝鬱 衝任脈の弱り

論治:益気補脾 温養衝任

・不妊治療歴、治療経過

x年初診

4ヶ月後

6ヶ月後 体調は安定してよい、体重が3キロ増えることができた。

8ヶ月後 採卵 空砲

9ヶ月後 採卵(5つ取れて4つ空砲)ー移植ー着床、化学流産

11ヶ月後 カウフマン、風疹の予防注射

1年後 疲れにくくなってきた
    採卵、受精せず

1年1ヶ月後 採卵ー移植ー妊娠ーhcg20

1年3ヶ月後 12因子が判明

1年4ヶ月後 採卵ー胚盤胞凍結 あまりスピードが速くない

1年5ヶ月後 採卵ードミノで移植 ー妊娠

妊娠20w 貧血が出てきて朝がくらくら、夕方は疲れる

母性連絡カードを提出し、少し遅い出勤にしてもらった

妊娠35w小柄なためか、お腹が大きく上腹部の腹満が大きいのでご自宅での安静を進める(お腹は柔らかく状態はよいと思われる)

39w 3500㌘オーバーの男児 安産にて無事に出産

胎盤が800㌘と大きかった。

7年も待ちわびた赤ちゃん、おめでとうございます!!