弁証論治:

0161:15回の移植失敗→妊娠弁証論治(42才出産)

症例集→15回以上の胚移植でも妊娠せず、転院で治療が好転(42歳出産)【case:0161】

・問診
長い長いおつきあいとなった症例の方です。

とても明るく、不妊治療についても淡々と出来ることをしていくという感じが すがすがしい思いで見守らせていただいておりました。

不妊治療としては、当院来院の前から、ご夫婦各々の問題があり、 取り組まれていらっしゃいました。よい病院ではありましたが、どうもご夫婦にとっては転院された方がよいのではと思われ、途中から転院されました。

結果として、いままでの病院では10回以上の移植で一度も着床しませんでしたが、新たな病院で着床ー化学流産をへて無事に着床ー妊娠ー出産となりました。

長い治療の旅、ご苦労様でした。

これからの家族3人での時間とても楽しみですね。

不妊治療が、身体の問題、病院での治療法との相性など沢山のことが複合的に絡んでいるのだと言うことを教えてくれた症例でした。

36才女性 身長 161センチ 体重48キロ

 主訴

 
  腰痛 

  
10年以上前から朝起きたときにひどい腰痛。

朝がつらく、体調の変化によっても腰痛はあまり変化がない。

病院での治療やマッサージなど受けたことはあるが変化がない。

食欲は普通、規則的、空腹感はよくある、腹脹胸焼けはない

間食はよくとる。飲酒はしない

口が渇くことはときどき、違和感などめったにない

便通は2-3日に一度で出きらないことが時々、コロコロ、細い便で付着することが時々。

2週間に1回ぐらい下痢になって出切る感じ。

小便は1日7-10回 尿切れの悪さ、夜間尿などない

寝つきは普通、寝起きも普通、疲れが残ることもない

初経は14才 不規則でおくれがち(2ヶ月に一度程度)

時々生理痛があり、イライラ、鈍痛など。生理は出血した時の色

1,2目が多いが、全体には付着程度の生理量。

(初経からその程度の出血量でそんなものだと思っていた)りがちだと思いますが、ご自身のことも少し意識して楽しい子育ての時間を過ごしてくださいね。

・時系列の問診

高校時代 尾てい骨をうって曲がったまま

生理不順でおくれがち(2ヶ月に一度程度)

26才 盲腸で手術

   仕事中に腰が痛くなり、ヘルニアと診断され痛み止めや牽引さほど変わらず

31才 一年に1度ぐらいの生理になる 潜在性高プロラクチンと言われる。

32才 不妊治療スタート

タイミング、人工授精(7回)を始める。

33才 腰がより痛み出す

35才 引っ越しで仕事をやめた。運動不足になっているのか

    朝起きると腰が痛い。一日中腰が痛い

 体外受精をし、一度の採卵で3回移植したもののすべて陰性

 再度の体外受精挑戦中

・切診など

・・脉診

全体に輪郭が甘い
とくに浮位がふっと消える感じ
関上が左右ともやや弦

・・舌診

淡紅から淡白
舌裏怒脹あり
歯痕あり
戦アリ

・・腹診
左季肋部めくれ 
季肋部の幅が狭い
中脘 下脘 下腿
中注冷え 
臍の下側盛り上がり
左太巨抜け
気海冷え、抜け
肝の相火きつい(右<左)裏肝の相火もきつい

・・経穴診

左列缺 外側やや張れ
右合谷こそげ
神門 腫れの中に硬結
右内関 陥凹
右外関動きが悪い
右足三里陥凹こそげ
左公孫 ゆるみ冷え
三陰交 ややつまり ぼてっとしている
右臨泣つまりきつい
関元 抜け
左湧泉 冷え
復溜 冷え (左はぼてっとしている)
左腎経下腿冷え

・・背候診

陶道冷え(肩こりはないが首は痛くなる)
左脾兪陥凹 右の胃兪 大きく陥凹
左右志室スジバリがきつい

・五臓の弁別

・・肝
関上が左右ともやや弦

舌 舌裏怒脹あり、戦アリ

右臨泣つまりきつい

肝の相火きつい(右<左)裏肝の相火もきつい

コロコロ 細い便で付着することが時々

・・心

神門 腫れの中に硬結

右内関 陥凹

・・脾

便通は2,3日に1度、2週間に一度ぐらい下痢に成って出切る。

コロコロ 細い便で付着することが時々

関上が左右ともやや弦

右足三里陥凹こそげ

左公孫 ゆるみ冷え

三陰交 ややつまり ぼてっとしている

左脾兪陥凹 右の胃兪 大きく陥凹

左季肋部めくれ 

季肋部の幅が狭い

中脘 下脘 下腿

・・肺

左列缺 外側やや張れ

右合谷こそげ

陶道冷え(肩こりはないが首は痛くなる)

・・腎

朝起きたときにひどい腰痛

不規則でおくれがちな生理

生理は付着程度の量のときが多い

高校のときに尾てい骨を打って曲がったまま

31才1年に1度程度の生理

不妊治療スタートで腰がより痛くなる

仕事を辞めて運動不足になってから、より朝の腰の痛みが強い

右外関動きが悪い

関元抜け

左湧泉 冷え

復溜 冷え (左はぼてっとしている)

左腎経下腿冷え

左右志室スジバリがきつい

中注冷え 

左太巨抜け

・・気虚

脈の輪郭が全体に甘い、浮位がふっと消える

舌 歯痕あり

気海冷え、抜け

・病因病理
高校時代に尾てい骨をうち下焦に負担があり、仕事をするうちに腰が痛くなった。

腎気の弱さが伺える。またもともと、生理が2ヶ月に1度程度で遅れがちであり、生理の出血量も付着程度で、女子胞の力が弱めである。支える腎気も弱めであったのではないかとここでも思われる。

その後、腰痛は続き腎気は補われることがなかったので、31才の頃から生理は1年に一度程度となってしまった。不妊治療を開始しホルモン剤などを使い人工授精をおこない排卵を促し始めると腰痛が悪化した。不妊治療が腎気に負担となったと思われる。仕事をやめて動くことがなくなると、陽気不足に拍車がかかり朝の腰痛がより悪化となってしまった。

体表観察では、志室のスジバリが目立ち、また脾兪胃兪の陥凹が大きい。 腎気の弱さ不安定さによって脾胃の養いが不足していること。また陶道の冷たさなどから 腎気の不足、腎の陽気の不足から督脉の健やかさも不足しているのではないかと思われる。

腹部も大巨、気海関元など下腹の力がなく、臍の下側が盛り上がり、上腹部の中脘下脘の固さ季肋部のめくれなど脾気の弱さ、気の上逆が見受けられる。

腎気の弱さと脾気の弱さ、そして脾腎の弱さを固めて守るような状況が受け取れる。

・弁証論治

弁証:腎虚 女子胞力不足

論治:益気補腎 温養女子胞 

・治療指針

腎の陽気を中心に補腎していく。

女子胞は腎気、衝脈、任脉からアプローチし暖め養う。

・治療経過(不妊治療を中心に)

36才の初診時
 採卵ー移植3回するもすべて陰性
その後、同一の病院にて採卵を5回 移植を10回以上するも一度も妊娠反応出ず。

39才 病院を変えてみたらとアドバイス。いままでの方針と違う病院に転院

40才 採卵ー移植ー始めて妊娠反応が少し出た 化学流産

41才 採卵ー移植ー6週にて心拍が見えず流産
     ー移植ー妊娠ー無事に42歳出産。おめでとうございます。